May 26, 2023

広島から世界へ:平和な国際社会への実現に向けて、経済界が担う役割

By EMI MAEDA

へいわ創造機構ひろしま

へいわ創造機構ひろしま(HOPe)による「2023世界平和経済人会議ひろしま」が、ヒルトン広島で行われた。今年で8回目となるこの会議は、ロシアによるウクライナへの侵攻が続いている中、5月19日からG7広島サミットが開催されることを契機に、ビジネスと平和貢献のあり方の関係を多面的に議論することで、真に平和で持続可能な国際社会につなげることを目指して開催された。

オープニングでは、湯﨑英彦広島県知事と日本の経済界のリーダーであるサントリーホールディングス株式会社・新浪剛史代表取締役社長の2名から挨拶があり、湯﨑知事は、「2025年には、終戦・原爆投下から80年の節目を迎える。戦後100年を見据え、持続可能な世界を実現するためには、ビジネスの力がより一層重要になる。そのためには、ビジネス界が一丸となって取り組むことが不可欠だ」と語った。また、新浪氏は、冷戦終結から30年近くが経ち、グローバリズムが進展したことで、多くの人々がその恩恵を受けてきたが、「ロシアのウクライナ侵攻により、国家間の対立が表面化した。こうした問題に対応するためにも、ビジネス界が協力して取り組むことが必要不可欠だ。」と語った。

基調講演では、米ハーバード大学ウクライナ史教授及びウクライナ研究所所長であるセルヒー・プロヒー氏が、今世界で何が起こっているのか、また何が起こりうるのか、歴史的観点から紐解いた。世界は今、非常に難しい局面に立たされている。ロシアによるウクライナ侵攻は、核兵器への恐怖を人々に再び呼び起こした。過去の歴史を振り返り、我々が間違えたことだけでなく、正しかったことも思い返して、核兵器のない世界を実現させることが大事だと述べた。プロヒー氏は歴史家として「歴史は決して繰り返さない」と確信している。「ビジネス界のリーダたちは、果たすべき役割がある。そして、新しい時代において、この役割が冷戦時代同様に、積極的に発揮されると確信している」と基調講演を締め括った。

ハーバード大学教授 ハーバード大学ウクライナ研究所所長 セルヒー・プロヒー氏
PHOTOS: へいわ創造機構ひろしま

広島県知事 湯﨑英彦氏
PHOTOS: へいわ創造機構ひろしま

セッション1では、偽情報とその対策、世界の課題を擦り合わせながら企業が果たす役割と平和貢献について、村井純(慶應義塾大学教授)、ジョン・V・ルース(ジオデック・キャピタル社 パートナー兼共同創業者・元駐日米国大使)、瀬尾傑(スローニュース株式会社社長)が議論を交わした。

「平時有事の双方において、健全な情報空間が決定的に重要だ。ビジネス、意思決定、日常生活、それらを継続していくといったときに、情報空間が大きな影響をもたらす。」とモデレーターの西田亮介(東京工業大学リベラルアーツ研究教育院・准教授)は語った。瀬尾氏は、「SNSや動画の発信が、戦争においても大きな影響をもたらす。」とし、ジャーナリズムの観点、報道の需要性について語った。村井氏は、技術的な側面と、技術にまつわる政治に関わる問題、その技術に関する問題と政策決定者との距離感について語った。ルース氏はアメリカ企業の果たしてきた役割、また透明性の重要性について語った。情報社会についてテクノロジーの驚くべき可能性を称賛しつつも、誤報と偽情報、ネイティビズム、サイバー攻撃、インターネットの脆弱性など弊害やリスクもあることを示唆。官民が一体となって、透明性、説明責任を促進し、信頼の促進と獲得に帰結することが大事だと提言した。

セッション2では、経済の武器化にどう向き合うか(エネルギー、食糧など)をテーマに、小柴満信(JSR株式会社名誉会長/経済同友会 副代表幹事)、鈴木一人(東京大学公共政策大学院教授/国際文化会館地経学研究所 所長)、竹内純子(国際環境経済研究所 理事/U3イノベーションズ合同会社 共同代表)の3名をパネリストとして迎え、モデレーターを髙島 宏平(オイシックス・ラ・大地株式会社 代表取締役社長/経済同友会 副代表幹事)が務めた。経済の相互依存は、平和を維持するために必要だと信じられてきたが、国家間の対立や競争が激化する中で経済の武器化が増加している。そのことを受けて、あらゆる領域が転換期を迎えていると高島氏は述べた。エネルギーとや食料など、日本国内だけで全て賄うことは難しいが、自給率を上げていくということと同時に、対外的な影響を受けないようにするレジリエンスを高めるということも大事だと鈴木氏は語った。

プログラムの最後には、加治慶光(シナモンAI会長兼CSDO/日立Lumada Innovation Hub Senior Principal/鎌倉市スマートシティ推進参与)、新浪氏、湯﨑知事によるクロージングが行われた。世界は今、様々な課題や問題を抱え複雑な状況にある。ロシアによるウクライナ侵攻において平和が脅かされたこと。ますます深刻化している米中問題。日本ができることは何か、また目指す世界は何かをこの広島から考えていこうと投げかけた。そのためにも、民主主義といった同じ志を持つ国々が集まり、平和で経済が回り、豊かな社会の実現へ向けて取り組んでいくことが重要だと語った。また、湯﨑知事は、今まさに平和が問われている時代に、G7サミットが広島で行われる意味について、「人間の力は破壊にも使えるし、広島はそれを表した場所でもある。その広島で、G7サミットが行われるということが、この時代の文脈の中で非常に重要だと思う。」と述べた。また、「平和が繁栄をもたらす。その繁栄を作るのは経済の力なので、そういったメッセージをここ広島から発信していきたい。」と語った。最後に、加治氏は「(原爆投下80周年を迎える)2025年に向けて、この会議をより大きなインパクトのある会議にして、平和へのメッセージを広島から発信していくためにベストを尽くしていきたい。」と語り、2023世界平和経済人会議ひろしまを締め括った。

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