July 31, 2020

日本の企業連合2050年までにプラスチック製品のリサイクル率100%達成を目指す

Japan Clean Ocean Material Alliance

2015年にジョージア大学のジェナ・ジャンベック教授が主導した研究により、毎年800万トンのプラスチックごみが海に流れ込んでいることが明らかとなり、海洋プラスチックは重大な国際問題のひとつとして浮上した。

一企業だけで取り組むにはこの問題は大きすぎるため、業種を超えた企業の連携から成るクリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)が2019年1月に設立された。CLOMAは、2050年までに容器や包装などに使われるプラスチック製品のリサイクル率100%達成を目指す。

ジャパンタイムズの取材の中でCLOMAの澤田道隆会長は、CLOMAは情報を共有したり共通認識を形成したりするだけでなく、参加企業の技術力、連携力、実行力を合わせて目標達成のために具体的な行動を起こしていくと語った。

「CLOMAは、アイデアを実行に落としていける、企業が自分たちで動く団体にしたいと思っています」と澤田氏はいう。澤田氏は、日本の大手消費財・化粧品メーカー、花王株式会社の代表取締役、社長執行役員でもある。

5月にCLOMAは、5つの目標を含むアクションプランを発表。一つ目はプラスチック使用量の削減。二つ目は使用済みプラスチックを新しいプラスチック製品に再処理するマテリアルリサイクルの強化。三つ目は、廃プラスチックを化学的に処理することで工業用の原材料にするケミカルリサイクル技術の開発・社会実装。 四つ目は生分解性プラスチックの開発と利用。そして五つ目は紙とセルロース材料の開発と利用となっており、CLOMAは、実証実験においてこれらのアクションを追求していく。

6月25日時点で、CLOMAにはプラスチック製品の製造、利用、廃棄のバリューチェーンに関わる342の企業が参画している。これら参画企業は、キーアクションと実証実験に参加、貢献する予定だ。

今年開始する実証実験は、PETボトルのリサイクル率を現在の85%からさらに上げるための回収事業や、残液のついてくることが多いトイレタリー商品の包装のマテリアルリサイクル、生分解可能なプラスチックコンポスト化やバイオガス化、紙プラ複合素材のリサイクルだ。2021年には、薄肉化等による洗口液容器に使われるプラスチックのリデュース、多層複合材や汚れのひどいプラスチック容器や包装のケミカルリサイクルをスタートする。

これらの実証実験は、アクションプランの二段階目、つまり新しいシステムの導入に関する政府への提言や新しい社会システムの提案などに進む前に解決しなければならない課題を洗い出すことを目的としている。

「日本での成功事例を世界各国のコミュニティを支援するために活かしたいのです」と澤田氏。参画企業がこれだけあると、ひとつの業界から、普段は競合関係にあるような企業が複数参画しているケースもある。しかし澤田氏は、競争を超えて標準化し、共有し、数多くのステークホルダーに利益をもたらすことができる技術があると考える。

また澤田氏は、会員企業同士の協業によるライセンスビジネスの創生も後押しする。こうすることで、企業はライセンサーとして自衛しつつ、ライセンシーとして他企業や共同プロジェクトが開発した技術の恩恵を受けることもできる。

「非競争領域だけで活動しようとすると、実現できることが非常に限られてしまいます」と澤田氏は言う。「重要なのは、CLOMAの活動を競争領域においてどうビジネス的な利益につなげるか、そうすることでCLOMAの活動に積極的に参加するモチベーションを上げるということです。」

アクションプランの発表以前から、CLOMAはすでにプラスチックごみ問題に会員企業全体で力を合わせて取り組むためのプラットフォームとしての役割を果たしてきた。設立からわずか1年半の間に、プラスチックのリデュース、リユース、リサイクルをするための新しいソリューション作りにつながるようなビジネスマッチングの成功事例をたくさん作ってきたのだ。

ひとつの例が、凸版印刷株式会社と株式会社GSIクレオスによる、生分解性プラのレジ袋の開発だ。凸版印刷のフィルム製造技術とGSIの生分解性樹脂で植物由来のポリマーとコーンスターチが原料となっているMater-Biとを組み合わせることで、生分解性のレジ袋を作ることに成功し、昨年12月から販売が開始されている。

同様に、株式会社カネカとセブン&アイ・ホールディングスは共同で生分解性のストローを開発。全国の10,000の店舗にてプラスチック製のストローに代わって導入することを目標に、昨年11月から各地のセブンカフェでの利用が始まった。

北村化学産業株式会社と日本製紙グループは、北村化学産業が開発した発泡バリアトレーと日本製紙が製造している紙製バリア蓋材とを組み合わせるというマッチングを実現。これにより、食品用の包装にこれまで主に使われてきた容器と蓋の組み合わせに比べるとプラスチックの使用量を40%も削減することができた。

澤田氏は、関わる両社にも社会にも利益をもたらすこのようなビジネス上のコラボレーションは理想的なESG(環境、社会、ガバナンス)の取り組みであるという。「ESGの取り組みのためにコスト負担が大きすぎるというのはサステイナブルではありません」社会貢献を続けるためにはビジネスの観点からも意味のある方法をとることが重要だと指摘する。「続けることができれば、企業価値は高まり、それが増益につながり、長期的なリターンを得ることができます」

こういったコラボレーションが会員企業同士の間だけではなく、会員企業と学術機関との間でもできるだけ多く生まれるよう、澤田氏は願っている。「学術的な成果をまだ最大限に利用できていないと思います。企業と学術機関とをつないで新しい技術を共有できるフレームワークが作れれば、もっと多くの成功事例を作ることができると思います」

プラスチックごみを減らすための新しいソリューションを生み出したり導入したりする成功例を積み上げれば、CLOMAの活動を加速度的に海外に広げていくことができる。

「まずは今インドネシア政府との取り組みが始まっています。インドネシアはまだ海洋プラスチック汚染への対策については始まったばかりの段階です」と澤田氏は言う。この最初の段階というのは、意識の向上や、これまできちんと捨てる場所が無かったために道にゴミが投げ捨てられていたので、それを防ぐためにあちこちにゴミ箱を設置するなどといった段階だ。

「ゴミを処理する以前にまずはゴミを集めなければなりません。日本の成功事例が活きそうなところには活用しつつ、国ごとに異なる状況や政策も考慮しなければなりません」CLOMAがインドネシアとの協力の中から得る知識や経験は、将来他国とプロジェクトを実施する際に役に立つと澤田氏は話す。

「遠隔会議システムなどの新しいツールの出現により、国際的なプロジェクトは以前よりもずっと実行しやすくなりました」CLOMAは、ステークホルダーが一丸となって新しい技術の製作、利用、推進に取り組むことができるプラットフォームになるだろうと澤田氏は確信している。

「プラスチック製品は何十年も前からありました。海洋プラごみ問題は1年や2年で片付くものではありません。今ある環境を保存する以上のことをどれだけ早くできるかは、技術と長期的な努力にかかっています」

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