June 24, 2022
Destination Restaurants2022のリスト発表
「Destination Restaurants」は、ジャパンタイムズが主催する日本発信のレストランセレクション。“日本人が選ぶ、世界の人々のための、日本のレストランリスト”として2021年に発足。第2回目となる「Destination Restaurants 2022」でも前回同様、辻芳樹、本田直之、浜田岳文の3氏が選考にあたり、日本各地に点在する魅力的な10店を選出した。選考対象となるのは「東京23区と政令都市を除く」場所にある、あらゆるジャンルのレストラン。東京は世界一、ミシュランガイドの星付きレストランの数が多い都市と言われ、東京を筆頭に、日本の大都市には優れた店がたくさんある。だが、「Destination Restaurants」では「日本の風土の実像は都市よりも地方にある」と考えること、また、「地方で埋もれがちな才能の発掘を目指す」こと、「既存のセレクションとの差別化を図る」ことから、特に日本の地方にあるレストランに限定して選んでいる。
「地方のレストランにインバウンドの集客をして、地方経済が回るきっかけになれば」(浜田岳文)と言えば、「地方のシェフが作る料理には、郷土料理という歴史的背景がある。そこには人間が生きるための知恵が詰まっている。そういうことを海外の方にはもちろん、日本の方にも体験してもらいたい」(本田直之)。「ガストロノミーを快楽ではなく、知的な学びとして捉えることで、これまでのガイドとは違う角度から日本の食文化を発信したい」(辻芳樹)とそれぞれ語る。つまり、今年選ばれたのは食を通じて、その地域を、そして日本をより深く知ることができる10店なのである。
Destination Restaurantsとは?
日本で最も歴史のある英字新聞ジャパンタイムズが、日本各地に点在する、ここを訪れるためだけでも来日する価値のあるレストランを、毎年発表するレストランガイド。
本物を知り尽くした日本人からなるセレクション・コミッティーにより、毎年10店が選ばれる。2021年よりスタート。選考対象となるのは、東京23区と政令都市を除く場所にある、あらゆるジャンルのレストラン。
Destination Restaurants 2022
A: 余市 SAGRA
北海道・余市でも特にワイナリーが多い登町にあるイタリアン・オーベルジュ。2017年に札幌から移転し、より地方色を打ち出せるようになった。地元の海の幸・山の幸、近隣の畑からの農産物に特産のワインを合わせる。漁師が獲った魚を添えた和の朝ごはんも人気だ。
B: 出羽屋
元は90年以上前に山岳信仰で有名な出羽三山を訪れる行者の宿として創業した、全国でも珍しい山菜料理の宿。「地元のものを地元の人が調理したものが一番おいしい」という先代の信念のもと、西川町内や月山で収穫された天然物を中心に山形産の食材を使用する。
C: ドン ブラボー
東京都調布市の国領にあるコンテンポラリーなイタリアン。イタリアのファインダイニング数軒で修業した平雅一シェフによる、薪窯で焼くピッツァなど、カジュアルな要素や和のエッセンスも取り入れつつ、ガストロノミーな境地を切り拓くスタイルが新鮮だ。
D: 北じま
神奈川県鎌倉市にある古民家を改装した日本料理店。店主、北嶋靖憲が京都の名店『和久傳』で学んだ京料理の技法をベースに、相模湾で獲れた魚介や無農薬・無肥料で栽培された野菜など、地元の食材を中心に用い、自らの味を表現する。
E: 里山十帖
冬は雪深い新潟県南魚沼市で古民家を利用した日本料理の宿。料理に定評があるのはもちろん、オーガニック魚沼産コシヒカリを育てる体験や、料理人とのコラボレーションで地産地消の食文化に一石を投じるなど、ライフスタイルを提案するスタイルが注目されている。
F: ラトリエ・ドゥ・ノト
石川県能登半島で生まれ育った池畑隼也が大阪やフランスなどでの修業を経て、開いたフレンチ・レストラン。輪島塗の塗師屋を改装した店舗で輪島塗や珠洲焼など地元の工芸品の器を用い、冬はカニ、夏は岩牡蠣など海の幸を楽しみに訪れるゲストも多い。
G: 茶懐石 温石
店がある静岡県焼津市はカツオやマグロなども揚がる港町。父から受け継いだ店を、現在は2代目である杉山乃互が営む。全国的に有名な「サスエ前田魚店」の鮮魚を使ったコースは茶懐石を掲げつつ、形式ばった部分は除き、その精神を伝えるスタイルとなっている。
H: ヴィラ アイーダ
和歌山県岩出市の住宅地でオーナーシェフ・小林寛司が自家農園で育てた野菜やハーブ、地元の生産者による魚、ジビエ、果物からつくるコースは、イタリアンをベースにした“和歌山風味”の料理。市場には決して出回らないサイズの収穫物の魅力に目を向けた功績は大きい。
I: AKAI
広島県の名所、厳島神社に向かう宮島口にある。築80年の古民家を利用したイノベーティブなフレンチ・レストラン。できたての料理を出すことにこだわってつくったカウンター8席のみ。地元で生まれ育った赤井顕治シェフは、その日、食材から得るインスピレーションで料理をつくるため、定番はない。
J: ヴィッラ デル ニード
長崎県雲仙市国見町、島原半島の畑に囲まれた一軒家のイタリアン・レストラン。当地で生まれ育った吉田貴文シェフがイタリアでの修業後、オープンした。この地で育つ食材がもつ力のピークを見極め、テロワールを生かしてつくる料理にワインや地酒をペアリングする。