October 17, 2022

【エフピコ】使用済みトレーを経営資源に

FPCO Chairman and Representative Director Morimasa Sato | The Japan Times

食品トレー大手のエフピコは、競合他社に先んじて1990年に使用済みトレーの店頭回収によるリサイクルをスタートした。それは、廃棄トレーによる環境汚染が深刻な社会問題になりかねないという危機感からだった。

直接のきっかけとなったのは、1990年に米マクドナルド社がハンバーガーの包装に使用する発泡スチロール製容器を廃止し、紙製ラッピング・ペーパーへ変更すると発表したことだ。当時マクドナルドが使用していた容器は保温性に優れていたものの、消費者が破棄した容器が米ロサンゼルスの海岸に打ち上げられ、マクドナルドの不買運動が起きたのだ。当時、毎年米国の小売業界を視察していた創業者の小松安弘は、日本でも発泡スチロール製容器への風当たりが強まる可能性があると感じ、リサイクルを始めることをいち早く発表したのだ。

「マクドナルドのニュースがセンセーショナルに国内で伝わると、日本でもノー・トレー運動が起きるのではないかと危惧をした」とエフピコ会長の佐藤守正は当時の状況を説明する。

The Japan Times

小松が危機感を持ったのは、それだけが理由ではなかった。当時、国内では急増する廃棄物が社会問題になりつつあったのだ。

エフピコは対策として、まず大阪や本社のある広島で、スーパーマーケット6店舗にリサイクル・ボックスの設置を依頼した。この設置により思いがけないことが起こった。使用済みの食品トレーが集まっただけではなく、設置した店舗では他のスーパーマーケットより来店する顧客が増加したのである。

その後リサイクル・ボックスを設置する店舗数は徐々に増え、当初エフピコは回収したトレーを別の製品に再生していたが、1992年に使用済みトレーをリサイクルしたトレーtoトレーによる「エコ・トレー」を開発し、「エフピコ方式のリサイクル」を確立した。1995年の容器包装リサイクル法制定より前のことである。

エフピコにとって次の転換点となったのは、大手スーパーによる「エコ・トレー」の全店舗での採用だった。「この決定によりリサイクルの流れは加速した」と佐藤は言う。回収トレーの増加、そして日本全国に選別センターを設置しトレーを圧縮したことによる運搬効率の向上により、当初赤字だったリサイクリル事業は軌道に乗り始めた。2022年3月時点でリサイクル・ボックス設置の店舗は約10,000店舗になった。しかし回収されるトレーはまだ4割ほどの割合であり、これをさらに引き上げたいと佐藤は話す。

The Japan Times

エフピコ方式のリサイクルは、エフピコ以外に消費者、スーパーマーケット、包材問屋の協力により成り立っている。消費者には使用済みトレーを洗って乾燥してもらい、スーパーマーケットには店頭のリサイクル・ボックスに消費者が持ち込んだトレーを回収してもらう。包材問屋にはスーパーマーケットなどに納品した帰りの便を利用して、使用済みトレーの引き取りと一時保管をしてもらう。

エフピコ方式のリサイクルの他にも、エフピコの経営を持続可能なものにしている要因がある。エフピコは、知的障害者を正社員として雇用しているが、それは障害者雇用の義務からではない。佐藤によると、彼らは白色と色付きトレーの選別にすぐれ、その正確な選別能力への評価が雇用に結びついている。

さらに、エフピコの競争力の源泉は従業員にあると佐藤は言う。「皆で頑張った結果の利益をどう配分をして投資をし、働く環境を良くするか。その結果、我々の作るものの競争力につながるという循環を止めないようにする。それこそサステナブルな経営だと思っている」。


Naonori Kimura
Industrial Growth Platform Inc. (IGPI) Partner

食品用のトレーを扱う同社では、1990年に初めてトレーのリサイクルに着手しました。現在では、「エコトレー」という商品名で国内での盤石な地位を築いています。今では当たり前のようなリサイクル活動ですが、当時としてはかなり大胆かつ不確実性高い取り組みであり、これらの仕組みを組み上げる上では小売店・運送業者など多くの方との連携が必須で、まさに先見の明を持った強いリーダーシップがなければ、成しえなかったものです。佐藤さ社長は、「エフピコでは主語は社員だ」と強く言い切ります。多様な人材を活かし、働きやすい環境への積極的な投資を通じて、全社員一体となった付加価値創造を目指しています。「エフピコで働いて良かった」と多くの社員が振り返ることができる会社、それこそがエフピコにおけるサステナブル経営の源泉です。「年輪経営」という言葉で表される通り、急激な成長を追わず、社員と共に・お客様と共に、これからも新たなる循環型社会の地平を切り拓かれて行かれることでしょう。

Subscribe to our newsletter

You can unsubscribe at any time.

PREMIUM MEMBERSHIPS

1-month plan or Annual plan 20% off!

Premium membership allows members to Advance registration for seminars and events.
And Unlimited access to Japanese versions of articles.

CHOOSE YOUR PLAN

Subscribe to our newsletter