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牡蠣の養殖から、海の持続可能性を考える。

July 29, 2022

By TAEKO TERAO

梅津聡(うめつ さとし)
1973年、佐賀県生まれ。株式会社海男代表。中学卒業後に家業の港湾建設業に就き、潜水士などを経て二枚貝養殖の研究を始める。2014年より牡蠣養殖事業を開始。株式会社アクティブラーニング代表、羽根拓也が総合プロデユーサーを務める「にっぽんの宝物 JAPAN グランプリ」にて、海男オイスターが2020年のグランドグランプリを受賞。 | PHOTOS: UNDISCOVERED GEMS OF JAPAN / UMIOTOKO

「みなさんの想像以上に汚れています」。そんな日本の海を、牡蠣養殖によって甦らせる活動に取り組む男性がいる。独学で体得した新しい養殖法で育てた牡蠣は星つきシェフからも厚く支持される。

西アフリカのベナンへ牡蠣養殖の視察へ行った。

その男性とは株式会社海男の代表取締役、梅津聡だ。会社の所在地であり、九州屈指の牡蠣養殖の地でもある有明海に面した佐賀県太良町。梅津はその町で港湾建設業を営む家に生まれた。中学卒業後に家業に就き、潜水士として多くの港湾の海に潜り、33歳からは営業で各地を回り、海が汚れていく様と漁業の衰退を目にした。海は表面がきれいでも潜ってみるとヘドロが堆積していた。国としても海の水質改善を行なってきたが、海に命を取り戻す状況には至っていない。

「国土交通省がいう“きれいな海”は透明度が高く、一見きれいですが、バクテリアをはじめ、生物が育ちにくい。漁師目線では見た目は濁っていても、栄養豊富で生態系が保たれた状態が理想です」

わざわざメキシコからも梅津の元へ議員団が視察に来た。

そんな思いを抱えた梅津は海の土壌改良を調査するうちに、牡蠣という救世主を見つけた。

「ある意味、海の食物連鎖の頂点が牡蠣だということがわかったんです。山から海に流れた養分をとって植物性プランクトンが増えると、海藻や牡蠣が育つ。牡蠣のフンがバクテリアによって分解され、また栄養になり、それを魚が食べて魚が増える。ところが、牡蠣をはじめとする二枚貝が減ると植物性プランクトンが増えすぎて赤潮になって生態系が崩れてしまう。だから、海を正常に戻すには、牡蠣を育てるのがいいんです」

梅津のつくる牡蠣は日本の通販サイトで大人気だ。

養殖のやり方は主にネットや海外の生産者によるYou Tubeで学んだ。英語は理解できなかったから、見よう見まねで覚え、実地で試行錯誤を繰り返した。2009年の当初はあくまで「人助け」的な感覚で漁師のためにやっていた。地元の有明海のほか、徳島や香川、山口など、これまでの港湾工事の営業で得たコネクションから場所を提供してもらい、代わりに自身の研究で得た情報はすべて共有した。経済的には大赤字だったが、2012年、驚くほどおいしい牡蠣が有明で採れ、水産庁主催の水産物展示会「ジャパン・インターナショナル・シーフードショー」に出品すると大きな反響が得られた。これをきっかけに自ら養殖、販売を手がけるようになる。有明原産の種カキを用いた牡蠣は、殻が黒く小ぶりながら海の風味が濃縮され、<海男オイスター>としてブランド化され、瞬く間に人気を博していく。

「地元産の種は当然、有明海の風土に合うものですから、病気にかかりにくく、強く育ちます。また、そのことが海を守ることにつながっていきます」

そんなさなか、事件が起こった。梅津が地元で「漁協指定の種カキ(宮城県産)を使わない」という理由から、2019年3月、有明海漁協大浦支所からカキ部会を除名され、一切のカキ養殖を禁じられ、多大な損害を被ったのだ。梅津は佐賀地方裁判所に除名決議無効確認と損害賠償請求の訴訟を起こすなど、漁協と対立することが続いた。

「自然を大切にしながら、もっと自由に海が使えるようになればいい」と梅津は思いを述べる。

現在は賛同する漁師や新規参入の就労者も増え、九州の牡蠣をブランド化し、EC事業や九州各地の生産者を訪ねる“九州でのオイスターツーリズム”の企画も動いている。ちなみにオンラインでの取材当日、梅津は牡蠣養殖を伝える計画実現のため、アフリカのベナンを訪れていた。

「牡蠣養殖は餌にかかる費用がいらないので、途上国が外貨を稼ぐには非常にいいんです。また、作業のDX化によって、漁師の労働時間の短縮化も狙っています。それによって今度は山を整備する時間が作れるようになり、山で育った木や竹で魚礁に活用できる。そんなサイクルができたるのが理想です」。梅津のチャレンジはまだまだ続く。

梅津の息子2人も、共に養殖事業に携わる。

小さい粒に旨味が濃縮された牡蠣。

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