March 29, 2024

TOKYO強靭化プロジェクト

ライター:井上理/Renews

低地を水害から守る河川施設「扇橋閘門」は、ミニパナマ運河としても知られる。東京都は、そうした地上の河川から台風時などに溢れた水を収容し、洪水を防ぐ「地下調節池」を整備している。
COURTESY: TOKYO METROPOLITAN GOVERNMENT

災害対策も都市のサステナビリティを考える上で重要な政策。東京都はここに、とんでもない予算規模で立ち向かっている。気候変動が加速する中、激甚化する風水害や地震などの自然災害から、人々の命と暮らしを守る――。100年先も安心な、強靭で持続可能な都市を⽬指した「TOKYO強靭化プロジェクト」が2022年12⽉に始動した。2040年代に向けた政策目標の達成を確かなものにするため、1年後の2023年12月、早くも政策全体をアップグレードし、予算も見直した。結果、プロジェクトの事業規模は2023年度から10年間で7兆円、2040年代までの総事業規模は当初計画から2兆円増の17兆円になった。とりわけアップグレードの目玉となったのが、「国内最大級の地下河川」を造る地下インフラ整備だ。

2023年12月、小池百合子都知事は記者会見で、こう語った。

「以前、徳川家康は暴れ川と言われる利根川の流れを切り替えるという事業に着手をし、そのことによって、江戸の発展がもたらされた。これは歴史的な大きな決断だったと思います。今回の地下河川ですが、令和の徳川家康じゃないですけれども、もう1本、地下に川をつなげようと、つくっていこうという話でございます」

これまで東京都は、豪雨や台風で河川が氾濫しないよう、各所に巨大な地下調節池を建造し、水害を食い止めてきた。今回の取り組みは、気候変動による降雨量の増加に対しても河川が氾濫しないよう、地下調節池をつなぎ、さらに最後は海に流せるようにする、という壮大なプロジェクトだ。すでに「白子川地下調節池」と「神田川・環状七号線地下調節池」をつなぐ建設に着工しており、完成すると長さ約13km、約140万立方メートルの貯水能力がある国内最大級の地下調節池となる。さらにこれらの調節池が海まで繋がることで、途方もなく巨大で長い新たな“地下河川”が、東京に出来上がることになる。

「神田川・環状七号線地下調節池」は、トンネル延長約4.5km、54万㎥もの水を貯水できる。それらの調節池をつなぐ「地下河川」の構想も着々と進んでいる。
COURTESY: TOKYO METROPOLITAN GOVERNMENT

地震対策にも余念がない。2024年1月1日夕方に石川県能登半島を中心に襲った起きたマグニチュード7.6の「能登半島地震」は記憶に新しい。最大震度7の強い揺れと津波は約5万棟の住宅被害をもたらし、240人の犠牲者を出した。輪島市では、木造の商店が密集する観光名所「朝市通り」から出火した火は12時間ほど燃え続け、一帯の5万㎡が焼失。広い道路や広場の箇所がようやく延焼を食い止めた。

その災害の前から、東京都は手を打っている。助成金などで住宅の耐震化率を上げ、2019年度には92%が耐震基準を満たす。能登地方では約50%程度にとどまっていた。

また、木造住宅密集地域の「不燃化10年プロジェクト」を2012年に立ち上げ、道路の拡幅や建替えの支援などを重ねてきた。国土交通省の調べでは、地震等における著しく危険な密集市街地は、2012年度、東京都に1683haもあったが、2022年度末までに95%減の83haまで減少している。

強靭化プロジェクトではこれらの政策をさらに強化。老朽建築物を建て替える際、これまでの除却費や建築設計費などの助成に加え、2023年度からは建築工事費の助成も加えた。建替え後の住宅が要件を満たせば、固定資産税・都市計画税の減免措置も受けられる。

広範囲で巨大な事業規模の強靭化プロジェクトは、富士山の噴火すらも想定し、動き出した。降灰時における警察・消防活動の確保、水道施設などの降灰対策、避難に対応した船客待合所や駐車場の確保などを見据え、国に働きかけながら整備を進める。富士山噴火の具体的な対策でも東京都は先行する。

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