January 10, 2023

サントリー、天然水を育む森の再生に投資

サントリー社員による枝打ち作業|サントリー

「Today Birds, Tomorrow Humans」。これは飲料大手サントリーホールディングスが1973年、野鳥保護活動を始めた際に掲げたスローガンだ。野生動物に影響を与える環境リスクは、やがて人にも降りかかってくることを意味している。サントリーは同年、山梨県の白州蒸溜所の敷地にバードサンクチュアリを開園し、自然保護の重要性を訴える意見広告を新聞に出した。野鳥のイラストを使ったこの広告はシリーズ化され、さまざまな新聞で100回以上掲載された。高度経済成長の時代、業界をリードする企業の「自社製品をまったくアピールしない広告」は話題を集め、「朝日広告賞」を受賞した。

創業者の鳥井信治郎は、事業で得た利益を事業に再投資するだけでなく、社会に還元することを信念としていた。その精神は、1899年の創業からいまも引き継がれている。社会は自然環境の恵みなしには成り立たない。「特にサントリーという会社にとって、天然水は生命線。創業者や過去の経営陣は、それが最初からわかっていた」。執行役員でサステナビリティ経営推進本部・副本部長の風間茂明は、自然保護を訴える先見的な広告が約50年も前に生まれた背景をこう説明する。

アリューシャン列島産のシジュウカラガン|サントリー

サントリーは1989年、「サントリー世界愛鳥基金」を創設した。これまでに延べ472件、総額6億2,000万円(約450万ドル)の助成金を野鳥保護団体に贈呈し、野生のガン、ヤンバルクイナ、サシバ、コウノトリなど、「レッドリスト」に指定された絶滅が危ぶまれる鳥類をよみがえらせる活動を支えてきた。「この種の保護活動で成果を出すには、長期的な取り組みが必要だ。野鳥保護団体が資金不足を理由に活動をあきらめなくてもいいように、活動が軌道に乗るまで支援を続けたい」と風間は語る。

日本雁を保護する会(The Japanese Association for Wild Geese Protection)は、サントリーが長年支援する団体の1つだ。同団体を中心とした日露共同の調査と繁殖、放鳥活動により、何十年も前に姿を消した渡り鳥が再び日本に戻ってきた。会長の呉地正行氏は今年、日本国内における鳥類研究と鳥類保護への顕著な功績をたたえる「山階芳麿賞」と、世界の湿地保全と賢明な利用の促進に貢献した個人や団体に贈られる「ラムサール湿地保全賞」を受賞した。

サントリー世界愛鳥基金は2021年、海外の鳥類保護団体に助成するグローバルプログラムを開始した。「野生動物、特に鳥類に国境はない」。風間はこう述べ、鳥類とその生息地保全のための協調的かつ包括的アプローチの重要性を強調する。

サントリーは鳥類保護活動を資金面で支援するだけではない。「日本の鳥百科」をオンラインで提供し、200種類以上の野鳥を文字のほかにイラストや写真、鳴き声を使って紹介している。

鳥の情報を検索できるだけでなく、バードウォッチャーがいつ、どこで、どんな鳥を観察したかといったデータを追加できるアプリケーション「eBird Japan」のメインスポンサーでもある。eBirdは、アメリカのコーネル大学鳥類学研究室(Cornell Lab of Ornithology)が構築した野鳥観察記録データベースを運営する、世界最大級の生物多様性に関する科学プロジェクトの1つだ。こうした取り組みを通じて情報を共有することで、サントリーは鳥と多様な野生生物が生息しやすい環境を守るための活動の重要性を啓発していく考えだ。

森の生物多様性ピラミッド|サントリー

サントリーの野鳥保護活動は、環境保全と水源涵養(かんよう)機能の向上を目的とした活動「天然水の森」とも連動している。2003年にスタートしたこのイニシアチブは、現在では国内21カ所の森に拡大し、同社が国内工場で汲み上げる地下水量の2倍の水を涵養している。

「森林の水源涵養機能を高めるためには、動物や植物などすべての野生生物のバランスを取り戻す必要がある」(風間)。間伐や枝打ちなどの森林管理は、木漏れ日を適度に保ち、樹木だけでなく森の生態系全体を健全に保つために必要なことだという。

森林管理は、大型猛禽類など生態系ピラミッドの頂点に位置する上位捕食者の保護にも貢献する。サントリーが長野県で「天然水の森・北アルプス」を始めた当時、オオタカの古巣が発見されたが、タカの姿はどこにもなかったという。「タカは巣を作る場所を見つけるために木の間を低空飛行するが、(森林管理が不十分で)木が密生しているとそれができない」(風間)。つまり、タカにとって棲みにくい森になっていたからだ。そこで、タカが営巣しやすいように間伐を実施。その2年後、環境保全チームが設置した巣箱を使うタカの姿が確認された。

「森の生態系ピラミッドの頂点にいる大型猛禽類は、森の健全性を測るバロメーターだ」と風間は話す。


サントリーは、ジャパンタイムズと協力し、持続可能社会の実現に向けた日本の取り組みを発信する企業グループ「Sustainable Japan Network」の会員です。ネットワークの活動詳細や入会問い合わせについては次のURLをご覧ください。 https://sustainable.japantimes.com/sjnetwork-jp

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