August 25, 2023

地方でレストランを営む意義とは?これから取り組むべき課題について語る。

トークイベントは、「Destination restaurants2023」授賞式の後行われ、会場のシェフからも様々な意見や現状が語られた。

ジャパンタイムズが主催する「Destination Restaurants 2023」の授賞式が6月21日、東京都内で行われた。選出基準は「東京23区と政令都市を除く」場所にあり、食を通じて街おこしの起点となるような店であること。3回目を迎える今年は、特にその名にふさわしい1店「The Destination Restaurant of the year 2023」に選ばれた福島県いわき市の『ハギ』を含め、全10店のシェフ、及び、過去2回の受賞シェフたちが来場。会の締めくくりに行われたアワードの審査員、辻芳樹、本田直之、浜田岳文の三氏とシェフを交えたトークイベントでは、日本の地方におけるガストロノミーなレストランを取り巻く現状について活発に意見が交わされた。

「高級レストランの利用者が多い都会と異なり、地方では千円以下のランチ、五千円以下のディナーコースから始めて、徐々に認めてもらいながら値段を上げて、数年かけてようやくガストロノミーなスタイルに方向転換できるようになる店が多い。技術と共にオリジナリティを突き詰めないと、遠方から足を運んでもらえない難しさがある」と本田氏。浜田氏は地方で店をやるクリエイティブな面での利点を語る。「東京のような都会では世界中から食材が集まってくるため、かえって特色を出しにくい。その点、地方では土地ならではの食材をアピールしやすく、生産者との関係性などからストーリーを作りやすい」。両氏が語ったのは、都会と地方、それぞれでの一般的な傾向だが、当然ながらレストランごとに成功までの道のりや地元の食材や生産者との向き合い方は異なる。

会場のシェフからも発言があった。ゲストからの要望に迎合するのではなく、地元では受け入れられていなかったジビエ料理をメニューに載せ続けたという、山形県『レストラン パ・マル』村山優輔。日本の最南端であるという立地から、独自の地元食材や食文化をもつ沖縄県で店を開きながらも、移転当初は自分の目に適う食材が少なく、地方色を出すのに苦労したという『シス』小杉浩之。栃木県『オトワレストラン』音羽創からは、「そもそも、地元産だからいいのか、という問題がある。生産量が多いことと、質的に素晴らしい食材があるかどうかは別の話。ただ、私たち、食に関わる人間としては生産者と協力して、良いものを作っていかないといけない」という意見が出された。氏はまた、料理はもちろんのこと、サービスや空間のクオリティ向上の必要性についても訴えた。

左/浜田岳文(株式会社アクセス・オール・エリア代表取締役)。中央/辻芳樹(辻調理師専門学校校長)。右/本田直之(レバレッジコンサルティング株式会社代表取締役)。トークイベントは辻氏が司会進行役を務め、審査委員3名だけなく、会場にいる「Destination Restaurants 2023」受賞シェフも交えて行われた。
PHOTOS: YOSHIAKI TSUTSUI

となれば、それを支えるスタッフの確保、育成に関しても自ずと問題となる。少子高齢化に伴い全体的な労働人口が年々減っているうえに安定性がなく、体力を必要とする飲食店ではことさら従業員の確保が難しい。まして、高度な知識と技術が求められるガストロノミーなレストランでは、なおさらだ。また、日本のレストラン・シーンではまだまだ活躍する女性が少ないため、辻氏からは女性をもっと雇用したり活躍の場を増やすべきという提言もなされた。

改善すべき点は山積している。だが、わずか数年でも魅力あるレストランは地方で増加し、注目度も高まっている。ジャパンタイムズは今後も「Destination Restaurants」を通して、そんな地方のレストラン、引いては地域そのものの活性化を応援していきたい。

Subscribe to our newsletter

You can unsubscribe at any time.

PREMIUM MEMBERSHIPS

1-month plan or Annual plan 20% off!

Premium membership allows members to Advance registration for seminars and events.
And Unlimited access to Japanese versions of articles.

CHOOSE YOUR PLAN

Subscribe to our newsletter