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新型コロナウイルスで投資戦略にも変化

July 03, 2020

Japan Times ESG Consortium

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5月25日にJapan Times ESG推進コンソーシアムが開催したオンラインセミナーで、新型コロナウイルスの世界的流行が日本や世界において、環境、社会、ガバナンスというESGの要素に基づく責任投資にどのような影響を与えうるかについて、金融の専門家が見識を共有した。

開始に先立ち、PRIジャパンヘッドであり、CDPジャパンディレクターでもある森澤充世氏がJapan Times ESG推進コンソーシアムの座長としてスピーチし、排出量削減はコロナウイルス危機による短期的な経済の減速に頼るものであってはならないとし、投資における長期的な視点の重要性を強調した。

登壇者の一人、パートナーズ・グループ・ジャパンの代表取締役、棚橋俊介氏は世界におけるESG投資に過去15年間関わってきた。ESGは企業の守りの手段として使用されることが多いが、実際には付加価値を生み出す積極的な側面があると棚橋氏は指摘。 そして投資先候補の評価プロセスをこう説明した。

「まずは最初にネガティブスクリーニングをした後、ターゲットを絞り込み、デューデリジェンス(適正評価)を実施して良い投資先を選びます。これはポジティブスクリーニングです」と棚橋氏。 「当社は対象会社の株式の過半数を取得し、その所有者になるので、投資先と利害関係が完全に一致します」と話した。「各分野の専門家をCEOや取締役として経営陣に送り込み、会社のバリューアップを図ります。これを起業家的ガバナンスと言います。」

パートナーズ・グループでは、投資先企業から提出されるESGレポートにある様々な側面から投資先企業の実績を評価する。また同時に、投資先企業とともにESGプロジェクトを管理しているという。

ESGの成功事例

棚橋氏は、投資先企業のESG要素の改善に効果をもたらしたプロジェクトの成功事例を提示した。 米国を拠点とする保育サービス提供会社であるキンダーケアは、各施設に自動電力管理システムを導入することで、エネルギー消費を12%削減することに成功。 米国のインフラ企業であるUSICは、ドライバーの安全強化プログラムを実施し、過失事故を20%削減することに成功した。 また、高級ケータリングとホスピタリティ・サービスでオランダの市場をリードするフェルマート・グループは、フードバンクへの寄付を含むさまざまな取り組みで食品廃棄物を10%削減することができた。

パートナーズ・グループはまた、各投資先が新型コロナウイルスの状況にどのように対処しているかを注視しているという。 棚橋氏は、すべての産業が何らかの形で影響を受けており、特需に直面している産業もあれば、前例のない売上の減少に苦しんでいる産業もあると説明した。

「短期的には苦しんでいる投資先もありますが、将来は明るく、長期的にはどの企業も安定してくると思います。例えば、キンダーケアの場合、ロックダウンのためにサービスの大部分を一時的に停止せざるを得ませんでした。これにより財政状態は圧迫されてしまいました。小さな子供が対象なのでEラーニングもできません。しかし、キンダーケアの潜在的な価値は変わっていません。 彼らは社会が必要とするサービスを提供しているのです」と棚橋氏。投資家はそのような会社をつぶすわけにはいかないと強調した。

株主の責任

「事業自体にESG的意味があることをやっていても、どうしようもないときがあります。 シェアホルダーエンゲージメントが力と責任を実証するのはそういったときです」と棚橋氏は語った。

パートナーズ・グループは、新型コロナウイルス流行中、投資先企業の従業員を支援する目的で約1000万ドル相当の従業員サポートファンドを提供するというメッセージをウェブサイトに掲載した。「同じ船に乗ったパートナーと共に困難な時代を乗り越え、生き残ることができる仕組みを作る。我々のこのコンセプトはESGの発想そのものです」と棚橋氏。

パンデミック(感染症の大流行)のリスクは社会に内在するものである。このパンデミックを経験する中で、企業は従業員やサプライチェーンを支える人々など、様々なステークホルダーから毎日どれだけの恩恵を受けてきたかがわかったはずだと棚橋氏はいう。

「自分のことだけを考えた経営はナンセンスです」と棚橋氏。

コロナ第2波、第3波のリスクシナリオをどう考えているかというセミナー参加者からの質問に対し、棚橋氏は、「100%、第2波、第3波は来るでしょう。しかしそれがいつになるかは国によって異なります。各地域の状況を注意深く見ていく必要があります」と答えた。

M&A(合併と買収)の市場も、パンデミック以前に設定された価格について買い手側が疑問を持ち始めたことが主な理由となり、停滞していると説明。

「これからの投資およびM&A活動は、パンデミックのリスクを考慮に入れる必要があります。 私たちは、世界がコロナ前の状態に戻らないという意識を持ち、リスクを織り込んだ形で計画する必要があります」と述べた。

棚橋氏がコロナ禍におけるESG投資について海外の状況について語ったのに対し、りそなアセットマネジメント株式会社の執行役員で責任投資部長の松原稔氏は、今日の国内でのESG投資の状況について語った。

りそなアセットマネジメントは長期投資に特化していると説明し、「運用している約20兆円のうち90パーセントが年金で、そのうち半分が株式、もう半分が債権に投資されています」と話した。

松原氏は、将来のキャッシュフロー、利益、ガバナンス、戦略、企業文化など、投資先企業の見えにくい、または計りにくい価値を視覚化することが、長期投資家が意識していることだと説明した。また、短期的、中期的、長期的な価値を総合して見ていく必要があるとした。松原氏は、新型コロナウイルスの流行は金融に大きな影響を与えたとし、「株式市場全体では資本コストが上がっている中、問題は、各企業がその状況下でどのように資本コストを引き下げることができるかということです。 これについて適切な情報開示が必要です」と述べた。

将来のビジネスモデル

次のステップは、投資先企業の経営戦略をより良く理解するために、投資先企業が将来のビジネスモデルとコーポレートガバナンスをどのように計画しているかについて、投資先との対話を始めることであると松原氏は話した。

「例えば、彼らが何を優先しているか、今の時代の新しい生き方、仕事、企業経営を確立するために彼らがどこに注力しようとしているかを知る必要があります。」また松原氏は、投資先企業の計画のどの部分をどのように変更すべきかを考えるのは投資家の仕事であるとも述べた。

「ステークホルダー資本主義への移行という世界的な潮流の中で、企業の社会的責任はあらゆる面で高まっています」と松原氏。また、新型コロナウイルスの危機は、投資先企業の新しい評価基準を作成するきっかけにもなったという。これらの中には、企業が国家的危機に対して何ができるか、雇用主としての評判はどうか、サプライチェーンをどう管理しているか、リスクに対して迅速に行動できるかどうか、バランスシートは強固かどうかなどがある。

松原氏は、投資家は投資を求める企業にESG要素に関し何を期待するかという問いに対し、「ESG活動が企業の持続可能性にどのように関連しているかを整理して明確にし、どのようにして長期的に優れたビジネスを創出できるかを説明することが重要です」と答え、投資家は、投資先企業が気候変動やパンデミックなどの外部要因にどう取り組むかよりも、そういった問題がその企業にどのような影響を与えるかのほうに関心があると答えた。

松原氏は、多くの企業が依然としてESG関連の取り組みをコストと見なしていると述べた。 「しかし、経済産業省が実施した調査によると、日本の投資機関の97.9パーセントがESG関連の情報を投資の決定に役立てています」と松原氏は指摘した。

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