February 18, 2022

第一生命HD、企業のESG活動を長期支援。国際ルール作りに積極的に参画も

第一生命ホールディングス株式会社
代表取締役社長 稲垣精二(いながき・せいじ)

1986年第一生命保険相互会社(当時)入社、2015年常務執行役員、16年取締役常務執行役員などを経て、17年より現職。第一生命保険株式会社・代表取締役社長を兼務。ハーバード大学経営大学院修士(MBA) | Koutarou Washizaki

第一生命グループは今年、創業120周年を迎えた。グループの中核事業会社でルーツでもある第一生命保険が、日本初の相互会社として生命保険を販売したのが始まりだ。第一生命グループはいまや約38兆円の資産を扱う日本有数の機関投資家であり、ESG(環境・社会・企業統治)投資を資産運用の柱と位置づける。

「世間の人が喜ぶ事業か、なくてもいいと思う事業かを考えよ。事業は世間のためにやるものだ」

Seiji Inagaki at the ESG Talk held at The Japan Times’ offices on Jan. 28 | Koutarou Washizaki

第一生命ホールディングス(HD)と第一生命保険の社長を兼務する稲垣精二氏は100年以上続く事業の秘訣を問われ、創業者が残した言葉を挙げた。「(第一生命保険は)生活の安定を家庭に届けるために創業者が作った会社だ。時代のニーズに応じて資産運用のあり方は変わったが、アセットオーナーとして期待に沿えているか、世間の人が喜ぶかどうかを問い続けてきた」という。

幅広い社会課題の中で、特に重視するのが気候変動への対応だ。2020年に日本政府が50年カーボンニュートラルを宣言し、日本は脱炭素化に向け大きく舵を切った。

事業会社と機関投資家の両面を持つ第一生命グループは、事業会社として、2024年までに国内1300の事業所を100%再エネ化すると表明。機関投資家としては、2050年までにポートフォリオのカーボンニュートラルを目指す国際イニシアティブ「ネットゼロ・アセット・オーナー・アライアンス(NZAOA)」にアジアから初めて加盟した。中間目標として、2025年までに上場株式・公募社債・不動産ポートフォリオの温室効果ガス排出量の2019年度末比25%削減にコミット。目標達成には投資先企業の協力が必要で、脱炭素化を促すエンゲージメント(対話)の強化や、技術革新、インフラ投資などを資金面で支援するトランジション・ファイナンスなどにより、投資先の取り組みや行動変容を後押しする。

稲垣氏は「既存のビジネスモデルをどう変えるかが、日本にとっての最大の挑戦」と指摘する。「日本には、カーボンニュートラルに向けてアジャストできるだけの技術力がある。企業には勇気をもって挑戦してほしい。われわれ金融機関はそれを応援して見守りたい」と覚悟を示す。

職場での多様性の確保にも早くから取り組んできた。戦後から女性を中心に雇用を進め、現在は社員の9割以上を占める。ただ、課長職では3割に届いたものの、部長職以上では女性が圧倒的に少ないため、2024年4月までに女性部長職・支社長職で3割に、2030年までに女性役員で同じく3割に引き上げを目指す。「女性の登用を増やすにはロールモデルが必要だ。優秀な女性役員が育ってきており、目標は達成できそうだ。お客さまは男女半々であり、経営陣に多様性がなければ受け入れてもらえないかもという緊張感がある」という。

ESG投資の基本方針は大きく3つ。まず、運用収益獲得と社会課題解決を両立する資産ポートフォリオの構築だ。全資産の運用方針・運用プロセスにESG要素を組み込み、気候変動リスクなどを踏まえた投資判断を実施する。次に、社会課題の解決に向けた投融資。重点領域として「生活の質(QOL)向上」「気候変動の緩和」「地方創生・地域活性化」を選定した。2021年8月末時点でSDGs債3600億円を含むESGテーマ型投資は累計約9400億円に達しており、最大の投資先は気候変動問題ソリューションで約3900億円だった。2023年度末までに累計投資金額1.1兆円以上を目指す。

Inagaki serves as representative director and president of the Dai-ichi Life Insurance Co. Inagaki also earned a master’s degree in business administration from Harvard Business School. | Koutarou Washizaki

3点目は、投資先企業のESG取り組み促進に向けたスチュワードシップ活動だ。ESG課題に応じた情報提供や解決策の提案、気候変動関連の情報開示の促進、国内外の協働エンゲージメント団体やイニシアティブへの参画などが該当する。情報開示は国際的なルール作りの進展などが影響し、10年前に比べて環境が整ってきたと評価する。

稲垣氏によると、機関投資家としての生命保険会社の特徴は長期投資ができることだ。生命保険の場合、保険料預かりから保険金支払いまでの期間が平均約20年と長く、資産運用期間も長い傾向がある。例えばエネルギーのトランジションといった日本企業にとって難しい課題も、短期的な数値にとらわれず、長期的視野でリターンを考え支えることができるという。

第一生命HDは世界の160超の金融機関が運用ポートフォリオのネットゼロを目指すイニシアティブ「グラスゴー・ファイナンシャル・アライアンス・フォー・ネットゼロ(GFANZ)」にも加盟しており、稲垣氏はアジアで初めて、GFANZの全体運営を主導する「CEOプリンシパルグループ」の20人に名を連ねる。気候変動対策や情報開示のルール作りが欧米中心で進む現況に危機感を抱き、「日本はアジア代表として、アジアの意見を発信する責任がある」と手を上げた。高度成長期に有効だったビジネスモデルをカーボンニュートラルの世界へスムーズに移行させるには、格差問題、エネルギー価格の高騰、雇用喪失といった「副作用」が起きないように、国ごとに固有の事情に配慮した枠組みが必要不可欠と考える。「日本として旗を見せていくことが大切だ。(日本のアセットオーナーとして)国際舞台に積極的に参画していく」(稲垣氏)との思いを強めている。

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