July 28, 2023
フランス人美術史家、ソフィ・リチャード氏がおすすめする、5つの日本の美術館。
ゆっくりと芸術に浸る、そんな心躍るアートな週末を過ごしてみたい。そんな旅の参考に、日本に点在する数多くの素晴らしい美術館の中から、美術史家のソフィ・リチャード氏が特別に5つの美術館を読者のために選んでくれた。
神奈川県の小田原に位置する<江之浦測候所>は、相模湾を一望できる美しい場所に設立され、日本の伝統的な建築技術と美意識が反映された場所だ。<日本民藝館>では、民衆生活に使われた美しい工芸品が展示される。<犬島精錬所美術館>は産業遺産を活かしたアートサイトで、空調は自然エネルギーを利用している。<平等院ミュージアム鳳翔館>は平等院の敷地内にあり、国宝や文
化財が先進的な収蔵環境の下に展示されている。最後に、<安田侃彫刻美術館>は、廃校となった小学校を再利用して設立された美術館だ。ここでは世界的な彫刻家・安田侃の作品を美しい風景の中で鑑賞することができる。
これらの美術館には、まだ出会ったことのない素晴らしいアート体験があなたを待っているはずだ。ぜひ日本の美術館を巡る旅に出かけてみたい。
小田原文化財団 江之浦測候所
(神奈川・小田原)
リチャード氏のコメント:
「杉本博司の構想から生まれたこの場所は、アーティストの情熱と創造的な野心を具現化した特異で魅力的なスポットです。東京からはそれほど遠くなく、海辺の理想的な場所には、彼の海景写真が展示されたギャラリー、彼がデザインした彫刻や庭園、お茶室があります。また、彼が慎重に収集した化石、古代の石、伝統的な建築要素のコレクションが保管された洞窟や、透明なガラスで作られた息をのむほど美しい能舞台など、見どころが数多くあります」。
日本民藝館
(東京・目黒)
リチャード氏のコメント:
「柳宗悦によって設計され、1936年に設立された<日本民藝館>は、その風情豊かな魅力に驚かされます。日本の民芸運動の重要性や、柳宗悦が見出した“無名の職人たち”の技術や創造性の重要性を、館内の膨大なコレクションを通じて深く理解することができます。美術館内では木材が広く使用され、装飾を最小限に抑えた美しい展示が行われています。学芸員の方々は年に四回、展示をアレンジしてくれるので、私はいつも民藝館を訪れることを楽しみにしています」。
犬島精錬所美術館
(岡山・犬島)
リチャード氏のコメント:
「ベネッセアートサイト直島の一部を構成する<犬島精錬所美術館>は、犬島に位置し、建築、アート、環境、産業遺産が見事に融合しています。この美術館は、廃墟となった銅製錬所を独創的に再構築し、環境への影響を最小限に抑えた空間に柳幸典の作品を展示しています。また、自然光のみで照らされるギャラリーには、三島由紀夫の邸宅跡から解体された部材が使用されており、印象的なアートインスタレーションを作り出しています」
平等院ミュージアム鳳翔館
(京都・宇治)
リチャード氏のコメント:
「この美術館は、11世紀に建立された平等院の敷地内にあり、世界遺産・平等院の景観を邪魔しないよう、丘の上に建てられたスタイリッシュな近代建築である。寺院の貴重な文化財を保存し、一般公開するために設立されたこの美術館には、数多くの国宝が収蔵されている。また、美術館の素晴らしい展示と繊細な照明のおかげで、貴重な仏像の彫刻や他の作品を間近で鑑賞できるようになった」。
安田侃彫刻美術館アルテピアッツァ美唄
(北海道・美唄)
リチャード氏のコメント:
「イタリアと日本を往来する彫刻家、安田侃の作品が展示されている北海道の魅惑的な野外彫刻美術館。美唄に生まれ、今も美唄を愛する彼は、市の活性化のために美術館をつくった。7ヘクタールの敷地には、安田氏の作品が40点以上展示されている。イタリア・カッラーラ産の大理石やブロンズで作られた美しい抽象的なフォルムは、屋内外を問わず、美しい山々の風景の中に展示されている」。