July 29, 2022

とらふぐ・クロマグロの養殖に取り組む「東京一番フーズ」の取り組み。

By TAEKO TERAO

とらふぐの養殖をはじめとする生産、加工、流通、販売までを自社で手掛けることで食品をリーズナブルに提供できる。 | COURTESY: TOKYO ICHIBAN FOODS

令和2年度の水産庁の資料では日本海、東シナ海、有明海、瀬戸内海において、2002年〜2019年まで、とらふぐの資源量は1000トンから534トンと大幅な減少傾向にある。また、高級寿司ネタの代表、太平洋クロマグロは各国の政府や環境団体などでつくる「国際自然保護連合」(IUCN)から絶滅危惧種に分類されていたが、資源回復が進み、去年9月には準絶滅危惧種に引き下げられたものの、依然として資源枯渇の危機にさらされている。

その問題解決として世界各国の企業が魚の養殖に取り組んでいる。ふぐ料理を提供する『とらふぐ亭』をはじめ、海鮮居酒屋や寿司店など、魚料理店を運営する株式会社東京一番フーズ(東証プライム上場)もそんな企業のひとつである。外食産業を中心に生産、食品加工、流通、販売のすべてを自社グループで行うことで、良質な食材を安価で提供すると同時に、食をめぐる海の環境問題の解決にも取り組む。同社マーケティング担当取締役・岩成和子氏が語る。

「利益を出すだけなら、どこかからふぐやマグロを買ってくればいい。でも、SDGsに取り組む企業としての責任から、2014年より平戸市古江湾にて、長崎県、平戸市、そしてその地域の中野漁協と協力して、持続的養殖生産確保計画に取り組んでいます。内容としては、とらふぐ、自社ブランドの「極海一番本まぐろ」「極海ぶり」「極海さば」を海洋養殖で育てながら、海の環境を改善しようと模索しているところです」

長崎県では2003年にとらふぐ養殖業者がふぐの寄生虫駆除のため、発がん性が指摘されるホルマリンを不正使用していたことが問題となり、それがきっかけとなって適正養殖業者認定制度が誕生。種苗(稚魚)、飼料、投薬、養殖資材の項目ごとに設けられた基準に従うよう定められており、同社もその認定を受けている。

NYにあるレストラン『WOKUNI』(https://www.wokuninyc.com/)では、海鮮料理の提供のほか、鮮魚販売やマグロの解体ショーを通じ、日本の食文化も紹介している。 | COURTESY: TOKYO ICHIBAN FOODS

「長崎県は問題が起こったことで、それ以降はかえって、養殖にまつわる海の問題に真摯に取り組んでいます。初めて平戸を訪れたとき、海の美しさと漁業に関わる人たちの真剣な姿勢に心動かされたことが、パートナーシップを組む決め手となりました。平戸には海があり、その潮風に含まれるミネラルを受け取って豊かに育つ山があり、その栄養分が川から海へと流れる循環がある素晴らしいところ。また、ここで養殖をすることで環境のことを考える人々とのネットワークもできて、様々な情報も集まってきます。ネットワーク力で海の入り口である砂地にアマモを移植しています。今後は、海藻類を蘇らせることでブルーカーボン生態系にも寄与したいと考えています。適切な牡蠣養殖で水質改善を図っています。この10年間でさまざまな失敗もありましたが、結局、自然が受け入れるやり方で海の環境を整えないと、いい養殖はできないということなんですね。また、海底改良剤の散布や海底中の有機物を食べてくれるナマコの放流を推進するほか、水中ドローンで状況を観察もしていますし、スクレッティング株式会社(福岡県)との共同研究でクロマグロ用の海環境に負荷をかけない植物性由来の餌の開発も行っています。低魚粉化で小魚の資源も守られますから」

同社は国際的な食品衛生管理の手法、HACCP認証の加工工場を平戸市と東京に設置し、そこで加工した魚介の製品をニューヨークのアンテナショップとしての機能も持つレストラン『WOKUNI』へ輸出。同店はコロナ禍でロックダウンされた時期も鮮魚店と寿司デリバリーを継続するなど、日本の食文化を発信し続けた。2013年、ユネスコ無形文化遺産に登録された和食はヘルシーな食の代名詞。その和食文化を真の意味でヘルシーに保つには、海の環境を回復するためのサステイナブルな養殖スタイルが求められている。

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