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ライバルは最強のパートナー、業界を挙げた環境問題対策を推進

June 28, 2021

花王株式会社
代表取締役 社長執行役員 長谷部佳宏(はせべよしひろ)
研究開発部門統括、先端技術戦略室統括、コンプライアンス担当などを歴任、2021年1月から現職。 | YUICO TAIYA FOR PHOTOMATE

YUICO TAIYA FOR PHOTOMATE

日用品・化粧品大手の花王は2020年末に中期経営計画を発表し、ESG(環境・社会・ガバナンス)活動を経営の軸に据え、持続可能社会への貢献と事業の成長を両立させることを打ち出した。初年度にあたる今年1月に社長に就任した長谷部佳宏氏は「『未来の命を守る』企業として、これからの社会に欠かすことのできない存在」を目指すと宣言。「本当の意味でESGという言葉を体現した会社にしていくことが、社長としていま一番やらなければいけないことだ」と覚悟を語る。

1887年創業の花王は、長い歴史の中で商品開発を通じて新しい生活様式を提案してきた。その中には現在のESG活動を先取りした商品も数多くある。長谷部氏が「花王が(企業として)最も前進した」と誇るのが、1987年に発売した世界初のコンパクト粉末洗剤「アタック」だ。1回あたりの洗剤の量がそれまでの4分の1「スプーン1杯」となり、1箱あれば長く使えるという便利さを実現。容器(箱)の大きさもそれまでの4分の1以下という小型化に成功し、「重くてかさばる」という洗剤のイメージを一新。洗濯のストレスから消費者を解放した。「洗濯が身近になり、大きくは日本の文化を変えていった」という。

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アタック発売を機にコンパクト粉末洗剤はアメリカや欧州でも普及。商品の小型・軽量化によって輸送が簡便化され、輸送にともなう二酸化炭素(CO2)排出量の削減に寄与した面は大きい。

その後も商品改良を重ね、アタックは現在まで日本の衣料用洗剤市場で30年以上トップシェアを保っている。2009年に発売された超濃縮液体洗剤「アタックNeo(ネオ)」は、濃縮化により本体ボトルを小型化でき、プラスチック使用量を減らした。さらに、新たに開発した洗浄成分を用いることで、「すすぎ1回」を実現。水の使用量削減と、結果的にCO2排出量の大幅削減を可能にした。消費者には水道料の節約が好感されたほか、「誰でも手軽にできるエコ(環境保全)」を訴求して共感を得た。電気メーカーもこの取り組みを支持し、いまではほぼすべての洗濯機に「すすぎ1回コース」が設けられている。

アタックネオに企画段階から関わってきた長谷部氏は、環境問題に強い危機感を抱いていた。「我々自身が未来を設計していく必要がある。グローバルジャイアントではない、花王だからこそできる取り組みを他社と一緒にやる、もしくは率先して手本になることが我々の役目ではないか」と試行錯誤を重ねたことが、画期的商品の誕生につながった。

プラスチック包装容器を多く使う消費財メーカーだからこそ、プラスチック循環社会の実現にも注力する。たとえば洗剤では、4月に発売した「アタック ZERO(ゼロ)」で100%再生ポリエチレンテレフタレート(PET)ボトルを採用。再生プラスチック活用を本格化させ、日本国内で使用量の多い日用品のPET素材ボトルを25年までにすべて100%再生PETに切り替える。

競合メーカーとも手を組む。今年5月、洗剤やシャンプーなど日用品のプラスチック容器の分別回収とリサイクルでユニリーバ・ジャパンとの連携を発表。詰め替え容器については、20年からライオンと取り組みを始めている。「良い商品を作っているライバルは、最強のパートナーでもある」と長谷部氏はいう。「モノづくり企業にとってリサイクルや環境問題対策は不可欠だが、1社でできることではない。容器の中身については切磋琢磨して競い合うが、使用後の容器に関してはラグビーでいうノーサイド。業界をあげて一緒に取り組もうという考え方が広がりつつある」と分析する。

Hasebe with Japan Times publisher Minako Suematsu. Before becoming CEO, he led Kao Corp.’s research and development and strategic innovative technology as vice president. | YUICO TAIYA FOR PHOTOMATE

汚れや着色があって再利用が難しいPET素材を、アスファルト改質剤として再生するプロジェクトも進めている。改質剤をごく少量加えることで道路に使われるアスファルト舗装の耐久性が向上し、10年ごとに改修が必要なアスファルト舗装においては50年もたせることができるという。道路の粉塵の発生と、それが海洋に及ぼす影響を抑えるという利点もある。駐車場の舗装や自治体公道の改修に使用された実績があるが、「(この技術を)普及させるため、多くのパートナーと協力し、技術共有の仕組みを環境省に提案したりしている」という。

技術畑が長い長谷部氏がいま一番注目するのは「RNAモニタリング」と呼ぶ技術だ。あぶらとりフィルムで拭き取った皮脂の中にRNAが含まれることを、同社の研究者が発見。これを分析することで、その瞬間の個人の健康や免疫機能の状態を把握したり、パーキンソン病や糖尿病、感染症など病気の予兆を検出したりといったことが可能になるという。「高齢者の健康寿命を延ばすためには1年に一度の健康診断では足りないが、この技術があれば低コストで簡単に健康状態を調べることができる。私が社長の間にこの技術が一般の人たちに日常的に使えるようにしたい」と話す。

花王の技術ではないが、日本の冷凍食品やフェイクミートの技術にも期待する。食を楽しむと同時に食品ロスを減らすという点で「冷凍食品を短時間で復元させる日本の技術と食文化が世界の環境やゴミ問題を変えるきっかけになれば」という。ノーサイドから業界を超えたオールジャパンの取り組みへ、日本初の新たな生活様式の可能性はますます広がっている。

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