November 29, 2022

【住友商事】創業理念を受け継ぎ変革を続ける

Masaki Nakajima, general manager for media and digital business | THE JAPAN TIMES

日本の五大総合商社の一つである住友商事は、長い歴史から得た幅広い専門知識とビジネスの経験を活かし、新たなビジネスモデルを創りあげ、変化の激しい時代の中で更に競争力をあげていくことを目指している。

「Disruptive innovator(破壊的な変革者)として社会を改革する新たなビジネスモデルを創造する企業体・企業グループになっていきたい」と住友商事でメディア・デジタル事業部門長を務める中島正樹専務執行役員は語る。

「時代の変化に応じて自分たちも変革してきた。変革なくして成長はない。さらなる高みを目指すことが商社として活躍していく道ではないか」と中島は言う。

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住友商事の歴史は、戦後の日本産業界の歩みと共にあったと中島は話す。戦後復興期から高度経済成長期へと、日本企業の輸出入のみならず、その海外進出、グローバル化を多岐にわたり支え共に切り拓いてきた。その中で体得した経験や知見、ネットワークを駆使し、総合商社としての新事業を現在も開拓し続けている。

事業を進めていく上で道標となる思想があった。1590年に始まった銅精錬業にルーツを持つ住友グループ。その430年の歴史を支えてきた事業精神の一つ「自利利他公私一如」である。「住友の事業は、住友自身を利するとともに、国家を利し、かつ社会を利するものでなければならない」という意味だ。

これが今日の住友商事の経営理念に受け継がれている。住友商事は、グループの目指すべき企業像を、「常に変化を先取りして新たな価値を創造し、広く社会に貢献するグローバルな企業グループ」としている。社会に貢献し価値を提供することで、より良い社会を築く。これが今、実際に投資を検討する際に最初にする議論だと中島は言う。

2017年、サステナブルな経営理念をより明確にするために6つのマテリアリティ(重要課題)を設定した。「地球環境との共生」、「地域と産業の発展への貢献」、「快適で心躍る暮らしの基盤づくり」、「多様なアクセスの構築」、「ガバナンスの充実」、そして「人材育成とダイバーシティの推進」である。「地域と産業の発展への貢献」、「快適で心躍る暮らしの基盤づくり」、そして「地球環境との共生」として掲げる循環型社会の形成や気候変動緩和の実現に向けて、脱炭素エネルギーの開発や新しいエネルギーの利用、CO2の吸収・固定・活用といった分野における従来の枠組みを超えた新たな営業組織「エネルギーイノベーション・イニシアチブ(Energy Innovation Initiative)」を2021年に設立した。

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旧来の輸出入中心の商事ビジネスから1980年代の総合事業会社構想、そして現代のデジタルソリューション総合商社へと事業を変革していく中で、住友商事が重視しているものの一つは環境への価値だ。「地球温暖化対応が注目を浴びる中で、カーボンクレジットやカーボンプライス等、環境価値を経済価値に置き換えられるようなビジネスにより焦点をあてていこうという議論をしている」と中島は言う。

そして、更なる事業変革のために住友商事ではデジタルテクノロジーの次の時代の技術の探究を既に始めている。それが量子コンピュータの力で社会とビジネスを変革するQX(Quantum Transformation)プロジェクトだ。住友商事では、このプロジェクトを加速させるべく、昨年はイスラエルの量子スタートアップClassiq、今年は超電導量子コンピュータを開発するNord Quantiqueに出資した他、東北大学等との共同研究を実施している。

「これだけ変化の激しい予測不能な社会、3・4年後、もしくは1年後さえどうなっているか分からない世の中でしっかりと勝ち抜き生き残っていくためには、単一のものの考え方の集団ではだめだ」と最後に挙げたマテリアリティ「人材育成とダイバーシティの推進」に関して中島は話す。

「とくに総合商社の勝ちパターンは幅広い事業領域と専門知識であり、それによる顧客との繋がりや様々なコーポレート機能も含めたどんな業態よりも多様なものである。それらを自由につなぎ融合させながら社会課題への価値提供を行っていくのが我々の仕事だ。」激しい変化の中でそのような価値を提供していくには多様な価値を受容するダイバーシティな組織でないといけないと中島は語った。


Naonori Kimura
Industrial Growth Platform Inc. (IGPI) Partner

400年強にわたる住友の歴史は、常に新たな環境変化へ対応しつつ、ゼロから多くの産業を築き上げてきたもので、「住友の歴史は日本の歴史」と言われることも強い納得感があります。変化への対応においては単一的な見方・文化ではサステナブルではなく、企業文化の要所にダイバーシティの考え方が埋め込まれています。特に多様な人材育成に力を入れ、「個の多様化こそレジリエンスの源泉」との強い信念が素晴らしいです。これから未来へ向けた環境変化はこれまで以上に見通しが悪い中、「多様な人材×テクノロジーで未来を創る」をモットーとしQuantum Transformationに積極的に取り組まれ、まさに10年・20年先の新たなる社会の先駆者となっていくでしょう。

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