January 23, 2024

【みずほフィナンシャルグループ】日本が注力すべき再生可能エネルギー関連産業とは

Hiroko Nakata Contributing writer

Yasuhiko Ushikubo | Mizuho Financial Group

地球温暖化を抑制するために世界の注目が再生可能エネルギーに集まるなか、日本が注力すべきは、洋上風力発電や水素、カーボンリサイクル関連の技術を発展させ国際競争力を高めることだと、みずほフィナンシャルグループは最新レポートにて述べている。

「やはり日本が注力すべきは電化。特に再生可能エネルギーをいかに増産するかという話だ。」みずほフィナンシャルグループのグループCSuO(Chief Sustainability Officer)である牛窪恭彦氏はインタビューの中でこう述べた。

サステナビリティと日本の産業競争力強化に関する12月1日に発表されたレポートの中で、日本は技術革新とビジネスの構造改革が必要であると指摘されている。それによると、脱炭素において日本が注力すべき事業分野は、浮体式洋上風力発電と水素関連事業、カーボンリサイクルだ。

「再生可能エネルギーについて、まず私達が取り組まなければいけないのは洋上風力発電だ」と牛窪氏は話す。

再生可能エネルギーの発電量を大幅に増加させるためには、日本を囲む海域の利点を活かしつつ、浮体式洋上風力発電の技術をさらに開発する必要があるという。

A screenshot of Mizuho’s sustainability report | Mizuho Financial Group

日本が風力発電を進める強みは、発電に適した海域が日本海に複数あることである。一方、国土の3分の2が山に覆われており、大規模な太陽光発電システムを設置することは容易ではない。山の斜面に太陽光パネルを設置すれば、豪雨による土砂崩れの被害にあいかねない。遠浅の海が沿岸に拡がる欧州諸国では着床式洋上風力が適しているが、日本の狭い大陸棚には、海底に建設しない浮体式が適している。

日本企業には風力発電ビジネスに技術的な強みを期待しうる。例えば、風力タービンの部品、浮体、海底ケーブルや変電所などの電力システム、保守点検サービスなどである。タービン自体については、現在、デンマーク、ドイツ、スペイン、中国などが製造しているが、「これらの要因を鑑みると、洋上風力発電は一大ビジネスになるだろう。浮体式風力発電をいち早く技術的に確立させ、部品を含めてサプライチェーンを確立させることで、日本は競争力を獲得できるのではないか」と牛窪氏は語る。

2つ目に将来の脱炭素化に期待の持てる事業は、水素関連事業である。鉄鋼業など高温の熱源が必要な産業のために、LNG(液化天然ガス)、石油、石炭の代替燃料として考えられるのが水素であると牛窪氏は話す。

日本に必要なことは、高効率の電気分解装置、水素の輸送用船舶、低コストの水素ステーションなどのための技術開発、サプライチェーン構築であるとし、これらのビジネスに加えて、脱炭素化のためにカーボンリサイクルも進めなければいけないと牛窪氏は述べた。

しかし問題は、洋上風力発電や水素関連ビジネスが実を結ぶには時間がかかるということだ。洋上風力発電所は多くが未だ計画中であり、建設が見込まれるのは多くが2030年以降だ。また、浮体式に関しては発電コストの高さが課題として挙げられる。

温暖化対策の国際ルール「パリ協定」で示された、産業革命前からの気温上昇を1・5度に抑えるとの目標のために、専門家は2030年までに二酸化炭素(CO2)の大幅な削減が必要だと主張してきた。11月30日から12月13日までアラブ首長国連邦(UAE)・ドバイで開催された国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)では、10年間で化石燃料からの脱却を加速すること、2030年までに再生可能エネルギーを現在の3倍に拡大させることなどを明記した最終合意書を採択した。

合意内容について牛窪氏は、化石燃料全般に関する脱却という方向性や、2030年に向けた再生可能エネルギーの目標など、前進した部分があると評価をした。一方、合意が大きく進んだとまでは言えず、「実効性を高めていく上での各論については引き続き議論が必要な内容になっていると理解している」と指摘した。各国の立場が大きく異なるなかで次回開催されるCOP29では「より難しいかじ取りが今後も継続していくとみている」と述べた。

日本については、浮体式風力発電の本格稼働が見込まれる2030年代までに、CO2排出削減のあらゆる手段を講じることが必要で、例えば、住宅への太陽光パネル設置、可能な沿岸での着床式風力発電の稼働、厳格な規制に基づいた審査を行った上での原子力発電所の再稼働、石炭火力発電所へのアンモニア混焼技術の開発などが挙げられると述べた。

「金融機関として、そうした将来性のある技術に対する取り組みをファイナンスを通してしっかりと支えていく」と牛窪氏は述べ、金融業のみにとどまらず、政府への政策提言のほか、顧客への一気通貫の伴走などの幅広いサービスを提供していきたいと話した。

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