『日本伝統工芸展』から、その魅力を探る。

September 22, 2022

ライター:寺尾妙子

『日本伝統工芸展』とは?

重要無形文化財保持者(通称:人間国宝)を中心に、伝統工芸作家、技術者等で組織する団体、日本工芸会、朝日新聞社などが主催する日本最大の工芸の公募展。第1回目は1954年、文化財保護法の改正に伴う重要無形文化財指定・重要無形文化財保持者認定制度発足の年に実施。歴史上・芸術上、価値の高い工芸技術を保護育成するために行われ、2022年の第69回に至るまで毎年、『日本橋三越本店』をはじめ、各地の会場を巡回する。
https://www.nihonkogeikai.or.jp

渡邊明(わたなべ あきら) ジャンル【諸工芸】 
積層プラチナ彩切子器「光波」 (せきそうぷらちなさいきりこき「こうは」)

新たなガラスの造形美を創り出すガラス作家による作品。切子を施した複数枚の板ガラスに色ガラス粒やプラチナを入れ込んで融着させ、その上からさらにカットして仕上げる、積層と呼ばれる、渡邊が独自に編み出した技法を用いる。タイトル通り、見る角度によって、さまざまな光の波が浮かんでは消えていく、はかなさが身上である。

前田昭博(まえたあきひろ)ジャンル【陶芸】
白瓷捻壷(はくじひねりつぼ)

前田は、従来の硬質なイメージとは異なる、柔らかなタッチで白磁の新境地を開いた先駆者。重要無形文化財「白磁」保持者(人間国宝)として、伝統工芸を中枢から支えながらも、独自の感性でアートとして通用する作品を作ってきた。何かに雪が降り積もったような、まろやかなフォルムの器体を捻って、光と影を表現している。

現代における日本の伝統工芸品の最前線を知りたければ、1年に1回行われる『日本伝統工芸展』がおすすめだ。

この展覧会は、重要無形文化財保持者(通称:人間国宝)を中心に、伝統工芸作家、技術者などで組織する団体・日本工芸会を中心に行う日本最大の工芸の公募展である。日本の伝統工芸の保護育成を目的に、陶芸、染織、漆芸、金工、木竹工、人形、諸工芸の7部門にわたり審査が行われ入選作品が選ばれる。工芸の人間国宝は、この『日本伝統工芸展』で入選を重ねた作家から選ばれることがほとんどだという、ステイタスの高い展覧会なのである。

69回目を迎える今回は人間国宝の最新作を合わせて558点を一堂に公開。『日本橋三越本店』(9月14日〜26日)を皮切りに、名古屋、京都、札幌、金沢、岡山、松江、高松、仙台、福岡、広島、大阪の12都市の会場を約半年かけて巡回する。また、1954年の第1回目より東京会場として同展を開催してきた『日本橋三越本店』では、受賞作家や学識者による作品解説をするギャラリートークや着物を身につけて参加できるイベントなどを行い、伝統工芸がより身近に感じられる機会を提供する。同店の工芸バイヤー、平岡智に展覧会の見どころを聞いた。

「各分野の人間国宝をはじめ、工芸作家が腕によりをかけてつくり上げた1年の集大成を見せる場ですから、圧巻です。しかも、ガラスケースに入れず、そのまま展示されているので、作品の質感などもしっかりと感じられます。“伝統工芸”という響きから、昔からある技法で作られているものばかりが並んでいるように思われるかもしれませんが、実はこの展覧会こそが、工芸の最新技術の見本市。先人の知恵が詰まった技術をベースに、新しい技術を積み上げることで伝統は更新され、今の時代にふさわしいものとして、受け継がれていきますから。そこを見ていただきたいですね」

鳥毛清(とりげ きよし) ジャンル【漆芸】
沈金食籠「鎮守」(ちんきんじきろう「ちんじゅ」)

漆芸が盛んな石川県の能登に生まれ、2019年「第66回日本伝統工芸展」東京都知事賞を受賞した漆芸作家による作品。食籠とは茶道でお菓子などを入れる器。通常の沈金の技法とは逆に、背景を彫って顔料を埋め、漆面を残すことによってメインのフクロウの意匠を浮かび上がらせるという新しい技法と、それによる繊細な表現が評価されている。

五十嵐誠(いがらし まこと) ジャンル【木竹工】
神代杉彫装箱 (じんだいすぎちょうそうばこ)

2021年「第68回日本伝統工芸展」にて日本工芸会新人賞を受賞した注目の木工芸作家の作品。鑑賞要素の強い左/神代杉彫装箱も生活用具である右/ウォールナットハイスツールも、外側に組み手を見せず、金釘を使わずに組み立てる指物の技法で作られている。

たとえば、重要無形文化財「白磁」保持者(人間国宝)、前田昭博は元来、硬質なイメージの白磁をやわらかなタッチと捻りを加えたフォルムを独自に生み出し、光と影を表現するという現代美術的な作品で海外でも高い評価を得ている。漆芸作家、鳥毛清は沈金と呼ばれる加飾技法を用いているが、従来のようにメインの図柄を彫って、金箔や金粉を埋めるのではなく、逆に周りの漆面を彫って、メインの図柄の部分を黒く残す手法を採用して新境地を切り開いた。ガラス作家の渡邊明は日本の伝統的なガラス加飾法である切子の技法をベースに、積層という新たな手法を創造。木工芸作家、五十嵐誠は外側に組み手を見せず、金釘を使わずに組み立てるという精緻な仕事が求められる指物の技法を使って、出品作品のような鑑賞要素の高い作品のほか、椅子のような生活に密着した、よりクラフト寄りのアイテムも提案している。

また、同展で販売は行われないが、日本橋三越本店では一部の出品作家の作品を買うこともできる。自分の手元に置いて、伝統工芸と暮らしてみるのもいいだろう。

五十嵐誠は板材を組み立てて成形する指物の技法で作品を制作する。

ウォールナットハイスツール

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