March 28, 2025
ケニアでの雇用創出から、オーガニックな花の探求へ。<アフリカローズ>創業者の挑戦。
PHOTO: TAKAO OHTA
日常生活の中で花は、私たちの気分を癒してくれたり喜ばせてくれたり、時には人間関係を円滑にしてくたりと、プラスの効果をたくさんもたらせてくれる存在だ。しかしその花がどこでつくられてものなのか、どういった人が育て、どのようにして自分の元までやってきたのかを意識したことはあるだろうか? 先進国が輸入する花の多くは、ケニアをはじめとしたアフリカの国々や、コロンビアやエクアドルといった赤道直下の南米の国で生産されたものが多い。その花のなかには、低賃金による労働搾取のうえで栽培されたものや、農薬散布により労働者に健康被害を与えたり、生産地に土壌汚染・水質汚染などの環境問題を引き起こしているものもあるだろう。しかしそのような実態は明確な数字等含め明るみに出ることは少なく、実情を把握しにくい状況にある。
「AFRIKA ROSE」創業者で、現在は一般社団法人「スローフラワー協会」代表理事を務める萩生田愛は、29歳の時、大学卒業後に就職した大手製薬会社を辞めて単身ケニアに渡り、学校建設をサポートするNGOのボランティアに半年間従事した。アメリカの大学に通っていた学生時代、模擬国連に参加し、アフリカで貧困や環境破壊などさまざまな課題があることを勉強した萩生田は、将来は国際機関で働いてみたいという思いもあった。その実現の一歩のために安定した会社員生活に終止符を打ち、2011年アフリカ行きを決意したのだ。そのボランティア滞在中に出会ったのが、花が大きく茎も太い、生命力あふれる美しいケニア産の薔薇だった。そして帰国後、雇用創出とフェアトレードを組み込んだバラ輸入事業をスタートさせたのだ。
COURTESY: MEGUMI HAGIUDA
COURTESY: MEGUMI HAGIUDA
「ケニアで労働のため小学校ができても通えない子どもや、先進国の援助に慣れ切っている大人たちの姿を見て思いました。ケニアで生産された上質なバラをフェアトレードで輸入して日本で販売すれば、現地に雇用を生み出し貧困問題を解決できるのではないかと。単なる援助では依存体質を生み出しますが、フェアトレードで花を輸入すれば、依存ではなく雇用をつくり出すことができると考えたのです」。
ケニア輸出品の2大産品は、「お茶」と「花き」だ。ケニア国家統計局(KNBS)の調査を元にJETROが作成したデータによれば、2023年度のそれぞれの割合は20.8%、20.7%と、この2つで輸出額全体(通関ベース)の4割を占めている。花きはケニアの重要な産業なのである。そのようななか、萩生田が最初に試みた輸入本数は2,500本。いくつもの花農園に取り扱いを持ちかけたが、大規模プランテーション経営の花農園は萩生田を全く相手にしなかった。話を聞いてくれたのは、インド系ケニア人が経営するナイバシャ湖近くにある花農園。児童労働がなくシングルマザーを多く雇用する農園だった。さらに、食堂でランチが無料で食べられたり、農園内に24時間診療のクリニックがあったりと労働環境がよく、近年ではコヒー・紅茶の栽培農園からの転職者が多いというところだった。運がよいことにここが萩生田の取引先となった。
萩生田は2012年、フラワーショップ「AFRIKA ROSE」を運営する母体となる会社を創業した。事業が順調に進むにつれ現地の雇用だけではなく、環境に配慮する意識が強くなり、輸入で発生するCO2をカーボンオフセットするため、薔薇1本の購入につき5円の寄付を任意でお願いする「カーボンオフセット料金」を2020年に導入した。1本の薔薇を日本に輸入するために発生するCO2を1.4㎏と推計。1本の木がその生涯に吸収するCO2=1トンとし、毎月寄付金をケニアの植樹を行う団体に送り、毎月平均20本の木がケニアに植えられているという。
PHOTO: TAKAO OHTA
その萩生田は2023年9月末で取締役を退任し、「AFRIKA ROSE」の経営から退いた。現在では創業者としてお店にも関わるが、2023年3月に立ち上げた「スローフラワー協会」の代表理事として、花を通して、地球環境や生産者の生活環境をより良いものにしていくための活動と発信を始めた。「スローフラワー」は、イタリア生まれのスローフードの花版というようなアメリカ発祥の考え方で、有機農法で栽培された旬の花を地産地消で循環させることで、生産者、消費者、地球環境の全てにメリットがあるというもの。彼女は、オーガニックの花を育てる農園が少ない中、まずは土壌の微生物を復活させ、その力を活用した花畑を作りたいと語る。
「オーガニック食品に気を遣う人はいますが、オーガニックで育てられた花に関心を持つ人は多くありません。化学肥料や農薬の使用により、微生物の多様性の喪失や健康被害なども考えられます。これからは地球を意識して花を買っていますか? という問いかけを行っていく活動をしてきたいと考えています」。
萩生田愛
「AFRIKA ROSE」創業者。一般社団法人「スローフラワー協会」代表理事。1981年、東京生まれ。19歳で渡米しカリフォルニア州立大学を卒業。日系の大手製薬会社に入社し営業及び海外人事戦略に携わる。2011年に退職し、NGOボランティアとしてアフリカ・ケニアへ行き、6か月間働いた際に薔薇と出会う。帰国後の2012年にオンラインショップを立ち上げ、ケニアから直輸入した薔薇のネット販売を開始。2015年、アフリカの薔薇専門店「AFRIKA ROSE」をオープン。2023年、一般社団法人「スローフラワー協会」設立。
https://afrikarose.com/