July 11, 2019
革新的なリサイクル方法でプラスチックごみ削減に貢献
世界の海洋を浮遊する大量のプラスチックごみの写真は実に衝撃的であり、プラスチック汚染に対する人々の意識向上に役立つ。だが、プラスチックは環境に有害だと言い切るのは、あまりにも短絡的だ。
発泡スチロール製トレーほど衛生的で、軽量かつコスト効率に優れた食品包装資材は他に見当たらないと思われる。その他のプラスチック製品もまた、特定の用途に適した特性を備えている。
日本では、国内のほぼ全域で、リサイクルのための包括的な回収システムが整備されており、消費者が道端や河川にプラスチック製品をポイ捨てしない限り、プラスチック製品はごみにならない。真の問題は、世界中で、リサイクル可能なこの原料が使い捨てにされているということだ。
エフピコのような企業が、市民の理解と積極的な参加を得ながら、自社のリサイクル技術強化において努力を続けていけば、日本は世界のモデルケースになり得るだろう。
広島県福山市と東京都に本社を置くエフピコは、プラスチック製食品容器製造業のリーディングカンパニーだ。
1962年の創業以来、消費者のニーズや、環境問題への取り組みにおける社会的責任に応えるべく、エフピコは絶え間ない進化を遂げてきた。同社は、フロンガスの使用を規制する初の国内法が施行された1988年より1年早い、1987年に当該ガスの使用を中止したが、これはほんの一例にすぎない。
発泡スチロール製トレーは5~10パーセントの石油由来ポリスチレン樹脂と90~95パーセントの空気で出来ている。これが、発泡スチロール製トレーの圧倒的な軽さの理由だ。エフピコは、ポリスチレン樹脂の発泡倍率を上げる技術の開発に成功し、発泡スチロール製トレーのさらなる軽量化を実現した。製品が軽くなれば、輸送に必要なエネルギーも少なくて済む。
「プラスチックは安価なので、捨てられてしまいます。プラスチックは軽量です。ゆえに、プラスチックごみは長い距離を漂流していくことが可能です。さらに、耐性に富んでいるため、分解されません」と、エフピコ環境対策室ジェネラルマネージャーの冨樫英治氏は述べた。
幸いなことに、日本ではプラスチックごみの分別はすでに習慣化しているが、エフピコ方式の循環型リサイクル「トレー to トレー」の一環として、洗浄後の使用済みプラスチック製食品トレーの回収拡大に向け、一層の企業努力が必要だと、冨樫氏は述べた。
「いまだに、スーパーマーケットの店先に設置された回収ボックスのことや、回収されたトレーがどこへ行くのか、知らない方も大勢います」と、冨樫氏は話した。
エフピコで製造された発泡スチロール製リサイクルトレーは、スーパーマーケットに配送され、そこで食品容器として使用される。消費者は、使用済みトレーを洗浄、乾燥してから、スーパーに設置された回収ボックスに返却する。使用済みトレーは、配達帰りのエフピコの配送トラックによって引き取られ、各地区の選別センターなどに搬入されると、センターで白トレーとカラートレーに分類される。それから、複数の洗浄処理を経て、破砕、溶解の後、米粒ほどの大きさのペレットに加工され、循環型リサイクルトレー「エコトレー」の原料となる。
同社によれば、エコトレーでは、原材料となる石油の使用量が削減されるため、バージン原料のみで製造された食品トレーと比較すると、CO2排出量を30パーセント低減することができるという。
さらに、エフピコは使用済みペット(PET、ポリエチレンテレフタレート)ボトルをリサイクルし、同社オリジナルの環境対応透明容器「エコAPET」に再生している。回収されたペットボトルは、選別、洗浄された後、粉砕処理にかけられ、超薄手の素材シートの原料となるフレークに加工される。素材シートは、食品容器に適した衛生レベルを確保するため、バージン原料を使って製造された PET 樹脂シート2枚でサンドイッチ状に挟まれる。
「ゴミ収集に有料の指定ごみ袋を導入している自治体では、スーパーやその他小売店におけるプラスチック製トレー回収率が、ごみ袋に関する規定がない自治体を大きく上回っています」と冨樫氏は述べ、各自治体との協力強化の重要性を強調した。
