September 02, 2019

Satoyama推進シンポジウム2019 パネルディスカッション「里山里海×事業継承」~事業に新しい生命の息吹を吹き込む~

Japan Times Satoyama Consortium

Panelists share their experiences and thoughts on succeeding businesses in rural communities at the Japan Times Satoyama Consortium symposium in Tokyo on June 4. | YOSHIAKI MIURA

Japan Times Satoyama 推進コンソーシアムがこのほど開催したシンポジウムで、3人のパネリストが、地方での事業継承をテーマにそれぞれの経験や考察を共有した。

6月4日に東京で開催されたこのセッションは、山口県周防大島町にある瀬戸内ジャムズガーデンのオーナーで、コンソーシアムの運営委員会委員長を務める松嶋匡史氏がモデレーターを務めた。

松嶋氏はパネリストがなぜ、どのようにして事業を引き継いだのかについて質問し、セッションを進めた。

石見銀山生活文化研究所の取締役・松場忠氏は、島根県大田市にある人口400人の小さなコミュニティでデザインされたものを販売、使用している店舗やレストランなどを経営している。さらに、古民家を利用した宿泊施設も所有、運営している。

松場氏の場合、義理の父親の事業を引き継いだ形だ。

「2世代前は、まだファミリービジネスとして着物を扱っていました。それより前は、酒や塩、タバコなど、時代のニーズに合ったものを販売していました」と、松場氏は述べた。そして、「現在は、日用品や衣類が中心となっています」

松場氏は、会社が歴史の中でどのように発展してきたのかという文脈を学ぶことの重要性を強調し、こう続けた。

「事業を持続可能な方法で発展させることで、コミュニティが今直面している問題に、どう取り組むかを考えていく必要があります。代々同じことをやり続ける必要はないのです」と。

2人目のパネリスト、丹後佳代氏の場合は、愛媛県今治市で、自身も夫も何の血縁関係がないタオル会社のオーナーから事業を引き継いだ。

「私も夫も今治出身です。生まれ育った小さなコミュニティを抜け出したいと思ったこともあり、他県の大学に進学しました」と、丹後氏は述べた。そして、「卒業後に見知らぬ土地で、小学校教諭として働き始めた私を支えてくれたのは、ご近所さんだったのです」と振り返った。

実家の不動産業と保険業を継いでいた夫との結婚を機に、今治に戻った丹後氏は、夫とともに初めての仕事に取り組む中で、再び地域の人々からの支えを実感した。

「周りの人たちの温かさを感じ、若い人が離れていって寂れゆく故郷のために、何か自分にもできることはないかと考えるようになりました。そして、廃業を決められたというタオル工場の話を聞いたとき、その90年の歴史を終わらせてしまわないよう、われわれに継がせてほしいと、オーナーの方に申し出たのです」と、丹後氏は話した。

「もともとは OEM(相手先ブランドによる生産)のみでタオルを生産していたため、職人さんたちは、自分が作ったタオルが誰に売られているのかも、誰が買っているのかも知りませんでした。今は OLSIA と名付けた、われわれ自身のブランドがあり、職人さんたちがそれを誇りに感じ、喜んでくれていることがうれしいです」と、丹後氏は述べた。

OLSIA は、「織る」と「幸せ」を合わせた造語だ。

3人目のパネリストは、新潟県佐渡島で、1892年に創業された尾畑酒造を経営する一家に生まれた尾畑留美子氏だ。

尾畑氏は東京の大学に進学し、大手映画会社の宣伝プロデューサーとして働いていたが、家庭の事情により方向転換することとなった。

「父親が病気になったときに、自分は自らの人生の終わりのときをどのようにして迎えたいのか、考えたのです。そうすると、小さくて暗い酒蔵の、ひんやりとした床に座って、うちのお酒、『真野鶴』を飲んでいたい、と思ったのです」と、尾畑氏は振り返った。そして、「そう思ったときに、家業を継ごうと決意しました」と語った。

尾畑氏は1995年に、夫とともに5代目として酒蔵を継ぐため、佐渡島に戻った。

「2003年にはお酒の輸出を開始し、今では15カ国で当社のお酒が売られています。輸出のうちの半分は、商社を通さずに直接海外のパートナーと取引しています」と、尾畑氏は述べた。

また2014年には、廃校となった地域の小学校を酒蔵として再生させた「学校蔵」というプロジェクトを開始した。

そこで最近手がけたさまざまなプロジェクトの中でも、2015年にスタートした「酒造り体験」では、学校蔵で実際に酒造りを体験できる。

「今年の10人の参加者のうち、7人は海外からの参加です。故郷と世界をつなげたいという思いがあります。そして、東京でなくても世界とつながれるということを、地域の子どもたちに伝えたいです」と、尾畑氏は話した。

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