August 19, 2025

【ビザスク】知見共有ビジネスを通して働き方の変革を促す

HIROKO NAKATA CONTRIBUTING WRITER

Eiko Hashiba, the CEO of VisasQ Inc. | Cosufi

ナレッジプラットフォームのビジネスは、人々が専門知識を活用し、異なる分野やライフステージで柔軟に働くことを可能にする新たな可能性がある。

ビザスクはこの分野の国内での先駆者であり、様々な業界の専門家とアドバイスが必要な企業をマッチングするプラットフォームを運営する。2012年に設立されたこのスタートアップは以来成長を遂げ、2020年には東京証券取引所マザーズ市場に上場し、2021年には米国コールマンを買収した。現在、日本国内だけで20万人以上、海外も合わせると190か国で70万人以上の専門家が同社のデータベースに登録している。

「雇用の壁がなければ、活躍の仕方はまだまだある。年齢だけではなくライフステージのいろいろな壁を越えて活躍できるのです」と、CEO兼共同創業者の端羽英子氏は、経営共創基盤(IGPI)の木村尚敬パートナーとのインタビューの中で述べた。「働き方を変えていくことが豊かな社会を作ると思っています。これは創業時からの想いです」

ビザスクは、そのプラットフォームを通じて、IT・通信、マーケティング、小売・卸売、医療、保険など、個人および法人顧客向けに様々な分野の「スポットコンサルティング」サービスを提供している。専門家は、自分の専門知識を活かして時間単位で働く機会を得ることができる。一方で顧客は、従来の長期コンサルティング契約よりも低コストでサービスを利用することができる。

ビザスクの成長は、急速に変化する社会に対して企業の対応が求められていることが背景にあるという。「日本企業の変革に求められるスピードが加速しており、新規事業にも挑戦しなくてはいけなくなっています」と、元ゴールドマン・サックスの端羽氏は話す。「そのスピードに社内だけでは対応しきれません。それが私たちの成長の背景にあります」

将来的に、ビザスクはフルタイムの専門家を採用することも考えている。「今の世の中は雇用形態の垣根が低くなりつつあります。一時期フリーランスになった人がフルタイムになったり、フルタイムの人が副業してみたり、軽やかにいろいろな働き方をする時代になってきたと思います」と端羽氏は述べる。

端羽氏は、市場にはさらに可能性があり、特に日本では他社に先んじて市場に参入したため、ビザスクに強みがあると考えている。

Cosufi

昨年発表された中期経営計画では、同社は2029年度に300億円の取扱高を目指すとの目標を掲げた。2025年2月期には、143億円の取扱高に対して12.3億円の連結営業利益を計上し、前期は131億円の取扱高に対して5900万円の連結営業損失を計上した。

このナレッジプラットフォームのビジネスは、端羽氏の人生における経験から生まれた。彼女が自分でビジネスを始める動機となったのは、上司からリーダーシップが不足しているため昇進させることができないと言われたことだった。「自分はリーダーシップがあると思っていました。でもリーダーシップがないと言われ、違う挑戦を始めなければいけないと思ったんです」と端羽氏は述べた。

ビジネスのアイデアを探している間、彼女はインターネットを通じて個人がサービスを提供するシェアビジネスに関する本に出合った。例えば、UberやAirbnbが例に挙げられていた。そして端羽氏は人々の働き方を変えるビジネスを思いついた。

「働き方はこれからどんどん変わらなければいけないと思っていたタイミングでした。どのようなシェアビジネスができるだろうと考えた時に、やはり自分にとって一番興味があるのは『働き方』だと思いました」

子供を持つシングルマザーの端羽氏にとって、働き方は深刻な課題だった。彼女は子育てとキャリア構築を両立するのに苦労をしてきた。また、マサチューセッツ工科大学でMBAを取得した彼女は、当時プライベートエクイティファンドのユニゾンキャピタルで働いており、企業が変革の段階で外部の専門知識を必要とすることを理解していた。

