January 28, 2022
UFOで町おこしをした街、羽咋を知っていますか?
2020年4月、アメリカ国防総省が2004年と15年に海軍が撮影したという3本のUFO映像を公開。その飛行物体の正体がわからないことを認めた。12月には米議会が、国防長官と国家情報長官に対しUFOに関する調査報告書を提出するよう命じ、2021年6月、ついに国家情報長官室がUFOに関する調査報告書を公表した。この報告書によれば、米軍パイロットなどが証言した144件の目撃情報を検証、1件を気球と断定した以外の143件については情報不足で結論が出せないという説明で終わった。この発表で、アメリカ政府がUFOの存在を肯定も否定もしなかったことに、私たちの宇宙人やUFOに対するロマンや関心は、益々深まったといえる。
アメリカでUFO報告書が公表された同じ6月に、日本でもUFOに関する動きがあった。福島県福島市飯野町にUFO研究所が開設されたというのだ。このニュースは日経新聞でも報道されたのでビジネスマンの目にも留まった。元々この地域ではUFOの目撃情報が多数あったため、UFOで町おこしをしようと1992年にはUFOに関する展示施設もオープンしUFOファンの間では聖地となっていたのだ。
しかし、UFOで町おこしとしては、もうひとつ有名な場所が日本にはある。それが今回紹介する石川県の羽咋市だ。ここには「コスモアイル羽咋」という1996年オープンの本格的な宇宙博物館があり、どうしてこんな場所に? というような小さな地方都市に、実際の宇宙空間で使われた本物の宇宙船やロケットなどが多数展示されているのだ。この施設誕生の立役者が高野誠鮮氏。元々、テレビ番組の制作や放送作家として活躍、30歳を迎えるころ故郷の羽咋市に戻り、臨時公務員としてUFOで町おこしを仕掛けた人物だ。現在、この施設のアドバイザーを務めるほか、日蓮宗の僧侶としても活動している。
「きっかけは、公民館の古文書講座の担当になった時、古文書を見ていたら、この羽咋地方に古くは平安時代から“そうはちぼん”という、空を飛ぶ謎の物体に関する記述があることを知ったのです。元々、テレビ局でUFO番組の制作をしていたこともあり、この古文書に書かれている謎の物体は現代でいえばUFOなのでは? と思いました。それが町おこしと結びついたわけです」。高野氏の行動は早かった。1990年には、NASAが打ち上げた「スカイラブ4号」の船長ジェラルド・カー博士を招き、羽咋市主催で宇宙とUFOに関する国際シンポジウムを開催、9日間で延べ5万人を集めた。このイベントの成功は、この町に本格的な宇宙博物館をつくろうという動きに結びつく。レプリカではダメ、本物を展示してこそ、その魅力が伝わるとの高野氏の考えから、単身NASAへ乗り込み展示物の貸し出しを交渉、ロケット購入や貸与に成功した。
またロシアからも「ボストーク宇宙カプセル」「無人月面探査機ルナ24号」といった貴重な品々を手に入れた。初の有人宇宙飛行を実現したボストークに関しては、ユーリイ・ガガーリンが乗った1号機ではないものの、全6回打ち上げられたうちのひとつで、その表面には大気圏突入時にできたであろう焼け焦げた跡も見られる。館内にはこうした宇宙開発競争に関するものが7割、UFOや宇宙人に関するものが3割という感じで展示されている。
「宇宙に関心をもって宇宙人というものを意識すれば、同じ地球の上で人間同士、戦争をしたり資源を奪い合ったりしている場合ではないということに人類は気づくと思います。環境問題もそうです。今、私たちは利己的な考え方を変え、次のステップへ進まないといけないのではないでしょうか」。物事を俯瞰して見てみることを教えてくれる施設、「コスモアイル羽咋」は、そんな宇宙的な視点を養える貴重な場所かもしれない。