June 27, 2025
米財団が被災した能登の文化遺産復旧を支援。
世界各地で文化遺産の保護・保存活動を続ける非営利民間組織「ワールド・モニュメント財団(WMF)」(本部・米国ニューヨーク)が、2025年5月21日に石川県七尾市を訪れ、記者会見を開いた。内容は2024年の元日に起きた令和6年能登半島地震で被害を受けた文化財の修復や復旧を推進する2団体への計40万ドルの支援。その対象となったのは城下町の風情が残る七尾市の商店街、一本杉通りの商店主などで運営する「一本杉通りの文化遺産を守る会」と、かつて北前船の拠点として栄え、能登半島唯一の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている輪島市黒島町の「黒島若宮八幡宮再建委員会」。今後、これら2団体はその支援金を活かし、街の歴史的景観の復旧と持続的保存環境の整備をWMFとともに行う方針だ。
2025年4月、WMFは今後の支援のあり方を検討するために七尾市の一本杉通りと輪島市の黒島重要伝建的建築群保存地区の現地視察を行なった。
COURTESY: WORLD MONUMENTS FUND
七尾市一本杉通りでは『高澤ろうそく店』『鳥居醤油店』『小山屋醤油店』に加え、ジャパンタイムズが主催する地方のレストランを称揚するアワード「Destination Restaurants 2024」を受賞した日本料理店『一本杉 川嶋』が店舗として利用する(現在は休業中)『夛田家住宅』の4軒の国登録有形文化財が主な修復の対象となる。プロジェクトは2026年に完了する見込みだ。輪島市黒島町では若宮八幡宮の建造物を中心に、2028〜2029年の復旧完了を目指す。
記者会見でWMF日本代表部ディメイ美代子理事長は、文化遺産が地域の復興や繁栄のきっかけになることは世界的にも前例があること、また、世界112カ国,700カ所以上の支援を行ってきたWMFのネットワークを通じて保護活動が必要な文化遺産の存在を世界に発信できる強みについて語った。七尾市の茶谷義隆市長は感謝の言葉を述べつつ、七尾市のみならず、能登半島の地域全体に文化的遺産が残っていると強調。「黒島若宮八幡宮再建委員会」林義男会長は夏祭りの継続への思いと共に資金援助に対する「感激を住民とシェアしたい」と言い、また、「一本杉通りの文化遺産を守る会」高澤久会長は「街や家族の記憶が残る建物を修復することが大切」だと述べ、それぞれの思いを語った。
ワールド・モニュメント財団(WMF)
1965年、米国ニューヨークで設立。歴史的建造物などの文化遺産を保護・保存することを目的とし、世界各地で政府などの公的組織及び民間のパートナーと協力して、経済的・技術的支援活動や教育・啓蒙活動を行う。1966年、大洪水で被害を受けたヴェネチアの建造物を皮切りに世界各地の修復保存プロジェクトに関わってきた。日本での活動は、広島県・鞆の浦の旧魚屋萬蔵宅再生、京都市・京町家再生、東日本大震災被災建造物文化財復旧保存などの支援がある。