April 24, 2025

筑波山塊の花崗岩、世界のヘリテージストーンに認定

Maiko Muraoka Contributing Writer
Translator: Tomoko Kaichi

加波山花崗岩(真壁石)を用いて「真壁石燈籠」を作る伝統工芸士 | 筑波山地域ジオパーク推進協議会

茨城県の「筑波山地域ジオパーク」の地質遺産「筑波山塊(さんかい)の花崗岩(かこうがん)」が2024年、国際地質科学連合(IUGS)から世界を代表する「ヘリテージストーン(天然石材遺産)」の一つに認定された。日本のみならず東アジア全体でも初という。

ヘリテージストーンは重要な建築物や記念碑に使用されるなど国際的価値が高く、人類との関わりが古い天然石を認定するプログラム。筑波山塊の花崗岩を含め現在世界で55件が認定されている。地質学者で元大学教授でもある筑波山地域ジオパーク推進協議会の杉原薫専門員に、この地域の花崗岩の特徴と、遺産認定がもたらした好影響について聞いた。

筑波山地域ジオパークは、国内で2番目に大きい湖である霞ヶ浦の西、茨城県中央部の広大な地域を対象とする。筑波山を中心に多くの小山が連なるこの地域では、形成時代が異なる3種類の花崗岩が分布しており、産地にちなんで「筑波花崗岩」「加波山花崗岩」「稲田花崗岩」と呼ばれる。「それらは、その(岩石学的)特徴に基づきさらに小さなグループに分類される」と杉原氏は話す。「しかし、IUGSが認めたのは、その地質学的多様性と科学的価値だけではない。地域の人々がその資源をどのように使ってきたか、石材の文化的かつ歴史的価値が評価された」という。

杉原氏によると、協議会が認定申請を決めた理由はいくつかある。「貴重な地域資源が国際機関から認定を受けることで、石材だけでなくジオパークそのものをPRすることができる。日本のジオパークネットワークの国際的な認知度を高め、世界のジオパークコミュニティに貢献する一助になる」というのが一つ。もう一つは地元の石材業の振興と支援だ。「後継者を確保するとともに、採掘と石材加工の特殊技術を継承していく必要がある。今回の認定は石材業に関わる人々にとって、地質遺産を守りながら採掘文化を持続可能な方法でどのように継承していくかを考える絶好の機会になった」。

この認定は、地域の歴史と文化を再検証するきっかけにもなった。杉原氏によると、古代この地域では山岳信仰が盛んで、山中で見られる巨石や岩は信仰の対象であり修行の場だった。鎌倉時代には、これらの石の建材としての価値も認められるようになり、高度な石材加工技術が発展したという。

「明治時代に西洋文化が日本に入ると、関東地方では西洋風の石造建築が盛んになり、筑波山塊の山々から採掘された花崗岩が後に国宝や重要文化財に指定された建造物に広く使用されるようになった」

都内の建物に使われる稲田花崗岩(稲田石)を割る作業員 | 筑波山地域ジオパーク推進協議会

杉原氏はIUGSヘリテージストーン認定の大きな成果として、石材業関係者の間でジオパークへの関心が深まり、地元石材業の歴史と技術に対する自信と誇りが高まったことを指摘する。「石材業において持続可能な利用の必要性の意識も高まっている。石材を天然資源として活用してきたこの地域の豊かな歴史と文化を守りながら、石材の採掘と加工の持続可能性を向上させる方法を見つけることは可能だと信じている」と語る。

山から採掘される石のうち、建材として利用されるのは全体の3割未満に過ぎず、その割合を高めるための技術の改良も行われているという。「(生成過程で排出される)石の端材を利用した玩具や工芸品など、新製品の開発も進んでいる」。

協議会では今年、茨城県産花崗岩が使われている場所や建物を見学する東京ツアーも計画している。「例えば、筑波山地域ジオパーク北部の稲田地域で採掘された花崗岩は最高裁判所の外壁に使用されている」。国会議事堂や東京駅にも茨城県産の花崗岩は使われているといい、杉原氏は「東京や日本各地から茨城県にきてもらい、採石場や石材の加工工程を見てもらいたい」と話す。

筑波山地域ジオパーク内に2023年にオープンした「つくばジオミュージアム」には、来場者が岩石の成り立ち、石材の採掘から建材や石燈籠などの伝統的工芸品への加工について学べる展示物や教育用の設備、映像資料などが揃っている。「さまざまな取り組みを通して若い世代に石材業に関心を持ってもらい、地域文化の継承につなげたい」と杉原氏は期待した。


つくば市はジャパンタイムズと協力し、持続可能社会の実現に向けた日本の取り組みを発信する企業グループ「Sustainable Japan Network」の会員です。ネットワークへの参加や活動詳細はQRコードをスキャンしてご覧ください。

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