June 16, 2020

持続可能なライフスタイルが安定した社会を築く【基調講演 藻谷浩介氏】(第2回Satoyama実践者交流会2019 in 志摩市)

Japan Times Satoyama Consortium

Kosuke Motani, chief senior economist at the Japan Research Institute Ltd., gives keynote speech at an event co-hosted by the Japan Times Satoyama Consortium and the city of Shima, Mie Prefecture, in the city on Feb. 23. |

少子高齢化が進む日本は、持続可能な発展とは何か、またそれをどう達成すれば良いかという問いに直面している。

里山(地域住民に利用・維持されている山や森林)や里海(人々が生物多様性を維持するために関わっている海や沿岸の環境)に関する事柄をテーマとする2日間のイベントの初日、日本総合研究所、調査部主席研究員の藻谷浩介氏は基調講演でそう強調した。

このイベントは、Japan Times Satoyama推進コンソーシアムと志摩市の共催で2月23日、24日に三重県志摩市のホテル&リゾーツ伊勢志摩で行われた。

藻谷氏は、2013年に出版された『里山資本主義』の著者の一人だ。この本では、効果的かつ持続可能な方法で既にある資源を利用して経済循環を創造し、維持する社会が提唱されている。このような社会の制度は、成熟して高齢化が進む国々では機能しなくなってきた現代資本主義のバックアップシステムとしての役割も果たす。

藻谷氏は、志摩市には海にも陸にも天然資源があることに触れ、「伊勢神宮があるおかげで広葉樹林が保全され、リアス式海岸には栄養豊富な水が流れ込んでいます」と話した。

一方で、地元で作られた海産物や農産物などの資源が持つ可能性が、訪問者を呼び込むために充分活用されているかどうか、と問いかけた。37年前に初めて志摩市を訪れてから、藻谷氏は市内のあちこちで食事をしては志摩以外の場所で獲れた魚が提供されるのを経験した。

「世界の珍味を集めて観光客を呼び込むやり方では駄目なのです」という経済専門家の藻谷氏は、急速に少子高齢化が進む地方では、その土地の強みを活かす戦略を立てなければ、観光客が来なくなるだけでなく、住民も増えないと話す。

「現在のペースで人口減少が進むと、志摩市には50年後には誰もいなくなります」と藻谷氏。

これは志摩市やその他の地方だけでなく日本中のどこにも共通する問題だ。

藻谷氏は、「統計によると、15歳から64歳までの人口は首都圏一都三県でも減っています」とし、製造業は労働力不足も一因となって自動化に拍車がかかっていると話した。結果、生産性は上がり、人件費は減っているため、日本の輸出競争力は増している。

「昨年の経常収支の黒字額はドイツに次いで世界2位の約20兆円です。」

「しかし、ロボットや機械が人間に取って代わると消費は落ち込み、国内経済は縮むわけです」と藻谷氏。「問題は、人、物、金が循環しないことです」と持続可能性の鍵が循環であることを強調した。

また藻谷氏は、社会の持続可能性だけでなく、人はみな自分自身の持続可能性についても考えるべきだと指摘し、参加者に問いかけた。「死ぬまでどう生きたいですか?日本で死因の第3位は老衰で、毎年30,000件もの孤独死が報告されています。あなたが年をとったときに、十分な数の介護士はいるでしょうか?」

持続可能に生活し、退職のない仕事をして自立し、お金に頼るだけでない方法で自給自足することが幸せな社会を創る鍵だと藻谷氏は話した。

「これが可能な地域には、若者が戻ってきます。食べ物とエネルギーが循環を始めて、経済が安定化します」と藻谷氏は語った。「これが持続可能な発展です。」

日本の成長産業は外国人観光と農業、そして林業だと藻谷氏は話す。志摩市では、これまで持続可能な生き方が紡がれてきたため、これらの成長産業を支える資源がすべて揃っているという。あとは、年間を通して地元の食材を使った料理を楽しめる場所を作るなど、それらの資源を活かすことが必要と藻谷氏は述べた。

藻谷氏は自身の基調講演の前に行われたパネルディスカッションやプレゼンテーションでシェフや海女、地元の高校生グループが紹介した地元の特産品を使って促進している取り組みに触れ、志摩市は、観光業以外の仕事に従事している人々が積極的に観光業に携わり、すでに資源を活用している点においては先進的な事例だと語った。

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