August 26, 2022
Vol15: FROM THE EDITOR
私は編集の仕事とは別に、慶應義塾大学SFC環境情報学部の特別招聘教授として、大学で建築に関わる授業を担当しています。
今回この新聞で特集をする建築家の坂 茂さんは、2019年より同大学の教授を務めていらっしゃって、研究室も持っています。
そういう理由で、大学での建築関係の研究室に所属する学生の研究発表の際など、ごく稀に、坂さんとご一緒することがあります。
個人的にとても興味深く思い観察しているのは、坂さんの建築に対するスタンスです。
大学で見る坂さんは、普段私がメディアに関わる人間として接する「坂 茂」という、世界的に活躍する建築家の顔ではありません。
「教育者」として学生に対し、時に厳しく時に思いやりともとれる愛にあふれた一面を垣間見ることができます。
同大学で、坂研究室が取り組むテーマのひとつが、建築を通じて行う被災者・避難民に対する支援です。
紙管を使った避難所向けの間仕切りの研究や、合板を使った災害用仮設住宅の考案、巨大地震に備えた日本の首都機能移転に対する調査など。
世界中の被災地での実体験・経験を踏まえた坂さんの大学での研究活動は、学生たちの共感と行動を生み、
「緊急時に建築が何をできるのか?」あるいは、「建築に携わる者が、何をできるのか?」を、周囲を巻き込み継続し追求しています。
今回の特集では、なぜ坂 茂は戦争を含む、災害支援に積極的に取り組むのかを、彼のインタビューを交え、探ってみたいと思います。