October 21, 2022
【Sustainable Japan Award】社会の課題に向けて、共に新しい未来を創る
Sustainable Japan Award 2022の授賞式では、ESG部門における受賞企業・団体4社によるパネルセッションが行われ、PRI事務局ジャパンヘッド兼CDPジャパンディレクターの森澤充世氏がモデレーターを務めた。大賞を受賞した株式会社野村総合研究所(NRI)の執行役員の桧原猛氏をはじめ、優秀賞を受賞したライオン株式会社の執行役員全社環境戦略担当の岡野知道氏と日本生命保険相互会社の取締役常務執行役員の佐藤和夫氏、審査員特別賞を受賞したクリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)の普及促進部課長の森島千佳氏が登壇し、持続可能な社会に向けて、地道に継続的な成果を出して頑張っている各企業の活動に加え、社会の課題に向けて他社と共同し連携する重要性や、新たな未来の価値に向けた取り組みについて語った。
大賞を受賞したNRIの桧原氏は、「新しい社会のパラダイムを洞察して、その実現を担う。」と語った。コンサルティングとITソリューションという二つの素質を持ち合わせたNRIが、自社の強みを磨き、未来を洞察して、その実現までも担うことにNRIの価値があると言う。各々の企業が個別最適にシステムを構築し稼働する場合と比べ、金融業界で高いシェアーを誇りデファクトスタンダードになっている当社の共同利用型サービスによって、環境へのインパクトを抑え、CO2排出量を73.9%削減できると試算している。自社の環境インパクトを減らすためにも、当社のデータセンターでも再生エネルギーを使用し、利用率はもうすぐ100%に到達する見込みである。カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーをテーマに、コンサルティングと脱炭素化の可視化ツールを提供しながらビジネスを広げ、デジタル変革でお客様に貢献し、社会への価値を創出していくことを目指す。
生活必需品を扱うライオン株式会社は、原材料調達、生産、物流、消費者による使用、破棄に至るまでの流れを循環する中で、グループ事業がそれぞれの場面でできることをしっかりと取り組み、環境負荷を減らす。原料を運ぶことを簡素化するために、複数の企業の工場が並ぶ新しい形態に取り組んでいる。物流においても、商品の配送を他社と一緒に行うことでCO2削減に貢献する。また、消費者の商品使用段階におけるCO2排出と水使用量が多いことから、生活習慣を変えることにも着目している。執行役員全社環境戦略担当の岡野知道氏は、ここ30年で虫歯が大きく減ったのは、当社をはじめ歯科医師会や教育現場などの働きかけで歯磨きをする回数が増えたという生活習慣の変化が背景にあるとし、一社でできることは少なくても、多くの方々としっかりと生活習慣を変えていくことで、世の中に貢献したいと考えている。その一つとして、捨てない習慣を作る取り組みを行う。使用済みの歯ブラシは、学校のリサイクルボックスで集めていただき、定規など学校で使用できるものにリサイクルし、集めていただいた学校に返却する。また複合素材のパウチは再利用が困難なため、他社のものも一緒に回収できるインフラづくりと、回収したパウチを再利用できる技術開発を目的に、花王とライオンが共同開発に取り組む。「リサイクリエーション」という活動のもと、再利用パウチを世の中に提案したいと考えている。「お客さまとの接点を強みにしながら、またこれを責任と感じながら、一緒に新しい文化を作っていくことを目指している。」と岡野氏は語った。
日本生命保険相互会社の取締役常務執行役員の佐藤和夫氏は、気候変動に対する取り組み、従業員、人権尊重、ESG投融資の推進について当社の取り組みを紹介した。気候変動問題への取り組みは、まず事業として、全国にある1,500の保険営業所では、LED化による消費電力を削減し、事業所の屋上に太陽光パネルを設置し、電気を賄っており、東京、大阪にある19棟全ての営業所では、再生可能エネルギーを使用している。機関投資家としては、資産運用ポートフォリオにおける排出量について、2030年度中間目標として、総排質量2010年度対比で45%以上削減、インテンシティは2020年度対比で49%以上削減を定めて取り組んでいる。当社が投資家として取り組むというよりは、どのようにESGの取り組みを日本企業が進めていけるかを考案し、企業とタッグを組んで進めている。
