August 30, 2021

服から服を作るー新たな循環への挑戦。

ライター: 坂本愛, TRANSLATOR: ELEANOR GOLDSMITH

再生ポリエステルのリサイクルをわかりやすく可視化。加工の順番に、下から古着→ポリエステルモノマー→ポリエステル樹脂→ポリエステル繊維→再生生地が収められている。
撮影:鷲崎浩太郎

服作りに欠かせない素材の一つに繊維がある。いま、世界で年間に生産される繊維の約6割、重量にして約5,200万トンを占めるのが、石油から作られる合成繊維のポリエステルだ。耐久性や速乾性などに加えて、汎用性が高いのが特徴で、糸の形状を変えたり、他の素材を練り込むことで、天然繊維のような風合いを出したり、撥水やUVカットといった機能を持たせることが容易にできる。

Takayuki Nakamura, Jeplan‘s product marketing manager
撮影:鷲崎浩太郎

そんなポリエステルを活用した、画期的なリサイクルに、2016年から取り組んでいる企業が〈日本環境設計〉だ。一般に、再生ポリエステルというと、廃ペットボトルを原料にしてリサイクルする方法を思い浮かべるかもしれない。しかし同社では、それとは異なる独自のケミカルリサイクル(化学的再生法)〈BRING Technology〉を開発。使わなくなった服からポリエステル繊維だけを抽出し、分子レベルまで分解したうえで不純物を取り除いて精製し、繊維の元となる再生ポリエステル樹脂を作り出している。

同社のプロダクトマーケティング課課長である中村崇之氏は次のように話す。

ブランド名のBRINGは「持ってくる」という消費行動から命名。

「ペットボトルに熱を加えて溶かす従来の方法では完全に汚れや不純物を取り除けないため、リサイクルは1回限りです。しかし、分子レベルで精製できる当社の〈BRING Technology〉であれば、新品と同等の品質を持つポリエステルを再生でき、リサイクルを重ねることでおきる不純物の蓄積もないので、何度も繰り返し再資源化することが可能です。この技術を使えば、石油の使用量を減らせるのはもちろん、石油から新たにポリエステルを作るときに比べて、二酸化炭素の排出量を60%削減できるという結果も出ています」

世界中から注目を集める新技術の開発と同時に、同社が行っている活動に〈BRING〉がある。古着の回収から自社工場でのリサイクル、再生ポリエステル樹脂を原料とした洋服づくり、販売までを一貫して行う取り組みで、現在、〈無印良品〉や〈GU〉など、100を超えるブランドや企業がその趣旨に賛同し、回収作業などで協働。2009年、〈BRING〉の前身である〈FUKU-FUKUPROJECT〉として回収を始めて以来、3,000トン、Tシャツに換算すると1,500万枚の衣料品を回収してきたという(2019年12月時点)。

福岡県北九州市にある北九州響灘(ひびきなだ)工場。ここで再生ポリエステル樹脂が作られている。
写真提供:日本環境設計

「再生ポリエステル原料をアパレルブランドに提供するだけでなく、それを使った洋服の製造・販売までを自社で手がけるのは、“服から服を作る”というコンセプトを消費者にわかりやすく提示するため。自分たちが提供した古着がリサイクルされ、新たな商品となって目の前に現れることで、消費者の循環型社会に対する理解が深まると思うんです。そのうえで大切なのは、彼らが欲しいと思う魅力的な商品をつくること。“サスティナブルだから買う”ではなく、“気に入って買ったらサスティナブルだった”じゃないと、長続きはしませんからね」

回収された衣類のうち、まだ着られるものは寄付やリユースへ。使えないものだけ、素材やパーツごとに分別した後、それぞれに適したリサイクルが施される。
日本環境設計では、綿繊維のバイオエタノールへのリサイクルも行なう。
撮影:鷲崎浩太郎

コットンの肌触りとポリエステルの機能性を持つ《BRING Tシャツ》を2018年に販売して以来、いたずらにトレンドを追うことなく、機能性とデザイン性の両立を目指してきた〈BRING〉。提携している企業やブランドとコラボしたアイテムづくりに加えて、2020年には、自社のECサイトを使って、消費者に直販する「サーキュラーエコノミーD2C」をスタートさせた。取り扱いアイテムも、アウターからアンダーウェア、エコバッグまで増えている。

「昨年8点ほどだったアイテムも、今年は20ほどに増加。2021年秋には、全アイテムを取り扱う実店舗を恵比寿にオープンする予定です」

“あらゆるものが循環するサステナブルな社会”を目指して、“循環”にまつわるさまざまな事業を横断的に行う日本環境設計。“リサイクル”という概念に収まりきらない彼らの試みが実現した暁には、“リサイクル”に代わる新しい言葉が生まれているのだろうか?

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