May 02, 2022

下北半島でジオダイニングとロボット向けツアー

第1回下北ジオダイニングは仏ヶ浦の断崖を背景に開催された|しもきたTABIあしすと

美しい景色を楽しんだり、地元料理を食べたりすることは旅行における醍醐味の1つだ。本州最北端の青森県下北半島にて開催される一連の美食イベントでは今や、出席者が景色と料理を同時に堪能できる。

日本ジオパーク委員会から認定を受けた44地域(現在は46)のうちの一ヵ所、下北ジオパーク内に分布する貴重な景色を誇る様々なロケーションで行われることから、この美食イベントは「下北ジオダイニング」と名付けられた。

下北ジオダイニングを含め、観光プロジェクトの運営やイベントの開催を通して、下北地域の振興に尽力する一般社団法人「しもきたTABIあしすと」の坂井隆事務局長は、ジャパンタイムズによるオンライン取材の中で、2018年の第一回目のイベント開催以来の実績と観光業再生を見据えた発展計画について話した。

一回目の下北ジオダイニングはシェフ4名(地元3名と東京1名)を招き、白緑色の巨大な奇岩群と断崖から成る景勝地「仏ヶ浦」の野外会場で行われた。他にも、下北半島西側の横浜町にある広大な菜の花畑、半島北東端の岬の突端に立つレンガ造りの最古の灯台・尻屋埼灯台のふもと、イカ釣り漁が行われる夏以降は水平線にイカ釣り漁船の漁火を見ることができる漁業の町・風間浦村の三ヵ所を会場に、多彩なシェフたちによる贅沢な料理が振る舞われた。坂井氏は、下北半島先端のむつ市を日本の主要なワイン生産地の一つとして宣伝するべく、10月には同市のブドウ畑でジオダイニングを開催する計画があったと話したが、残念ながら、この計画は新型コロナウイルス感染症の世界的大流行を受け、開催が次年度に延期された。

イベントの一部は地域ブランディングおよびプロモーション事業として、政府から資金援助を受けた。しかしながら、坂井氏は、本事業の採算性と自立性を確保するため努力していると話した。

あらたに挙がっているアイデアには、「ふるさと納税」の返礼品としてダイニングイベントのチケットを提供する案や下北半島周辺に寄港する豪華客船との連携などがある。

「今年は、通称“ワーケーション”プロジェクトを試験的に実施しました」と、坂井氏。いかにも、コロナ禍で市職員の70%超をリモートワークにするという目標を達成したむつ市が思いつきそうなアイデアだ。「ワーケーションとジオダイニングの組み合わせもありですね」と、坂井氏は続けた。

海上自衛隊大湊基地を背景に、並んで座るRoBoHoNたち。| むつ市

坂井氏らはさらに、下北半島により長く滞在する人を増やすことにも意欲的だ。「下北半島を訪れる人の70%以上は滞在日数がたったの2日未満です」と、坂井氏は話し、観光地間の交通手段が不足していることを一因に挙げた。そのため、坂井氏らはコロナの影響により現在運休中の観光ルートバスの運行再開に加え、レンタカーやカーシェアリングサービスを観光促進の取り組みに組み込めないか検討していく計画だ。

下北半島の紹介と訪問客誘致を兼ねて、引退した漁師の奥さんなどの地元民をフィーチャーしたオンラインツアーも実施されている。宮下宗一郎・むつ市長は、ジャパンタイムズとのこれまでのインタビューの中で、重要なのは「人」であり、人と人との関わりだと述べた。別のオンライン取材では、宮下市長は「風景や空間と人のコミュニケーションは一方通行ですが、そこに、その場所について話をする別の人がいれば双方向になります」、と話し、これは一期一会を提供することにもなり得るとした。

また、宮下市長は、電機メーカー・シャープのロボット「ロボホン」50体がむつ市周辺を集団で旅行した2019年のイベントについても触れた。旅の様子はロボット所有者に向け生配信されただけでなく、(ロボットが)旅の記録を持ち帰って所有者と共有した。「人々はロボットとさえもコミュニケーションを取りたいと思うわけです。そしてロボットを介して観光や体験をしようする。人々が真に欲しているのはコミュニケーションであり、私たちはコロナ禍を通じてこの事に対する認識を高めました。」

むつ市が計画したロボット所有者のためのツアーは後日延期となったが、宮下市長は一人一人の訪問者に一生に一度の瞬間を提供できる機会に向け、旅行がまた人々の暮らしの一部になる時を楽しみにしている。

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