April 28, 2022

【サントリー】水の大切さと、地下水ができる仕組みを知る旅へ。

ライター:和泉俊史

左上/工場見学の最後に到達する展望ルーム。北アルプスの餓鬼岳(標高2647メートル)を望むことができる。
右上及び左下/展示風景。小さな子供でも理解できるように、水源の仕組みや環境を守る取り組みを、模型を用い解説している。
右下/駐車場からトンネルを進むと、工場敷地内に入ることができる。 | PHOTOS: KOUTAROU WASHIZAKI

日本は国土の2/3を森林が占める緑豊かな土地と言える。ゆえに水資源に関しては豊富とされているが未来永劫その恩恵に預かれるかというと、そう楽観視はできないだろう。必要以上に早いサイクルで採水すれば、やがて地下水は枯渇してしまうからだ。日本でも人気のフランスのミネラルウォーター<ボルヴィック>が、2020年末、日本での出荷が終わると報じられたことは記憶に新しい。このミネラルウォーターの採水工場はフランス中央部オーヴェルニュ火山自然公園の北端に位置するボルヴィック市にあり、地下約100メートルの深井戸から年間280万立方メートル(2リットルペットボトル換算で14億本)の水を採取していた。しかし近年、周辺の川は干上がり農業ができなくなるなどの問題も出てきたという。原因は採水工場の水の汲み過ぎによる水源の枯渇だといわれている。一般的に地下水は、数十年前に降った雨がゆっくりと地中に浸透し蓄えられたものだ。地下に貯まるより早いペースで水を汲み上げ続ければ、やがて水源は枯渇し、地盤沈下や砂漠化、塩害などを引き起こすことになる。

そんな水資源の持続可能性に、真摯に向き合ってきた企業が日本の飲料メーカーの<サントリー>だ。「工場が一年間に汲み上げる2倍以上の量の地下水を生む、森を育てる」ことを目標に、「天然水の森」の活動を2003年にスタート。社内に「水科学研究所」を設置し、現在日本全国に4か所稼働している採水工場近くの森を中心に、日本全国15都府県21か所で「天然水の森」約1万2000㏊を整備している。

その整備には植林も含まるが、一番重視している点は、“ふかふかの土”をどうすれば作ることができるか、にある。雨となって地上に降った水が川に流れるのではなく、地中にゆっくりと浸透していくことで地下水は貯まる。そのため良い土を作る生態系や植生が重要になってくる。その観点から森の管理・保全を行っているのだ。また森整備の効果を推定するため、地下水の見える化にも取り組んでいる。現地で調査した水質・水量・地形・地質・土壌などのデータをコンピュータに取り込み、地下水の流れなどを再現。このことにより、地球温暖化による気候変動の地下水への影響など、未来予測も行っている。

そんな水に対する取り組みや北アルプスの水源の特徴を、子供から大人まで無料で学ぶことができる施設が、長野県大町市にオープンする。「サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場」に併設された見学施設である。見学者はまず駐車場に車を停め、川のせせらぎが見える小道を進む。すると暗い幻想的なトンネルが現れる。そこを通り抜け階段を上がり、さらに緑の木々の中の小道を進む。こうしてビジターセンターに到着すると、見学はここからスタート。約60分かけて施設内を解説付きで巡るのである。シアターで映像や、展示室(英語の説明文もある)で模型などを見た後、最後にミネラルウォーター、サントリーの天然水<北アルプス>がつくられる工場のレーンを、上から眺めることができる。見学後は展望ルームへ。ここでボトリングされたミネラルウォーターが提供され、その水源である北アルプスの餓鬼岳を望みながら、およそ20年かけて地下に染み込んだ水を味わうことができるのだ。

敷地内にはカフェも併設され、工場見学の前後に、芝生の上に寝ころびながら、のんびりくつろぐこともできる。水の大切さを学びながら、自然を満喫できる施設。オープンは今年2022年5月14日だ。ぜひこの夏のヴァカンスのディスティネーションに加えてみたい。

サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場

●長野県大町市常盤8071‐1
Tel:050‐3182‐7911
開館時間9:30~16:30(最終入館15:30)
日曜・月曜・火曜休。冬季休業・工場休業日等の臨時休業あり。
入館無料。
https://www.suntory.co.jp/factory/kitaalps/

サントリーの天然水の採水工場を訪れ、見学できる施設。

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