November 09, 2020

エネルギー起源温室効果ガス削減に金融の力を活用

From left to right: Alan McLean, Executive Vice President Taxation and Controller, Royal Dutch Shell plc; Aoki Jun, Executive Corporate Officer / Chief Social Value Creation Officer, Shiseido Company, Limited; Marcie Frost, Chief Executive Officer, California Public Employees’ Retirement System (CalPERS); Ozeki Hiroshi, President and Chief Executive Officer, Nissay Asset Management Corporation; Fiona Reynolds, CEO, PRI; Mizuno Hiromichi, Special Advisor / TCFD Summit Ambassador, METI | MINISTRY OF ECONOMY, TRADE AND INDUSTRY

世界がコロナ危機からの“グリーン”な経済回復を選択している今、気候変動対応を大きく進展させる上で金融の力の有効活用が重要さを増している。

この世界的な取り組みにおいて重要な役割を担う「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:TCFD)」が10月9日、第2回目の年次サミット「TCFDサミット2020」をオンライン形式で開催した。その目的は2019年6月のG20大阪サミットで提唱されたコンセプト『環境と発展の好循環』の実現に向けた取り組みを継続させることだ。

気候関連財務情報開示タスクフォースは企業がステークホルダーに対して行う気候に関連した財務リスクや機会の開示に関するガイドラインの策定に携わる国際組織だ。

TCFDサミットは、「日本政府はTCFDが世界中で活用され発展してくことを支援していく」という菅義偉内閣総理大臣のメッセージで幕を開け、これに続いて、大手グローバル企業、金融機関とその他組織のリーダらによるスピーチとディスカッションが行われた。

TCFDサミットアンバサダーの水野弘道経済産業省参与がモデレーターを務めたスペシャルディスカッションでは、民間・公的セクターと国際組織からパネリスト5名が参加し意見を交換した。

パネリスト企業の1つ、英・オランダ系石油大手ロイヤル・ダッチ・シェルは幅広い気候関連の取り組みを実践すると共に、2050年までにCO2排出量を実質ゼロにするという野心的な目標を掲げ、TCFD提言に沿った進展状況の報告を継続して行っている。

しかしながら、シェルのアラン・マクリーン税務・経理担当執行副社長(Executive Vice President Taxation and Controller)は気候変動対応やその他の環境・社会・ガバナンス(ESG)課題に取り組む他の企業と同様に、シェルが直面した問題について明らかにした。「責任とは定義をするのも、測定するのも難しいものです」とマクリーン氏は話した。マクリーン氏はTCFDガイドラインを盛り込んだ ESG報告の基準を設定し、さらにその基準を全産業の“共通言語”にしていくことの重要性を強調した。そして、「共通言語と同じ判定基準を使う企業が増え、透明性が高まるほど、成功のチャンスも増大していきます」と付け加えた。

フィオナ・レイノルズ氏(国連関連団体『責任投資原則(PRI)』最高経営責任者(CEO))はこう述べ賛同を示した。「気候という観点からすると、TCFDは利用可能な最善の枠組みだと思います」。しかし同時に、サステナビリティやESGに関する基準は増えてきているものの、まだギャップ(不足している部分)があると指摘した。「新たな枠組みを作るよりも、投資家は実用的な情報を入手でき、法人は従うべき枠組みに迷って時間を無駄にしなくて済むよう、PRIは今ある基準の調和に努めています」とレイノルズ氏は話した。

青木淳氏(資生堂株式会社常務兼チーフソーシャルバリュークリエーションオフィサー)は新型コロナ危機のピーク期はエネルギー需要が著しく下がった上に、様々な国のCO2排出量が最低水準だったにも関わらず、CO2排出量は平均26%しか減少しなかったとの調査結果に触れると、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行はCO2排出量の大幅な削減の達成には破壊的イノベーションが必要だと証明しました」と発言し、斬新な考え方を示した。青木氏は企業が気候変動対応を促進するためには気候リスクをバリューチェーンの機会に転換できる革新的な人材を導入するべきだと主張した。

大関洋氏(ニッセイアセットマネジメント社長兼最高経営責任者(CEO))もまた、投資家の立場から、TCFDが提唱しているように、シナリオ分析を通した気候リスクおよび機会の開示における重要性を強調した。「我が社はESGへの積極的な投資を重視しています」

「我が社は特に機会に関する情報の開示に注目しています」と大関氏は話した。大関氏は多数の企業が発表している統合報告を補強するものとしてTCFD提言を解釈してもらえれば、より多くの企業にとってTCFDレポートの発行が容易になると指摘した。

米最大の公的年金基金「カリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)」のマーシー・フロスト最高経営責任者(CEO)は世界経済を気候に配慮した発展へと誘導するためには、総体的な取り組みの中で各セクターがそれぞれの役割を果たさなければならないと指摘した。「企業はCalPERSや年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のような投資家が適切に投資を行い、それに伴うリスクを理解し、リクスに対する補償を確実に受けるために必要な情報を得られるように開示を継続していかなければなりません」とフロスト氏は話した。そして、PRIなどの組織がアセットオーナーの大集団を取りまとめ、開示枠組みの一貫性を高めていくことができるのだと付け加えた。

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