July 25, 2025

地方レストランの未来について語る。

ライター:寺尾妙子

左から、トークセッションの進行役を務めたガストロノミー・プロデユーサー柏原光太郎。2025年度の受賞者『ノンナ・ニェッタ』川村憲シェフ。2022年度受賞者の『里山十帖』桑木野恵子シェフ。2025年受賞者『オーベルジュ オーフ』糸井章太シェフ。

ジャパンタイムズが主催する「Destination Restaurants 2025」の授賞式が5月末、東京・麻布台ヒルズで開催された。食を通じて街おこしの起点となるような地方の10店が選ばれ、今年度及び、過去4回の受賞シェフたちも来場。表彰式の後にはトークセッションも行われた。進行役にガストロノミー・プロデユーサー、柏原光太郎を迎え、今年度2025年の受賞者からは『オーベルジュ オーフ』糸井章太、『ノンナ・ニェッタ』川村憲二の2名、そして2022年度の受賞者の『里山十帖』桑木野恵子が加わり、地方でレストランを運営する楽しさと課題について語り合った。

その土地にしかない食材が手に入るうえに、都会と比べて低コストで店舗を借りられるなど、地方のレストランの魅力はいくつもありそうだが、実際のところはどうだろう。新潟県南魚沼市で日々、山の恵や畑の作物を収穫している桑木野はこう述べる。

「自分では珍しい食材を扱っているという意識はありません。山菜など、普通にそこにあるものをどう扱うかが重要で、それ自体が難しいことだと感じています。そもそも自然は思い通りにはなりません。近年、海で獲れる魚が減っていることや季節で獲れる魚種が変化していると言われていますが、山菜も同じ。年々、同じ時期に同じものが採れなくなってきています。そういったことも含めて1,2年で土地を表現するのは難しい。やはり10年はかかりますね」

京都府で生まれ、芦屋市で修業を重ねた糸井は2022年7月、何の縁もない石川県小松市『オーベルジュ オーフ』のシェフに就任した。

「食材に付加価値を与えるのがシェフの仕事。その点に関しては都会だろうと地方だろうと関係がないと思っています。僕の場合は廃校になった建物を使ってオーベルジュを作り、経済を成り立たせたいという話に興味が湧いたので『オーベルジュ オーフ』のシェフを引き受けたのですが、やはり都会よりも集客は大変です。また、レストラン以上に、宿泊を備えたオーベルジュの難しさも感じています」(糸井)

もう長らく飲食業界では人手不足が叫ばれており、地方で、さらにオーベルジュとなると働き手を見つけ、定着してもらうこと自体が困難で、労働時間の管理に頭を悩ませる店主は多い。また、集客に関しては逆に首都圏であるがゆえに、これまでは“わざわざ出かけるまでもない”と思われがちだった茨城県が昨今、フーディーから注目されていることも話題に上がった。茨城県つくば市に店を構えるイタリアン『ノンナ・ニェッタ』川村は次のように語る。

「茨城は野菜の生産量が多く、海、山、湖もあり、梅山豚のような特徴あるブランド食材もあって、すごく恵まれた土地。首都圏に茨城産の野菜はたくさん出荷されていますが、1日経てば、まったく違う食材になるので、わざわざ来てもらう価値があります。ここ何年かで、もともと仲のいいシェフたちと一緒に茨城を盛り上げるイベントを開催するなどして、発信を続けた結果、料理ジャンルを超えたつながりができました」

「Destination Restaurants 2025」10店の中から、特に今年を象徴する「The Destination Restaurant of the year 2025」に選出された富山県『ひまわり食堂2』についても、富山県のシェフたちの連携が強みであることが審査会で話題に上がるなど、生産者を含めた連携が地域活性化のカギと目される例が増えている。飛び込みでコメントを求められた来場者、コラムニスト・世界ベストレストラン50日本評議委員長の中村孝則は「シェフや生産者だけでなく、メディアや行政など、みんなが連携して地方を盛り上げましょう」と呼びかけ、会場から拍手が起こった。

最後に進行役の柏原が「日本は地方を中心に動く時代になっていく。来年は60人、再来年は70人と増えていくDestination Restaurantsの受賞者がその原動力になるはず」と締めくくった。

Subscribe to our newsletter

You can unsubscribe at any time.

PREMIUM MEMBERSHIPS

1-month plan or Annual plan 20% off!

Premium membership allows members to Advance registration for seminars and events.
And Unlimited access to Japanese versions of articles.

CHOOSE YOUR PLAN

Subscribe to our newsletter