「回収ボックスに持っていけば、プラスチック製トレーは無料で回収されるので、消費者としてはごみ袋にかけるお金を節約するのが目的かもしれませんが、当社としては、自分たちが使ったトレーが回収後、何にリサイクルされるのかということについても、興味を持ってもらいたいと考えています」と、冨樫氏は続けた。
東京都葛飾区では、区がプラスチック製食品トレーの回収に協力している。
「プラスチック製食品トレーは毎週、決まった日に、他のプラスチックごみとは別々に回収され、その後、区が雇用するシニアの方たちによって選別されています」と、冨樫氏は説明した。
さらに冨樫氏によると、同区内の各ごみ集積所の管理を受け持つ地区委員は、自分たちが回収したトレーが、どのように「新しい」トレーにリサイクルされるのかを学ぶため、エフピコのリサイクル工場を毎年見学に訪れているという。
「トレーが再びトレーに生まれ変わる。トレーサビリティの面では、最もシンプルなリサイクルシステムです。この完全な循環に対する理解が、(リサイクルに対する)人々の意識向上と支援拡大を促します」と、同社経営企画室ジェネラルマネージャー佃寿彦氏は話した。
消費者の理解を深め、協働を促進する取り組みの一環として、エフピコは小学生向けの工場見学ツアーを30年以上にわたり実施している。
「この30年で世代交代が進みました。当社の就職面接を受けた大学生が、『子供のころ、学校の遠足で御社の工場を見学しました』と話してくれました」と、冨樫氏は笑顔で語った。エフピコによると、同社のリサイクル工場の年間見学者数は、約2万人に上るという。
「当社は今後も一般市民の方々の理解を深め、コミュニケーションを図る努力を続けていきます。なぜなら、当社のリサイクル技術は、消費者の方々から回収した使用済み容器なしには、機能しないからです」と、冨樫氏は述べた。
使用済み食品トレー回収の推進を目指し、エフピコは昨年、テレビ等でおなじみの映画コメンテーター、LiLiCo 氏をイメージキャラクターに起用し、ポスターを作成した。LiLiCo 氏は、リサイクルを始め、さまざまな環境への取り組みにおける最先進国の一つであるスウェーデンの出身だ。ポスターを作成するにあたり LiLiCo 氏は、エフピコ式リサイクルについて学ぶべく、同社のリサイクル工場の1つを訪問した。今年の5月時点で、約6,700の店頭でポスターが掲示されている。
「スーパーマーケット、コンビニエンスストアやその他小売店といった、当社顧客の方々からは、当社のリサイクル技術や啓発活動に高い評価を頂いています。なぜなら、顧客の方々自身も、環境問題への取り組みにおける企業の責任について、高まり続ける社会的プレッシャーにさらされているからです」と、同社経営企画室 IR・広報課チーフマネージャーの高島裕人氏は話した。
「環境に優しい包装資材への切り替えに前向きな店や小売企業が増えています」と、冨樫氏は付け加えた。エフピコは使い捨てではなく、リサイクルを選択する消費者が増えることも期待している。
さらに、エフピコは日本政府からの要請を受け、一般市民に向けたさらなるアピール活動と、国際社会への実績紹介を兼ね、長野県軽井沢町で6月15日と16日に開催された「G20持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会合」の併設イベントである、「地球へ社会へ未来へ G20 イノーベション展」に出展した。
経済産業省と環境省が主催したこのイベントは6月14日に始まり、関係閣僚会合の会場から徒歩圏内に位置する軽井沢プリンスショッピングプラザの駐車場で開催された。
G20 参加国の代表団、日本政府関係者、マスコミや地元の人たちを含め、イベントの来場者数は約3,800人に上り、エフピコの展示ブースにも同社のリサイクル技術を学ぼうとする人々が訪れた。
「当社の取り組みは、どの国でもすぐに取り入れられるという類いのものではありません。循環型リサイクルは第一に、大規模な回収システムを機能させなくてはならないからです」と、冨樫氏は述べた。そして、「それでも当社は、プラスチックを今以上に有効活用できる方法を考え、光明を見いだしたいと願っています」と、話した。