July 26, 2021
【Rebuilding Center Japan】木の資源は「リサイクル」から「リユース」へ 廃材に価値を見出す新たな古材マーケット。
高齢化と少子化に伴い、いま日本では空き家の増加が大きな社会問題となっている。2018年の総務省の調査によれば、日本国内の総住宅数に占める空き家の割合は過去最高の13.6%。全国に800万戸以上の空き家が存在する。近年ではこうした古民家を宿泊施設やカフェ、観光施設にリノベーションするなどして活用する事例も増え、古民家活用における潜在的な市場規模は1.8兆円にのぼるという試算もある(出展「古民家の活用に伴う経済的価値創出がもたらす地域活性化」(2015年4月)日本政策投資銀行)。
だが現状は、日々ほとんどの空き家が解体されている。そうしたなか、解体時に大量に出る廃材のリユースに着目したのが「Rebuilding Center Japan」だ。元々、店舗や住居などの空間デザインを生業に全国各地をめぐっていた東野唯史・華奈子夫妻は、趣のある古民家が解体されていく現場を何度も目の当たりにしたという。そこでゴミとなってしまう古い建具や木材を「レスキュー」するというコンセプトのもと、長野県諏訪市を拠点に古道具や古材を扱うショップ兼カフェを2016年にオープン。同時に古い建物の解体に立ち会い、廃材を資源として引き取る事業をスタートした。
「ホームセンターに行けば安くて便利な外国産の資材がすぐに買えますし、人気のアンティーク木材も多くは輸入品です。けれど、他方で日本のいい古材がどんどん捨てられているという矛盾に気が付きました」。そう語る東野華奈子氏だが、これまで国産材の再利用が進まなかった理由は「とても手間がかかるから」。廃材を活用するまでには、清掃や加工など多くの手間がかかる。だが、「見方を変えれば、資材調達などのコストはゼロ。かかるのは人件費だけという粗利率の高いビジネスとも言えます」と東野唯史さんは言う。「巨額の設備投資をせずとも、誰でも参入できるので雇用も生みやすい。今後、自立した地域経済を支えていく上で多くのヒントがあると思っています」。
工務店や設計事務所を介さずとも、個々のカスタマーに必要な量だけ、直接商品を届けることができれば消費者のニーズも見えてくる。以前はアンティークとしての美的価値からのオーダーが多かった古材も、最近ではSDGsなどの観点からゴミを無駄にしない循環型モデルとして古材を求める人が増えているという。また古民家の解体に限らず、新築を建てる際にも発注分を使い切れず多くの建材が廃棄されている。今後、廃棄分を流通できるシステムができれば市場価格が下がり、輸入に依存してきた木材も国産を維持し、環境に負荷をかけないビジネスモデルが創出できるだろうと東野唯史さんは言う。「ゴミをリサイクルするには多くのコストやエネルギーを必要としますが、廃棄物に価値を見出し、”リユース”すると考えれば、よりサスティナブルな市場をつくりだせると考えています」。