10年以上前からダイバーシティー&インクルージョンを掲げて、着実に取り組んでいる会社でもある。保険会社の役割は、お客様の生活と人生の持続可能性をサポートする事業である。保険商品は、目に見えない商品のため、ニーズを顕在化し、付加価値を提供できる人材を育成することに力を入れている。女性管理職の目標数字を掲げながら、その候補者の育成をおこなう。また、男性の育児休暇を推進し、取得率100%を9年連続達成した。人権尊重においては、営業職員を中心に、約7万名の職員に人権意識を啓発しながら人権デューデリジェンスを設定し、取引先の人権に関する取り組み・管理状況について説明ができる取り組みを進めている。
ESG投融資の推進として、脱炭素化に向けての投資を進めてきたが、今年度から脱炭素ファイナンス枠を5,000億円設定し、日本企業で取り組んでいるトランジションファイナンスや、イノベーションの取り組みを後押しできるよう日本企業への働きかけを行っている。
また国際的イニシアティブの参画も積極的に行っており、脱酸素にむけた国際的ルールの策定にあたって、日本の立場でしっかり意見発信してコミットしていくことを強化している。
海洋プラスティックごみ問題を解決するために、プラスチックを作る、または、利用している企業・団体が社会的責任を積極的に果たすことを目的とし、2019年にクリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)が発足した。一般消費者向け商品のサプライチェーンを担う企業を中心として、官民連携で3Rの進化や推進、代替素材の活用を通したイノベーションの加速とプラスチックのゴミのゼロ化を目指し、日本初のソリューションをジャパンモデルとして世界に発信する。現在、一般消費者向け商品のサプライチェーンを担う企業を中心として、さまざまな領域の478社・団体が加盟しており、普及促進部会長の森島千佳氏は、ここが当社の大きな特徴であり強みであると指摘する。海洋プラスチックごみ問題の解決への日本のさまざまな環境適合設計やリサイクル・システム技術等をASEANやグローバルな団体との連携・ネットワークによって世界への貢献を目指す。企業間の連携として、ビジネスマッチングを目的としたイベントや、Web上でマッチングプラットフォーム、シンポジウムでの活動の展示などを行い、積極的に活動をPRしている。さらに、自治体とも連携し、回収ボックスの設置など、実践の場の規模が拡大している。これらの活動の経緯によりアライアンスが増え、事業化に至るものが増えている。今までの活動に加えて、理想像・未来からのバックキャストでの発想も入れた取り組みも推進していき、海洋プラスチックごみの問題解決を目指す。
個社単独の取り組みでは解決困難な社会の課題にも、他社と手を取り合って実現していく必要がある。「花王とライオンは、今まで競い合っていたものが手を組んで一つの社会インフラを作る取り組みだが、今まで手を取り合ったことがない企業とも接する機会を増やし、新しい枠組みでできることはないかと考えたいと強く願っている」とライオンの岡野氏は語った。またCLOMAの森島氏も「一社だけでできることに限界あり、業種業界を超えた取り組み、あるいは、官民の連携といった大きな枠組みが必要」と述べた。
未来を描き、その未来のために各受賞企業・団体が行う取り組みは、里山の自治体の活動とも共通点があり、持続可能性といった視点において、ESGと里山が一体化しながら、共同しているのだと森澤氏は最後に語った。
Sustainable Japan Grand Prize
株式会社野村総合研究所
私たちは創業以来、コンサルティングやITソリューションを通じて、お客様と共に社会課題を解決してきました。企業理念「未来創発」のもと、持続可能な社会づくりに挑み続けます。
Sustainable Japan ESG Excellence Award
ライオン株式会社
ライオンは、創業の精神「事業を通じて社会に貢献する」を受け継ぎ、環境や社会の課題の解決、歯磨や洗剤等の商品提供、生活者の皆様とエコの習慣化に取り組んでいます。
Sustainable Japan ESG Excellence Award
日本生命保険相互会社
1889年の創業以来、「共存共栄」·「相互扶助」の精神で事業を営み、グループ全体で約1400万人のお客様数と約80兆円の総資産を有する、日本を代表する生命保険会社です。
Sustainable Japan ESG Special Award
クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス
CLOMAは業種を超えた幅広い関係者の連携を強め、イノベーションを加速するためのプラットフォームとして海洋プラスチックごみ問題の解決に挑戦する企業アライアンスです。