October 21, 2019
地方の活性化、暮らしのアイデア(The Japan Times Satoyama & ESGアワード2019 特別セッション)
Japan Times Satoyama推進コンソーシアムと Japan Times ESG推進コンソーシアムが最近開催した一回目となる表彰式で、各分野での活動を評価された関係者が賞を授与された。そして、Satoyama部門の受賞者3名が、それぞれの活動について語った。
里山とは、既存の天然資源の持続的利用のために、地元住民により手入れされている地方の山や森林を指す。海に関係する似た概念として里海がある。
このパネルディスカッションには、大賞を受賞した北海道ニセコ町長の片山健也氏と、優秀賞を受賞した GHIBLI 船団丸の代表取締役の坪内知佳氏、同じく優秀賞を受賞した特別非営利活動法人ウルシネクストから、柴田幸治氏が登壇した。
9月6日に東京で行われたこのディスカッションは、Satoyama 部門の審査員であり、日本総合研究所調査部主席研究員の藻谷浩介氏がモデレーターを務めた。
片山氏は、ニセコ町の取り組みや特徴などについて語った。ニセコは、ウィンタースポーツにぴったりの質の良いパウダースノーで知られるが、スキーリゾートだけがこの町の特徴ではない。
例えば、ニセコには地元の農家と観光協会で運営されている道の駅がある。
「当時の地元農協は、農家が道の駅で直売することに大反対でしたが、個々の農家の皆さんは、道の駅の計画と運営について真剣で、熱心でした」と、片山氏は述べた。
最初はトイレとベンチしかなかったこの場所で、まずは7軒の農家が作物を売り始めた。
「現在では約70軒もの農家が参画しており、年間の売り上げは4億円にものぼります」と、片山氏は話した。そして、「地元の人々が自分たちで道の駅を経営するにつれ、街全体が変わり始めました」と語った。
片山氏はもともと民間企業の出身だが、前例主義的で組織を現状のまま守り、批判を避けるためにできるだけ何もしないのが普通という、地方自治体の態度を変えたいと考えていた。そこで2009年、町長選に出馬し、当選。今期で3期目だ。
住民の自治の力を育て、透明性を確保し、ニセコの町民に政治を取り戻すことに関しては、片山氏には並々ならぬ熱意があるのだ。
山口県萩市で2011年から何十人もの漁師を率いてきた坪内氏は、漁師の生活や日本の漁業自体を守りたいという気持ちがあったと語る。
坪内氏は、地元の船団のいわゆる六次産業化への参入を手助けしてきた。六次産業とは、一次産業に加工と販売を組み合わせ、漁業協同組合を通さずに、レストランやホテル、個人客などに生産者が直接販売することだ。
漁業が衰退しつつある地域の漁師も、価格を自分で決めることができれば、天然魚の漁で生計を立てられると坪内氏は考え、日本各地の他の船団にもコンサルティングを提供している。
禁漁期間や禁漁区域、漁法の規制などのルールを守ることで、バランスのとれた海の生態系を守りつつ、漁業を続ければ、持続可能な漁業が実現できる。
「人々は地上のことには敏感ですが、海の価値にはあまり関心を向けません」と、坪内氏は述べた。そして、「ですが、海も皆さんのすぐ隣にある、日本の大事な資産なのです」と話した。
坪内氏は、海の価値に対する人々の意識を高め、国全体の漁業の変革を支え続ける。
岩手県盛岡市にあるウルシネクストは、国産の漆の保護を目的に活動している。
「国の文化財の修復のため、国産の漆が必要とされています。これまで人々が努力して守ってきた、歴史と価値のあるものを、私たちが壊れるままにしておくことはできないと思ったのです」と、柴田氏は述べた。
だが、日本で使われている漆の98パーセントほどは、外国から輸入されている。そして、国産漆の約70パーセントが岩手県で作られている。
「最近、漆の木の栽培に関心を持つ地域が増えてきたので、日本各地の7つの苗業者と協力して、漆の木の栽培を新たに始める人々に、さまざまなサポートを提供しています」と、柴田氏は話した。
漆の木が、漆掻(か)きができるまでに成長するには約15年かかる。だが、ちまたではより若い、5年ほどの木からでも漆を採取できる技術も開発されつつある。
柴田氏は、漆は軽くて硬い素材だが、紫外線によって分解可能だと言う。
「よって、より環境に優しい選択肢として、プラスチックの代わりに使える場合もあると思います」と、柴田氏は述べた。