September 05, 2018

沿岸部でのアマモ再生〜スタディツアー(岡山県備前市)

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Participants haul floating eelgrass onto a fishing boat in Bizen, Okayama Prefecture, on June 9. | SHINOBU YAMADA

ジャパンタイムズ Satoyama 推進コンソーシアムにより企画されたスタディツアーは、6月8日、9日の二日間にわたって岡山県を訪問し、持続可能な社会づくりの成功例を視察した。初日には真庭市(ジャパンタイムズ7月16日付に記事掲載)、2日目には備前市の沿岸地域にある日生を訪れた。

両日とも、人の手が入ることで守られている地方の里山と里海に焦点を当てる企画だった。

スタディツアー一行は2日目の6月9日、里海について学ぶため、日生での活動や取り組みを視察した。

2基の橋で日生の海岸とつながっている頭島に、船大工によって1981年に建てられた宿「おやじの海」に一泊した一行は、新鮮な魚介類がふんだんに使われた食事を楽しんだ。そして翌朝早く、魚の競りの見学のため日生港に向かった。

競り人の大きな掛け声が20分ほど響きわたる中、六畳一間ほどの大きさの金属の台の上に次々と魚の入った箱が載せられては、あっという間に買い手がついた。

競りが終わると一行は、港に出て40人ほどの団体に合流した。集まったのは主に、日生の漁場に特有のアマモを扱う体験型イベントに参加するためにやってきた小学生とその親だった。

アマモ場は、小さな魚やその他の生物にすみかと栄養を提供すると同時に、光合成をすることで水中に酸素を放出し、カキ養殖や沿岸漁業にとって良好な環境を作り出す。

このアマモのイベントは、日生町漁業協同組合、生活協同組合おかやまコープ、公益財団法人おかやま環境ネットワークが、日生の海洋環境の豊かさと、それを守る取り組みに対する意識を高めることを目的に企画したものだ。

イベントの参加者は10組ほどの班に分かれ、それぞれ小さな漁船に乗り込み、根からちぎれてしまったアマモが固まって浮いている場所まで移動した。

そして、地元漁師の説明に従い、熊手のような道具を使って、水面に浮いているアマモを漁船の甲板に引き上げる作業を行なった。

アマモの種は、稲のように細長く、まっすぐで平らなアマモの葉の表面に育つ。このイベントの目的は、流れてしまったアマモが漁船の邪魔をしないよう、取り除くと同時に、次の種まきのためにアマモの種を採取することだった。

アマモ回収の活動を終えた後、スタディツアー一行のために用意されたレクチャーで、日生町漁業協同組合の天倉辰己専務理事から、「日生の漁場には、戦後すぐのころにはおよそ590ヘクタールものアマモ場があったんですが、それがその後40年の間に12ヘクタールにまで減ってしまったんです。主に、下水による汚染や垂直護岸の設置にともない、浅瀬が消失してしまったことが原因です」と説明があった。

引き上げられたアマモは網状の袋に詰められ、カキいかだにくくりつけられる。袋は水に浸かった状態なので、アマモの葉は腐って分解されていく。そして袋の中に残った種は、10月になると種まきに使われる。

日生のアマモ場は、どこからかアマモを取ってきて海中に放り込んで、増えてきたわけではない。そのようなやり方では環境が変わりすぎたり、よどんだ水によって日光が遮られたりするため、根付きも育ちもしなかった。そこで日生では、もともとそこに生えていたアマモの種を採取すると同時に、海底にカキ殻を敷き詰めることで、泥が巻き上がらないようにしたのだ。

この方法により、日生のアマモ場は2015年までに250ヘクタールまで回復。沿岸には多種多様な魚が戻ってきて、カキも安定的に豊漁となった。

「同じくカキの生産地として知られる東北地方のアマモ場は、東日本大震災後の津波によって流されてしまい、その後まだ回復していない場所もあるんです。カキ養殖を守っていくためには、アマモ場を再生することが重要です」と、NPO 法人里海づくり研究会議の田中丈裕理事は話した。

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