May 20, 2020

海を守る取り組み、各地で進む(第2回Satoyama実践者交流会2019 in 志摩市)

Japan Times Satoyama Consortium

A facilitator and three panelists discuss marine environments at a panel co-hosted by the Japan Times Satoyama Consortium and the city of Shima, Mie Prefecture, in the city on Feb. 23.

自然災害や海の生態系のバランスが崩れたことなどにより脅かされている海洋環境、沿岸環境を守るため、日本各地で漁師、海女、非営利法人など諸団体が地域で活動を行っている。

里山(地域住民に利用・維持されている山や森林)、里海(人々が生物多様性を維持するために関わっている海や沿岸の環境)に関するイベントが、2月23日、24日の2日間にわたり三重県志摩市のホテル&リゾーツ伊勢志摩で開催された。このイベントはジャパンタイムズSatoyama推進コンソーシアムと志摩市の共催で行われた。

23日の第一部では、株式会社フィッシャーマン・ジャパン・マーケティングの津田祐樹代表取締役COOを司会に迎え、3人のパネリストが里海と海洋保護というテーマに関連した各々の考えや取り組みを交換した。

フィッシャーマン・ジャパンは、2011年に起きた東日本大震災と津波で大きな被害を被った地元の漁業を復興させようと、2014年に宮城県沿岸の石巻市で設立された一般社団法人だ。

この一般社団法人が若い漁師の育成に力を入れるのに対し、株式会社フィッシャーマン・ジャパン・マーケティングは地元の海産物の販売とマーケティングを主に手がけている。

津田氏は、「海洋環境を守る為の取り組みとして、環境問題の漁業への影響を説明する絵本を出版するプロジェクトを実行中です。また、ウニが生息地域の海藻を食べ尽くす磯焼けを起こさないようにクローバーの葉を餌として与えるという宮城大学による研究にも協力しています」と話した上で、パネリストたちに、各々の環境に対する取り組みについて尋ねた。

NPO法人里海づくり研究会議の田中丈裕事務局長は、岡山県備前市の日生の海岸で、地域の漁師と共に40年以上アマモの保護に取り組んでいる。アマモ場は「海のゆりかご」と呼ばれ、海の生き物の棲家や産卵場としての役割を果たしている。日生は牡蠣の養殖で知られており、牡蠣養殖にとってアマモ場が作り出す豊かな海洋環境はなくてはならないものだ。

「最初はアマモの保全について関心を示す漁師はほとんどいませんでした。しかし、魚が戻り、牡蠣の生産量が着実に増える様子を見て、年月をかけてアマモの重要性を理解するようになりました。現在では、一般の方を含め様々な関係者がこの活動に参加しています」と田中氏。

新井圭織氏は、海女になるため、6年前に大阪から志摩市に引っ越してきた。数年にわたり消費者製品の小売業界の企業に勤めたが、「物をどんどん作って売るよりも、しっかり手入れをしたひとつのナイフでできることを増やす生き方のほうが良いのでは?」と考えたという。

海女漁は常に環境に優しい漁法だが、新井氏は海洋環境のための個人的な努力も欠かさない。海中のゴミ拾いをしたり、食器を洗う前に油分をふき取ったり、非合成洗剤を使用したりなどがその例だ。「海女小屋も環境に配慮した方法で運営されています。間伐材や廃材などを燃やして漁の後の体を温め、その火で夕食も作ります」と新井氏。

国連大学サステイナビリティ高等研究所の瀧口博明プロジェクトディレクターは、伝統的な海女漁の文化は日本の各所に残っており、世界からも持続可能な漁法として注目されていると話した。

瀧口氏は、環境省において気候変動や廃棄物管理など様々な環境問題に取り組んできた。瀧口氏によると、国連と環境省はSATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップを運営し、世界各国の258団体が参画しているという。

海洋環境を改善・保全するために取るべき次の手段についての質問に対し、田中氏は、里海の概念の法制化と、若い世代への海洋教育が必要だと答えた。

新井氏は、同僚の海女や地域の女性たちが環境問題について学べる場を作りたいと話し、「海女文化を守る為の方法も考えていきたいです」と語った。

「17個ある国連の持続可能な開発目標の中でゴール14が海に、ゴール13が気候変動に関連しています。気候変動は海にも影響を与えます。これらの目標すべてについて、地域を拠点とするプロジェクトで取り組んでいくことが必要です」と瀧口氏は語った。

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