April 09, 2019
広がる責任ある投資の動き
RI アジア・ジャパン2019は、環境・社会・ガバナンス(ESG)の要素に基づいた、責任ある投資に関係する主要な議題について学び、共有し、議論する場である。そうした要素は、これからの10年の投資環境のあらゆる側面を形作るものだ。
Responsible Investor が主催する RI アジア・ジャパンは、世界中から第一級のスピーカーが登壇し、内容が示唆に富んでいると定評がある。
毎年開催され、今回で8回目となるこの会議は、東京・港区の東京ミッドタウンで4月10日、11日に開催される。このイベントは責任投資原則(PRI)と日本取引所グループ(JPX)と連携し開催され、経団連と日本証券業協会(JSDA)の協力によって行われる。
投資やビジネス慣行に ESG の要素を取り入れ、統合させることは日本で盛り上がってくることが予想される。その基盤は2014年以降、「伊藤レポート」や新しく、そして改定されたスチュワードシップ・コード、コーポレートガバナンス・コード、伸びている PRI への日本の署名機関数、そして世界最大の年金基金である年金積立金運用独立行政法人(GPIF)のリーダーシップにより、整ってきている。
過去5年、金融庁(FSA)、経済産業省、環境省といった団体が、ESG の指針を支援すべく尽力してきた。一方で JPX は、RI アジア・ジャパンをスタートから後押しし、東京証券取引所で開催してきた。JPX は今や Sustainable Stock Exchanges Initiative の参加メンバーになっており、これは東京が持続的な金融センターであるための欠かせない要素だ。
中でも注目され、かつ日本が転換点にあるというこの会議の中核となる考え方は “Dash to the Goals” で、これは経団連が二つの政策提言のうちの一つに付けている名前だが、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」の美徳をたたえている。
SDGs は責任ある投資、ESG、そして持続的な資金調達・供給に対して大きな変化を表し、それは、ユニリーバ CEO のポール・ポールマン氏の言葉を借りれば、地球という惑星にロードマップを提供するものだ。JSDA も SDGs について肯定的な意見(“The Role of Securities Industry for the Sustainable Development Goals”)を発表しており、経団連同様に、SDG の施策に重点的に取り組むため内部に委員会を設置した。
経団連や JSDA といった団体が SDGs を重視し、影響力を行使することの重要性を、大げさに述べることは難しい。SDGs に対して政府がもたらしている明確なリーダーシップと並び、このことは責任ある投資が、日本で主流になりつつあることの重要な節目を示している。
今年の RI アジア・ジャパンは、気候と SDGs に焦点を当てる。経団連の企業行動・CSR 委員会委員長で、損保ジャパン日本興亜の取締役会長を務める二宮雅也氏と一橋大学特任教授の伊藤邦雄氏が、一日目の基調講演に登壇する。
産業界の専門家やリーダーが参加するパネルディスカッションでは、一日目の「ESG が投資リターンを向上させる根拠とは」、二日目の「気候変動への注目と低炭素経済への転換」をはじめとするトピックについて話し合う。
GPIF、第一生命保険、MS&AD ホールディングス、東京海上ホールディングスや Transition Pathway Initiative(世界のアセットオーナーが率いる、低炭素経済への国際的なイニシアチブ)といった著名な責任ある投資機関からのスピーカーが、2030年までとそれ以降のインベストメント・チェーンにおけるビジョンを推進するための主要テーマについて話し合う。
さらに、FSA、英国財務報告評議会や欧州委員会の金融安定・金融サービス・資本市場同盟総局といった規制機関が、ガバナンスや気候関連のデータ開示に関連する規制の進展について議論する。
一般的なパネルディスカッション、インタビューや講演のほか、上級の専門家による20の、掘り下げた内容のセッションが行われる。これらのセッションでは、スチュワードシップとコーポレートガバナンス、持続可能な債券、株式、オルターナティブ、自然資源、そしてグローバルな気候変動について焦点を合わせる。
この会議は、ザ・リッツ・カールトン東京で4月10日の夜に行われるカクテルレセプションに加え、インベストメント・チェーンのさまざまな産業のリーダーたちとのネットワーキングの機会を提供する。