事業戦略を持続可能なものに

May 29, 2021

Naonori Kimura
INDUSTRIAL GROWTH PLATFORM, INC. (IGPI), MANAGING DIRECTOR

「ESG」を構成する「環境」「社会」「ガバナンス」のうち、ガバナンスの取り組みが日系企業に幅広く浸透しているが、飾りとしてではなく、本気で環境と社会の取り組みを企業価値として考える会社はまだ少ない。Japan Times ESG経営シンポジウムの第二コーポーレートセッションのモデレーターを務める木村尚敬氏はこのように指摘してから、サントリーホールディングス株式会社、トヨタ自動車株式会社、株式会社メルカリを代表するパネリストを紹介した。3社の代表者により、それぞれの環境・社会活動の発表と、ESGの理念について議論が行われた。

それぞれ1899年と1937年に創業されたサントリーとトヨタの両社は日本を代表する老舗企業であるのに対し、メルカリは8年前に創業して以来、循環型社会のビジョンが反響を呼び、ユーザー数が爆発的に増えてきた。業界と企業年齢が異なる3社はどのようにESGに取り組んでいるのか。登壇者はそれぞれの取り組みを紹介しながら、サステナビリティ促進において長期的なビジョンと自社の利益を超えて社会と環境を含めた包括的な考え方の重要性を強調した。

Tomomi Fukumoto
SUNTORY HOLDINGS LIMITED, SENIOR GENERAL MANAGER OF CORPORATE SUSTAINABILITY DIVISIONPRESIDENT AND CEO

飲料企業であるサントリーは、自然資源の採取から生産過程、消費まで含める場面でのサステナビリティ促進に取り組んでいる。2019年に策定したサスティナビリティビジョンでは、水のサステナビリティ、2050までにバリューチェーン全体で温室効果ガス排出の実質ゼロを目指すこと、2030年までに使用するすべてのペットボトルの素材を、化石由来原料の新規使用ゼロを目指すことに重点を置いていると執行役員 コーポレートサステナビリティ推進本部長・福本ともみ氏が説明した。

特に水源涵養に関しては、2003年以来、国内の21箇所で「天然水の森」を設定。森林整備を行い、既に『国内の工場で汲み上げる地下水の2倍以上の水』を育んでいる。このような活動を海外でも展開し、2050年までに全世界の自社工場で取水する量以上の水を育むことを目指している。福本氏は「水は自然の恵みなので、大きな地球の水循環の一部を使わせていただいています。できるだけこれを邪魔しない、使った分以上のものをお返ししないといけない」と水資源を大切にするサントリーの理念を語った。

Yumi Otsuka
TOYOTA MOTOR CORPORATION, DEPUTY CHIEF SUSTAINABILITY OFFICER

サントリーと同様に、トヨタのサステナビリティ戦略は生産過程における温室効果ガスの削減のみならず、本業の自動車生産以外の領域に目を向ける形で進んでいる。近年自動業界が直面している変革期において、トヨタは「自動車会社」から「「モビリティカンパニー」へのモデルチェンジを手掛けているとトヨタ自動車株式会社 Deputy Chief Sustainability Officerの大塚友美氏が説明する。2020年のCESで発表されたモデル都市事業「ウーブン・シティ」の取り組みを紹介した。静岡県裾野市で建設中のこの未来都市は、自動運転などの技術を実証する「実験台」として整備されている。道路や広場の公共空間・オフィスや住宅の建物などのあらゆるところにセンサーを埋め込み、全てのデータを組み合わせた「デジタルツイン」を作ることで、安全な自動運転を可能とするプラットホームを目指しているそうだ。しかしトヨタにとっては、開発中の技術の実験台よりも、様々な会社、研究者、市民と連携して社会問題の解決に取り組む場として意義があるようだ。「多くの方々から本当に住んでみたい、一緒にプロジェクトをやってみたいという問い合わせをたくさんいただいています」と大塚氏は話した。

月間ユーザー数2000万人を超えるスマホのフリマアプリを運営するメルカリは創業時から、大量生産・使い捨て消費から脱却し、循環形社会を実現するビジョンのもと、成長してきた。取締役President(会長)小泉文明氏は個人間の不要なモノの売買を可能とするビジネスモデルについて「テクノロジーがなかった時代に市場が非効率だったところをダイレクトにつなげ、滑らかにすることを大事にしている」と語った。

小泉氏によると、メルカリのビジネスモデルを考えるきっかけとなったのは、創業者らの若い頃の海外旅行だった。発展途上国でも先進国でもあらゆる場所に大量生産・消費されたものがゴミとなっている現実にショックを受け、モノが一人のみの使用後捨てられるのではなく、複数の人に使われ続けるように2次流通のシステムを構築する—このビジョンに共感する人材が40カ国から集まっていると小泉氏は話した。

Fumiaki Koizumi
MERCARI CO., LTD. DIRECTOR, PRESIDENT (CHAIRMAN OF THE BOARD) CEO OF KASHIMA ANTLERS F.C. CO., LTD.

3社の代表者は全員、自社の利益以外のことを考える重要性について話した。メルカリの小泉氏は、二次流通でモノが循環していく社会においても、それまで一次流通でお金を儲けていたクリエーターやメーカーにも、お金がペイバックする仕組みを今後作りたいという野望を打ち明けた。そうなれば、使い捨てのモノを大量生産するのではなく、長く流通し続けるモノを作ることが利益につながると予想される。

社会の一員として活動する意識が全員に共通していた。サントリーは企業理念で価値観の一つとして掲げている「利益三分主義」に基づき、環境保全活動の他に、サントリーホールのような文化事業の形でも利益を社会に返している。トヨタは、「幸せを量産する」という新たなミッションを定義し、「(社員)のみんなが私たちがやることは自分以外の誰かのために何かを考えることだったねと気づき始めている」と大塚氏が話した。

老舗企業であれ急成長するベンチャーであれ、本シンポジウムの議論から伝わったのは、本当にESGを達成するために、サステナビリティーの理念が企業文化に深く根付いていなければならないことだ。「大事なことはミッション達成に向けて、自分たちが取るべき組織はなんなのかというところだ」とメルカリの小泉氏が振り返った。今後ESGの考え方がより多くの日系企業に浸透していくためには、重要なポイントであろう。

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