December 20, 2024

「大屋根リング」の中心部は何があるのか?「静けさの森」が表現する未来社会。

ライター:和泉俊史

「大屋根リング」の円の中心にある「静けさの森」。自然と共生するこれからの社会の象徴として計画されている。広さは約2.3ヘクタール。その中央には直径20mほどの池があり、その池を囲むように約1500本の樹木が植えられる。
©EXPO 2025

大阪万博の海外パビリオンは、全長約2キロという巨大な木造建築「大屋根リング」の円の中にすべての国が配置され、「世界はひとつ」を建築で表現することとなる。ではその円の中心には何があるのだろうか? 実は円の中心に位置すのはパビリオンはなく、「森」なのである。それは自然と共生するこれからの社会の象徴としての森で、「静けさの森」と名付けられている。広さは約2.3ヘクタール。中央にある直径20mほどの池を囲むように約1500本の樹木が植えられている。この森のデザインは、この万博のランドスケープデザインディレクターを務めるE-DESIGNの忽那裕樹と日建設計が手掛けた。そしてこの森を取り囲むように配置されるのが8つの特別なパビリオンだ。

大阪・関西万博のテーマは、「いのち輝く未来社会のデザイン」である。これを実現するために日本国際博覧会協会が設定したのが「シグネチャープロジェクト」で、8つのテーマに沿った8つのパビリオンがつくられる。つまり、「大屋根リング」で囲まれた円の中心部に「静けさの森」があり、その周囲に8つのシグネチャーパビリオンが建ち、その周囲に各国の海外パビリオンが並ぶのだ。

テーマは、いのちを「響き渡らせる」「拡げる」「高める」「磨く」「知る」「育む」「つむぐ」「守る」の8つで、それぞれのテーマ館にプロデューサーがたてられ、趣向を凝らした展示とイベントによりメッセージが発信される。リアルとバーチャルという多様な体験により、万博を訪れるすべての人が「いのち」について考え、その概念をアップデートする場所になる場所となることを目指しているのだ。


パビリオン名:「Better Co-Being」

テーマ:「いのちを響き合わせる」

プロデューサー
宮田 裕章
慶応義塾大学教授

Better Co-Being
現代は経済だけでなく、環境や人権、教育、健康など多元的な軸で、文明を再構成する転換点にあります。
つながる世界の中では、多様ないのちを尊重しながら、一人ひとりが輝くことができる未来を目指すことが大切になります。
テーマ事業「いのちを響き合わせる」は、新しい世界を共に創る中で、いのちや未来と共鳴する human Co-being につながる体験です。
By宮田 裕章

© SANAA


パビリオン名:「いのちの未来」

テーマ:「いのちを拡げる」

プロデューサー
石黒 浩
大阪大学教授、ATR 石黒浩特別研究所客員所長

技術と融合することにより、いのちの可能性を拡げる。
70年大阪万博から50年を経て、生きたい「いのち」を自ら設計することが人類の未来ではないだろうか。
技術が支え技術が設計する「いのち」。技術(ロボット)に宿る「いのち」。
By石黒 浩

© FUTURE OF LIFE / EXPO 2025


パビリオン名:「いのちの遊び場 クラゲ館」

テーマ:「いのちを高める」

プロデューサー
中島 さち子
音楽家、数学研究者、STEAM 教育家

STEAM ワクワク!を探す旅へ。
いのちが踊る、いのちが歌う、いのちがひらく。
生きている!という感覚の発露
一人ひとりに潜む多様ないのち(創造性)の爆発的な光、グワッと体の奥深くから立ち上がる、いのちの生々しい原始の歌に耳を澄ませよう!
会期前から会期後まで、さまざまな世界とつながり、学びや遊びや創るや「生きる」の大変革を起こしていく。
これは、万人万物の “多様” な存在価値や、あふれるいのち(創造性)の光を爆発させ、創造の喜びで世界中を繋ぎ、プレイフルで希望に満ちたインクルーシブな未来「共創」(創造性の民主化)社会を模索する旅。
2025年夢洲の「いのちの遊び場 クラゲ館」は、あなたと共に、その歴史的な証人となる。
人生は、こんなにも、おもしろい。
By中島 さち子

© STEAM INC. & TETSUO KOBORI ARCHITECTS ALL RIGHTS RESERVED
© KURAGE PROJECT & DAI NIPPON PRINTING CO., LTD. (DNP) ALL RIGHTS RESERVED


パビリオン名:「null²」

テーマ:「いのちを磨く」

プロデューサー
落合 陽一
メディアアーティスト

未知の風景 変形しながら風景を歪める彫刻。
物理的に現場に行くことの価値を作り出す。人類が未だ見たことのないインタラクティブな構造体。
風景を変換しながら、自然と人間の間にデジタルの自由さを持って調和をもたらす。
数年に一度しかない世界的に大きなナショナルイベントでしか進展しないような建築やインタラクティブ技術の進歩を巻き起こす。

未知の体験 デジタルの身体による合わせ鏡

訪れた人々の身体をデジタル化し、パビリオンの中では有機的に変形し自律的に動作する身体と対話する。
有史以来、行われてこなかった鏡の再発明。
By落合 陽一

© MIKA NINAGAWA
© 2024 YOICHI OCHIAI / DESIGN:NOIZ / SUSTAINABLE PAVILION 2025 INC. ALL RIGHTS RESERVED.
© 2024 YOICHI OCHIAI / WOW ALL RIGHTS RESERVED.


