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投資分野の変化に関する専門家の見解

May 29, 2021

Michiyo Morisawa
PRI SECRETARIAT JAPAN HEAD AND CDP JAPAN DIRECTOR

ESG(環境、社会、ガバナンス)は、すでに企業の本来の事業と切り離したものではなくなってきている。企業がESGの取り組みを進めるのは、社会的に、または道徳的に良しとされるからでも、何らかの基準や枠組みに従うことを求められているからでもない。ビジネス環境や市場のニーズ、消費者意識、投資の動向などの変化とともに、ESGを事業自体に、経営自体に取り込んでいくことに、ビジネス的な意義を見出せるようになったからだ。

このシンポジウムの2番目のセッションには、投資分野から3人の専門家が登壇し、投資家によるESG推進の取り組みや、ESGによって変化しつつある企業や投資の展望について議論が交わされた。

Hiroshi Ozeki
NISSAY ASSET MANAGEMENT, PRESIDENT AND CEO

ニッセイアセットマネジメント代表取締役社長の大関洋氏、カタリスト投資顧問株式会社取締役副社長COOの小野塚惠美氏、上智大学特任教授・理事の引間雅史氏が登壇し、モデレーターはPRI事務局ジャパンヘッド兼CDPジャパンディレクターの森澤充世氏が務めた。

ニッセイアセットマネジメントは、2006年にはPRI(責任投資原則)への署名を果たし、2008年には独自のESGファンドを創設した資産運用会社で、ESG投資の先駆者を自負している。カタリスト投資顧問株式会社は、顧客に代わって投資先企業とのエンゲージメントの深化を図り、ビジネス環境や社会の変化に合わせて投資先企業の変革を促す。「ESG、SDGsのコンセプトを投資に取り入れることで、企業の稼ぐ力と持続可能性のバランスがとれた社会になってほしい」と小野塚氏は言う。上智大学もPRIの署名機関であり、ESG投資やスチュワードシップ活動に積極的に取り組んでいる。引間氏は、教育機関として投資はミッション・ドリブンでなければならないとした上で、「地球課題解決へのコミットを資産運用に反映している」とした。

Emi Onozuka
JAPAN CATALYST, INC., EXECUTIVE VICE PRESIDENT, COO

また引間氏は、リスクとリターンの二次元的な捉え方ではなく、投資においては社会的リターンと投資リターンを両立させるために、インパクトを考慮する必要があると述べた。

小野塚氏も、財務のリターンの視点と環境へのリターンの視点の重要性に触れ、カタリスト投資顧問株式会社は、投資先企業の気候変動への取り組みが不十分な場合には、株主総会における議決権行使を通して意思表示をするとのプレスリリースを最近発表したことを明かした。また小野塚氏は、「気候変動対応は企業のガバナンスの問題である」と述べ、気候変動は一見するとESGの中ではE(環境)やS(社会)の範疇と捉えられがちだが、つまるところは事業環境や顧客の志向、政治の変化などに企業がどう対応しているかというところにつながるとした。

ニッセイアセットマネジメントは自社のESGファンドに独自のレーティングシステムを設けており、「ESGに関する取り組みを行っているかいないかだけではなく、そういった取り組みがビジネスモデルと一体になっているかどうか、企業価値の向上につながっているかどうかを評価している」と大関氏は言う。

しかし、気候変動に関して企業がどの程度努力しているかを評価するには、データの正確性と網羅性の問題や共通の基準を作る必要性がある。引間氏は、投資業界全体で気候変動に対応した投資を進めるにあたって、データの統一化や利用可能性の向上を推進する必要性を強調した。

Masafumi Hikima
Sophia University, Professor & Executive Director of Finance

大関氏もこれに同意し、「アルファベットスープ」と揶揄される情報開示基準の乱立の状況を打破するためには、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)のもとに基準の統一化を図る動きは歓迎すべきものであると述べた。

引間氏は、東京証券取引所の新市場区分として来年始動するプライム市場に指定される企業は海外の投資家の投資対象にもなるため、世界基準に沿う必要があり、気候関連情報についても高いレベルでの開示が求められるとした。

また引間氏は、コーポレートガバナンス・コードの改定案について、気候変動以外にも人権の尊重についての内容が盛り込まれる予定になっていることに触れ、ウイグル問題を例に挙げた上で、「人権問題は企業経営にも影響する問題になってきており、そこにあるリスクなのだという理解が広まってきた」と述べた。

小野塚氏は、最終受益者の間でもESGやインパクト投資に対する関心が高まりつつあり、「財務リターンと社会へのインパクトを同時に追求できるのであれば、と考える人が増えている」と述べた。特に30代、40代の女性にこの傾向が見られるという。

引間氏は、「高い意識を持ち、社会貢献やSDGsに関心のある学生は多い」としつつ、「ただし、それが投資や資産運用と結びつくという発想はない。これは、いまだに投資そのものについての見方が狭い日本の社会の縮図だ」と述べ、学生が声を上げて大学の資産運用に働きかけをするようになるには、ESG投資教育が重要であるとした。

小野塚氏も、企業の変革には社会の目、外からの圧力は必要だとし、自分のこととしてポジティブインパクトを生むための一歩を踏み出すことの重要性を強調した。

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