December 16, 2022

<オープンハウスグループ>が群馬県の水上温泉街で取り組む廃墟再生。

ライター:和泉俊史

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東京大学・都市デザイン研究室による水上温泉街への提案「廃墟からヒロバへ」のイメージイラスト。
COURTESY:OPEN HOUSE GROUP

<オープンハウスグループ>は、都心部での戸建て住宅の販売を中心に、マンション開発、アメリカ不動産販売事業、金融事業、太陽光に関するビジネスなどを多岐に展開する日本企業だ。2022年度の売上高は9526億円。この企業が今取り組むのが「地域共創」という、日本の地方都市における地域再生の試みだ。創業時の事業である“住まいを提供する会社”として、日本の地方都市が現在直面している人口減少と高齢化に対する問題解決を目指している。舞台は、<オープンハウスグループ>の創業者で代表取締役を務める、荒井正昭社長の出身地である群馬県。太田市や桐生市など群馬県内の複数の都市で「地域共創」プロジェクトが進行しているが、なかでも注目したいのが、水上温泉街での廃墟再生の取り組みだ。

COURTESY: OPEN HOUSE GROUP

水上温泉は、第二次大戦後の高度成長期に鉄道や高速道路が整備され、首都圏からも比較的近い温泉地として多くの観光客で賑わった。1970~1980年代には団体旅行客向けの施設が増え、ホテルは大型化・高層化したが、1990年代初頭のバブル経済崩壊や人々の個人旅行志向の高まりなどニーズの変化から客足が遠のき、廃業する宿泊施設が続出した。今もその建物が廃墟として残り、街にとって大きな問題となっている。

<オープンハウスグループ>は2021年春、群馬銀行を通じ、みなかみ町から状況をヒアリングし検討を開始。2021年9月には、みなかみ町・群馬銀行・国立大学法人東京大学大学院工学系研究科と「産官学金包括連携協定」を締結。「水上温泉街再生プロジェクト」がスタートした。その一環として行われているのが、ホテル旧・一葉亭の廃墟を再生する計画だ。旧・一葉亭は元々1948年に別ホテルとして開業したがそれが2016年に閉業、一葉亭として営業を再開するも2019年に閉業、建物はそのまま放置されていた。建物の延べ床面積は約18,000㎡(5,400坪)。ここに本館、新館、遊技場、エネルギーセンターという4つの建物があったが、そのうち遊技場は解体(2022年3月完了)、新館は減築し(2022年11月完了)、2023年から本館とエネルギーセンターのリノベーションを行う予定だ。この解体費用はみなかみ町が観光庁の補助制度を活用し実施した。

この解体、減築と並行して行ってきたのが、東京大学・都市デザイン研究室による水上温泉街のリサーチと、産官学金4者による社会実験イベントの実施だ。本館から徒歩5分のところにある旧・一葉亭従業員寮だった廃墟でマルシェや納涼イベントを行い、地元住民を巻き込んでの廃墟を活用する取り組みを行った。

2022年11月、<オープンハウスグループ>から企業版ふるさと納税の寄付目録が、みなかみ町長(中央)へ渡された。
COURTESY:OPEN HOUSE GROUP

これらを踏まえ東京大学・都市デザイン研究室が提案したのが「廃墟からヒロバへ」という、旧・一葉亭の再生計画である。日本で繰り返されてきた単なる建物のスクラップ&ビルドではなく、既存の躯体は可能な限り活かし減築やリノベーションを行う。廃墟の解体・減築によって生まれた空地は広場にし、温泉街を流れる川とまちなかをつなぐ場としたり、観光客も地元住民も皆が自然と集う場にするというものだ。

2022年11月29日、<オープンハウスグループ>の事業会社である<オープンハウス・ディブロップメント>により、みなかみ町へ地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)を活用した寄付が行われた。寄付額は1億7000万円。この寄付は「廃墟からヒロバへ」の提案を含めた「水上温泉街再生プロジェクト」に使われる予定だ。

<オープンハウスグループ>は温泉街での廃墟再生と同時に、経営難に陥ったスキー場も『群馬みなかみほうだいぎスキー場』として昨年2021年から再生に着手。世界有数のパウダースノーと若者向けの新企画を武器に、旅行客の呼び込みも目指す。これらのみなかみ町での取り組みが、今後どのような形で実現していくのか、また町にどのような効果を生み出すのか、注目していきたい。

旧・一葉亭従業員寮の廃墟で、社会実験イベントの一環として行われた「ミニ廃墟再生マルシェ」の様子。
COURTESY:OPEN HOUSE GROUP

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