パビリオン名:「いのち動的平衡館」

テーマ:「いのちを知る」

プロデューサー
福岡 伸一
生物学者、青山学院大学教授

コロナ禍に苛まれ、ますます分断が深まる現代社会。混迷から抜け出せないのはなぜだろう。
それは「いのち」とは何かを考える根本的な視点「生命哲学」が抜け落ちているからではないか。

「いのち動的平衡館」では、動的平衡をキーワードに、よりよい社会と地球の未来に向けて、いのちを捉えなおすためのフィロソフィーを手渡したい。
あなたと環境とのあいだには実は明確な境界線はない。あなたを構成している原子や分子は絶えず環境との間で交換されている。そしてあなたのいのちは、38 億年前に奇跡的に生まれた、たったひとつの細胞から出発した壮大な流れの中にあり、未来に手渡されていく。これが動的平衡。
あなたの生命観を根底から揺さぶり、生きることの意味と希望を再発見する体験をお届けします。
By福岡 伸一 

© DYNAMIC EQUILIBRIUM OF LIFE / EXPO 2025


パビリオン名:「いのちめぐる冒険」

テーマ:「いのちを育む」

プロデューサー
河森 正治
アニメーション監督、メカニックデザイナー、ビジョンクリエーター

今、ここに共に生きる奇跡。
はかなくて、尊くて、力強くて、愛おしくて、美しいいのちの輝きと、宇宙・海洋・大地に宿るあらゆるいのちのつながりを表現。
人間中心からいのち中心へのパラダイムシフトと、いのちを守り育てることの大切さを訴求することを目指す。
By河森 正治

© 2024 SHOJI KAWAMORI/OFFICE SHOGO ONODERA, ALL RIGHTS RESERVED.
© SHOJI KAWAMORI / VECTOR VISION ALL RIGHTS RESERVED.


パビリオン:「EARTH MART」

テーマ:「いのちをつむぐ」

プロデューサー
小山 薫堂(放送作家、京都芸術大学副学長)

私たちのパビリオンでは地球環境や飢餓問題と向き合いながら日本人が育んできた食文化の可能性とテクノロジーによる食の最先端を提示しより良き未来へと導く「新しい食べ方」を来場者と共に考えます。
しかし一方で、次のような後味を残したいと思っています。
食を通じて様々な「当たり前」をリセットすることでいのちにとって本当に大切なものに気づき、謙虚な気持ちから感謝や優しさが生まれ、それが来場者のほのかな幸せにつながる。
そして今夜から、食事の時間を昨日よりも少しだけ大切にしたくなる・・・
世界じゅうの人々に「いただきます」という日本語と食に向き合う心構えを持ち帰っていただけますように。
by小山薫堂

© EARTH MART / EXPO 2025


パビリオン名:「Dialogue Theater–いのちのあかし–」

テーマ:「いのちを守る」

プロデューサー
河瀨 直美(映画作家)

わたしのなかのあなた、あなたのなかのわたしに出会う場所。
人はそれぞれの違いから、「分断」をうみます。
しかし、人は心を持ち、「対話」をすることができる生き物です。お互いを対話によって認めあい、自分が変わることで未来の世界も変わるはず。
いま、森をモチーフとしたシアターで、心の対話がはじまります。
By河瀨 直美 

© LESLIE KEE
© NAOMI KAWASE / SUO, ALL RIGHTS RESERVED.
© NAOMI KAWASE, ALL RIGHTS RESERVED.


INFORMATION

テーマ: いのち輝く未来社会のデザイン Designing Future Society for Our Lives

サブテーマ:
Saving Lives (いのちを救う)
Empowering Lives (いのちに力を与える)
Connecting Lives (いのちをつなぐ)

コンセプト: People’s Living Lab 未来社会の実験場

1. 展示をみるだけでなく、世界80億人がアイデアを交換し、未来社会を「共創」(co-create)。

2. 万博開催前から、世界中の課題やソリューションを共有できるオンラインプラットフォームを立ち上げ。

3. 人類共通の課題解決に向け、先端技術など世界の英知を集め、新たなアイデアを創造・発信する場に。

開催時期: 2025年4月13日(日) – 10月13日(月) 184日間

開催場所: 大阪・夢洲(ゆめしま)

URL: https://www.expo2025.or.jp/

PHOTO: KOUTAROU WASHIZAKI

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