さらに、地方銀行で働いていた彼女の父親が、60歳で定年退職をすると同時に専門知識を活用する機会が失われてしまうのを見たとき、起業のためにそのような知見を集めることを考え始めた。「長い間職場で貯めてきた知見を、ある日突然放棄させられるのは、とてももったいないと思ったのです」と端羽氏。

端羽氏と共同創業者が会社を立ち上げたとき、日本にはそのようなサービスはなかったため、早期に市場参入を果たしたビザスクは圧倒的な市場シェアを誇った。彼女はビジネスイベントに頻繁に参加し、ビジネスの最前線で専門家と知り合う機会を探し、専門家を探すために電話をかけた。

ビザスクの中核事業は、業界や職域の時間単位のインタビュー、企業向けのオンライン調査、24時間以内に少なくとも5人の専門家からのテキストQ&A回答サービスを通じてデータを収集することによる、コンサルティング会社および金融機関向けの市場・業界調査が含まれる。

「単に生産性を変えるだけではなく、より良い情報が手に入るようになったと言っていただけるのはとても嬉しいと思っています」と端羽氏は述べる。

創業以来、ビザスクは「知見と、挑戦をつなぐ」というミッションの実現を目指している。「We make insightful connections possible between global leaders and people with expertise」とその意図を説明している。また、「私たちは、組織、世代、地域をはじめとするあらゆる障壁を超え、様々なミッションと世界中の知見を最も効果的につなぐグローバルプラットフォームを創り、より良い未来へ貢献します」というビジョンを掲げている。

また、ビザスクは成長の過程で、毎年のようにバリューについて議論を重ねてきた。今年更新された5つのバリューの中で、その価値観を最も象徴するのは「大きく描け、鋭く尖れ」だ。ウェブサイトでは、「大きな市場で戦うための強さを、大きな目線でゴリゴリ磨いて行こう」と説明している。また、別のバリューである「違いは強さ、共に創る」は、同社が常に海外市場の可能性を見据えていることを示している。

ビザスクが目指しているのは、ナレッジプラットフォームを中心に新しい産業を創造することだ。「最終的には言語の壁を越えられるような、必要な知見に出会えるようなプラットフォームで新しい産業を創造できればと思っています」と端羽氏は述べた。

Naonori Kimura interviews Hashiba at VisasQ’s office in the Aobadai area of Tokyo’s Meguro Ward. | Cosufi

Naonori Kimura
Industrial Growth Platform Inc. (IGPI) Partner

日本初のナレッジプラットフォーマーとして挑戦を続ける

ビザスクは日本におけるナレッジプラットフォームのパイオニアとして、知見を提供する個人(エキスパート)、それを活用する企業の双方に革新的な機会と価値を提供してきた。

創業者の端羽CEO自身の起業ストーリーにおける数多くの失敗談と先人からの真摯なアドバイスが端緒となり誕生したビザスクは、コア事業-スポットコンサル-を軸に、サービスの拡充やM&Aによる米国進出を通じて成長を続けてきた。今なお新たな提供価値の創出に積極的に挑戦し続けられているのは、社員一人ひとりが主体的に組織の在り方を絶えず考え、アップデートしてきた賜物であり、本年実施されたバリュー刷新も極めて象徴的である。

働き方・雇用の在り方の変容を背景に、個々人が自らの知見をより積極的に発信出来るようになりつつある。生成AIを始めとした新たなるテクノロジーがいかに急速に発展しようとも、ヒューマンインターフェースにおける経験や知見の価値は依然として高く、むしろこうした人間の生の声にこそ隠れた真実が見出せる世の中になってきたと言っても過言ではない。

こうした時代において、ビザスクのミッションである「知見と、挑戦をつなぐ」は今後更に重要性を増すことは間違いない。特に日本においては、個人・企業が如何に変革出来るかに、今後の成長の成否が懸かっていると言っても過言ではなく、ビザスクの挑戦・進化がこの国を変える原動力にもなることを期待してやまない。

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