October 11, 2022
【セガサミー】「共感」こそサステナビリティの源泉。社員が誇れる会社に
セガサミーグループは5月、2030年に向けた「サステナビリティビジョン」を策定し、持続的な企業価値向上に向けて取り組むべき重要課題と活動計画を表明した。キーワードは「共感」だ。
製品やサービスが大ヒットしても、企業理念や商慣行が社会から納得や同意を得られない会社は、これからは存続が難しい。セガサミーホールディングスの里見治紀代表取締役社長グループCEOは、長期的成長のためには社内外から共感を得ることと、顧客を含むステークホルダーと「感動」を共有することが欠かせないという。
セガサミーは、「エンタテインメントコンテンツ」「遊技機」「リゾート」の3事業を中心に展開する総合エンタメ企業グループだ。エンタメビジネスは生活を豊かにする反面、のめりこみや依存症など社会的に「負」の側面も指摘されるが、里見氏はそれもあえて隠さない。業界団体や大学と連携して対応や予防に努めるとともに、「それ以上の『正』や喜び、刺激といった感動体験を届けることにグループの存在意義はある」と、社員へのメッセージは明確だ。
サステナビリティビジョンでは、「人」「製品/サービス」「環境」「依存症」「ガバナンス」を重要課題として掲げた。そのうち人については雇用や人材登用面でダイバーシティを推進し、企業内大学の拡充など社内での人材育成制度や職場環境の整備への投資も増やす。また、グループとして人財の活躍機会を最大化する仕組みを構築するとともに、将来は社員の「リスキリング」も支援したいという。
環境面ではグループ本社でカーボンニュートラルを達成し、今後はグループ各社で取り組むGHG(温室効果ガス)排出削減をサプライヤーとともに進める意向だ。ゴミ削減のための商品パッケージの設計や梱包材の見直しにも着手した。
改革は社内外に摩擦を生み、事業にマイナスの影響を与えることもある。改革を進めるかどうかの判断軸は、第一に自分の中での「正義」。そして「社会の共感を得られるかどうか」(里見氏)だ。
5年前、社長就任後初の株主総会で「社員が自慢できる、誇れる会社にする」と宣言した。ESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGs(社会持続可能な開発目標)など掛け声は変わっても、「ファーストプライオリティは社員」という本質は変わらない。そのための改革にはこれからも強い信念で取り組む覚悟だ。
Naonori Kimura
Industrial Growth platform Inc. (IGPI) Partner
「共感されない会社は生き残れない」。里見CEOは信念を込めて力強く発信しています。
顧客第一や顧客に寄り添うということを謳う企業は多いですが、当社ではそれが経営の隅々にまで浸透しています。人の喜怒哀楽を捉え、負の側面にもしっかりと向き合う経営は、人間の本質に語りかけるからこそリアルな共感を得らえるのだと思います。また、社員の共感も強く意識し、「良い社員がいなければ良い製品・サービスは生み出せない」という思想が、経営の根幹に流れています。「社員が自慢できる会社であること」を柱に共感経営を強力に推進するCEOの目には、サステナブルな会社の未来の姿がはっきりと映っています。