April 28, 2022

【HOTEL WHY】「ゼロウェイスト」を体感する旅へ。

ライター:塚田有那

ゴミステーションと宿泊施設が連なる、<上勝町ゼロ・ウェイストセンター>の全貌。上空から見下ろすと「?」のかたちになっている。 | COURTESY: TRANSIT GENERAL OFFICE INC. / SATOSHI MATSUO

地域のゴミ回収センターが観光資源になる。そんな異例の試みに取り組むのが、徳島県の中部に位置する人口1500人ほどの四国一小さな町、上勝町だ。2003年に日本で初めて「ゼロ・ウェイスト宣言」を公表したこの町では、2020年までに焼却ゴミ、埋め立てゴミをゼロにすることを目標に掲げ、現在までさまざまな取り組みが行われてきた。

元々、山腹や谷間の斜面に民家が立ち並ぶ上勝町内は、車がすれ違うのも困難な狭い道がほとんどだった。そのためごみ収集車が運用できず、現在のゴミステーションの地区で家庭ゴミを燃やす「野焼き」が日常化していったという。1997年には焼却炉も建設されたが、焼却時に発生するダイオキシンが社会問題化したため3年で閉鎖。地域としてゴミとどう向き合うかが深刻に議論された結果、住民に生ゴミのコンポスト化(堆肥)を推奨し、それ以外のゴミは30種類以上に分別してリサイクルするようになったほか、地域内の中古品を集めリユースを促進するなどの文化も育まれてきた。

(1枚目)地域住民から中古品を集め、それを無料で提供、リユースを促進する「くるくるショップ」。
(2枚目)ホテルの窓枠はすべて町内から集めた古い窓の建具を再利用している。ウッドデッキからは美しい山々の景観が楽しめる。 | COURTESY: TRANSIT GENERAL OFFICE INC. / SATOSHI MATSUO

これらの地域住民と町役場の長年の努力が功を奏し、現在ではゴミのリサイクル率8割を達成。県外から多くの自治体や企業、大学などが視察に訪れるようになったほか、環境への取り組みに関心をもった若い移住者も増加してきたという。

こうした地域の挑戦を国内外に広めるべく、2020年5月から運営を開始したのが「上勝町ゼロ・ウェイストセンター」と併設する宿泊体験型施設「HOTEL WHY」だ。上空から見下ろすと「?」のかたちをしたこの複合施設は、湾曲した建物部分にゴミの分別所や町民から不用品を集めたリユースショップ、地域住民や観光客が集う交流ホールなどが連なる。そこから少し離れたところに位置する円形型の建物が、観光客もゴミゼロを体感できる宿泊施設だ。

宿泊客は、チェックイン時に必要な分だけの石鹸を自らカットする。これもすべて「ゼロ・ウェイスト」を体験してもらう施策のひとつ。 | COURTESY: TRANSIT GENERAL OFFICE INC. / SATOSHI MATSUO

施設を設計した建築家の中村拓志は、地域住民の協力のもと町内の古材や廃材を集め、住民参加型の建築を完成させた。特にユニークなのは、町内から古くなった窓の建具を540枚ほど集めてつくられたホテルの窓枠だ。形はどれも不揃いだが、それぞれの持つ風合いをそのまま建築に活かしたという。

 「ゴミを見つめることは、普段の生活を見直すことにつながると思います」。自身も上勝町への移住者であり、施設のChief Environmental Officerを務める大塚桃奈氏はそう語る。「ホテルのお客様には、さまざまなゴミゼロの体験を提供しています。例えば、宿泊時のアメニティは最小限に抑え、チェックイン時には必要な分だけの石鹸をカットしてもらったり、食事の際に出た生ゴミはすべてコンポストに入れてもらったり。ほかにも、上勝町のゴミゼロ運動の取り組みを紹介するツアーなども行っています」。

最初の「ゼロ・ウェイスト宣言」から一区切りを迎えた2020年12月には、2030年を目標とした新たな宣言が上勝町から発表された。それは「ゴミや環境問題について学べる仕組みをつくり、新しい時代のリーダーを輩出する」というもの。ぜひ多くの人に上勝の自然とゴミゼロの取り組みを体感して欲しい。

HOTEL WHY

徳島県の<上勝町ゼロ・ウェイストセンター>に隣接する宿泊施設。徳島阿波おどり空港から車で約1時間。
●徳島県勝浦郡上勝町大字福原字下日浦7-2
Tel: 080-2989-1533(受付時間9:00〜17:00)
https://why-kamikatsu.jp/

COURTESY: TRANSIT GENERAL OFFICE INC. / SATOSHI MATSUO

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