March 26, 2018
2月13日にJapan Times Satoyama推進コンソーシアム キックオフフォーラムとして「2025年問題を見据えた里山資本主義のこれから」というタイトルで、日本総合研究所の藻谷浩介さんにお話いただきました。
日本の地方の自治体は持続可能な生活を推進するため、従来の資本主義を補う役目となる代わりの考え方を身に付け自然を活用し、コミュニティを活性化させるため、都会の若者たちを呼び寄せる取り組みを積極的に行なうべきだと、最近東京で行なわれたフォーラムで著名なエコノミストである藻谷浩介氏は強調した。
国勢調査の数字を引用して、日本総研の主席研究員は「過疎地」と評される地方の自治体には、東京などの都市部に比べて高齢者の人口増加が緩やかなところがあると述べた。藻谷氏は、過疎地が活性化するために、そうした人口構成の状況をうまく生かすべきだと訴えた。
国勢調査の数字によると、日本の75歳以上の人口は2010年から5年の間に15パーセント上昇し、1630万人に増え、東京では同じ期間に19パーセント増え、147万人となった。その一方で、藻谷氏が「過疎」という言葉が最初に使われたと話す島根県では、2010年から2015年に75歳以上は3パーセントの増加に留まり、12万3,000人となった。
「島根県では、20いくつある自治体のうち9つで子どもの数が増えました」と藻谷氏は述べた。「高齢者の数が少なくなっている自治体の福祉や医療にかかる費用は下がるもので、自治体の中には子育て支援により多くの費用を回しているところもあります」と語った。
藻谷氏は、外から若い人たちを呼び込むための地方の自治体による努力が、その地域が活性化するか衰えるかの鍵となると述べた。「人が年をとることは止められませんが、自治体は、地元を離れた若者を呼び戻すとか、都会の人たちを呼び込むといったことはできます」と話した。
そのためにも、地方の自治体は自らが持つ豊かな資源、つまり里山を最大限活用すべきだと、このエコノミストは訴えた。藻谷氏によれば、この言葉は元々、農村集落のそばにある山や丘、森を指していたが、住民が利用したり手入れしたりすることで安定が保たれている自然環境のことを指すようになった。
「世の中では人間が生態系に関わると資源を使い尽くし、壊してしまうと思われています」と藻谷氏は説明した。「里山については人が関わっているにもかかわらず、生態系は安定していて、生き物の数も増えています」と述べた。
藻谷氏は2月13日、1月の Japan Times Satoyama 推進コンソーシアム発足を記念し、ジャパンタイムズが企画したフォーラムの講演にスピーカーとして招かれた。このコンソーシアムにはこの分野に関係する団体の活動を推進する目的がある。
このエコノミストが提唱するのは里山資本主義と呼ばれる、「近代経済のサブシステム」と目されるものだ。従来の資本主義では、誰もがお金を使って物を交換し、成功はいくら稼いだかで評価される。藻谷氏は、里山資本主義では「お金は交換手段で、価値の物差しではありません」と言う。
「これは資本主義の一種で、よりサステナブルでレジリエントです」と藻谷氏は講演で説明した。「里山資本主義者はお金を稼いで使いますが、金銭換算できない価値を重んじて、生活の中でお金とそうでないものへの依存のバランスを追求します」と語った。
藻谷氏によれば、彼が共著者となった2013年に出版された本のテーマである里山資本主義は、水資源、食料や燃料などの自給、物々交換、そして恩送りなどお金によらない交換を通して、地域の中で資源やお金、善意が循環するようにする。「里山資本主義は循環と再生を通して維持できるようにしよう、ということです」と述べた。
藻谷氏はこの資本主義の代わりとなることを実践する利点と強みは、日常生活において生み出される余裕にあるという。
「私が言っているのは、一部の食料でいいから自給するとか、物々交換できる相手がいるとか、または恩送りする習慣のあるコミュニティがあれば、生活にだいぶ余裕が出てくるということです」と藻谷氏は強調した。「そうなれば、高齢者は年金に100パーセント頼らなくてもよくなります」と述べた。