January 27, 2023

サントリー、ライフラインの地下水と森林保全に尽力

Maiko Muraoka
Contributing writer

全国に21カ所ある「サントリー天然水の森」の水源|サントリーホールディングス

飲料業界のグローバルリーダー・サントリーホールディングス株式会社は1899年の創業以来、多くの方法で社会還元に尽力してきた。その1つが環境への取り組みだ。持続可能性(サステナビリティ)が国際社会全体の一般的な関心事になるずっと前から、サントリーは「人と自然と響きあう」という企業理念に従い様々な自然環境保全活動に従事してきた。

多々ある自然の恵みの中でも、サントリーはとりわけ水から恩恵を受け、水に恩返ししている。「水」はまた、同社が事業存続にとって重要と考えるサステナビリティのテーマ7項目‐水、CO2、原料、容器・包装、健康、人権、生活文化‐の一番目に据えられている。「水質の良い地下水は当社のライフラインですので、私たちは水におけるネットポジティブ達成を目指し森林保全に取り組んでいます」とジャパンタイムズとのオンライン取材にて、サントリーホールディングス株式会社の小野真紀子サステナビリティ経営推進本部長(取材時)は話した。

Makiko Ono Suntory Holdings

小野氏の言う「森林保全」とは人間がある程度手を入れながら森林を健全な状態に保つというものだ。小野氏は森林が茂り過ぎると日光がほんのわずかしか地面に届かず、小さな植物が育ちにくくなって、動物や微生物はそこに生息できなくなり、土壌が痩せて硬くなったままになると説明した。このような土壌は雨水を蓄える力がないため地滑りのリスクが増す。

2003年にスタートしたサントリーの「天然水の森」活動は多様な生態系が存在でき、さらに日本の確かな水資源として機能を果たす豊かな森の保全を目指すものだ。4月現在、全国21ヵ所に「サントリー天然水の森」があり、総面積は約1万2000ヘクタールに及ぶ。

サントリー奥大山「天然水の森」では、定期的に水質検査を行っている| サントリーホールディングス

様々な分野の研究者・専門家40名以上の支援の他、「天然水の森」活動は科学的な実地調査に基づくアプローチを取り入れている。土地測量、動物・昆虫および土壌・植物のフィールド調査に加え、「レーザー航測などの先進技術を組み合わせた測定システムを用い森全体の断面図を作成しています」と小野氏は述べ、100年後の森の様子を見据えた整備計画立案の重要性を強調した。

こうした調査に基づき、サントリーは間伐、剪定、植苗や獣害対策など、それぞれのロケーション(森)に必要な種類の保全作業を行う。「異なる2つの場所にある同じ種類の木はDNAが違うかもしれません。そのため、私たちは必ずそのロケーションの木と同じDNAを持つ苗木を植えています」と、小野氏は話した。

猛禽類が生息しているか否かも森の状態を示す重要なバロメーターだ。生態系ピラミッドの頂点に立つこれら捕食者が森に棲んでいるなら、残りの生態系も正常ということだ。サントリーが1973年から鳥類保護活動に従事している理由はここにある。「タカやワシなどの猛禽は木の高い位置に営巣します。森林を適切に整備しないと、巣周辺の木は背が高くなり過ぎたり、葉っぱが茂り過ぎたりして、巣の入り口を塞ぎ、最終的に親鳥は巣を捨てざるを得なくなります」と小野氏は説明した。

サントリーの森林および生物多様性の保全に向けた取り組みは同社ビジネスの水源を確保するだけでなく、2030年までに(世界の)海域と陸域の少なくとも30%を保全するという国際目標「30 by 30」の達成に寄与するものだ。サントリーは4月に本国際目標に沿って日本政府により設置された産官民の有志連合「生物多様性のための30 by 30アライアンス」に参画した。

目標達成には、「その他の効果的な地域をベースとする手段(Other effective area-based conservation measures:OECM)」が重要な役割を果たすことになるだろう。国連生物多様性条約は(OECM)を「保護地域以外の地理的に画定された地域で、付随する生態系の機能とサービス、適切な場合、文化的・精神的、社会経済的・その他地域関連の価値とともに、生物多様性の域内保全にとって、公的な長期の成果を継続的に達成する方法で統治・管理されているもの」と定義している。サントリーは「天然水の森」の1ヵ所で2022年中のOECM試行登録を目指し、残りについても数年以内に登録したい考えだ。

サントリーの環境の取り組みは日本から遠く離れた地域にも広がっている。サントリーは2021年10月、同社傘下の蒸留酒メーカー、ビーム サントリーと共同でスコットランドでの泥炭地および水源保全活動「Peatland Water Sanctuary」を開始した。小野氏は泥炭地が保水機能、水質、生物多様性の保全と炭素の貯留において重要な役割を担うと説明した。しかし、同社が遠く離れた異国の泥炭地再生・保全に取り組む理由はそれだけではない。泥炭はスモーキーフレーバーで知られるスコッチウイスキー造りにはなくてはならないものだ。サントリーは1世紀以上前にスコットランドから製法を学び同社最初のウイスキーを造った。「私たちはスコットランドの(ウイスキー)文化を持続可能なものにするお手伝いがしたいのです。サントリー流の恩返しと言えるかもしれません」と小野氏は話した。

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