December 22, 2023

ウガンダ特使にとっての「花」と「伝統文化」について。

ライター:ケリー・フルカワ

東京・乃木坂にあるウガンダ大使館の執務室にて。トーファス・カーフア駐日ウガンダ大使。

ウガンダ共和国のトーファス・カーフア駐日大使は、彼女が小学校の3年生の時、スポーツやゲームではなく、学校の花壇の維持をチームごとに競い合ったことがある。生徒たちには何も植えられていない区画が学校から与えられ、2 年間かけてそこを見事な花壇に変えなければならなかった。生徒たちは自分たちの庭を最高のものにするために、近所を回り、目に留まった花の種などを集めた。賞を獲得するために、授業の合間にも、水やり、草むしり、剪定など、熱心に花の手入れをした。

そんな経験を持つ彼女は1 年半前に駐日大使に任命され来日した際、日本独自のフラワーアレンジメントである“生け花”に出会い、花を愛する心が再びよみがえった。日本各地の公園や庭園に咲く花々を見ると、子供の頃に数輪の花を見つけた時に沸き起こった、あの安らぎを感じた気持ちを思い出し、今では珍しくなった学校での庭園コンテストを、将来ウガンダで復活させることを誓うようになった。

東京・乃木坂にある大使館を訪ねると、「花は実にいいですよ。興味のあることや魅力的なものに接することは、ストレス発散にもなりますし、物事を前向きに考えられるようにもなります」とカーフア大使は言った。花に癒されたという彼女は日本で生け花を学んでいるが、いつか、ウガンダでも生け花教室を立ち上げたいと考えている。

乃木坂の大使館には紅茶やコーヒーなどのウガンダの特産品が展示されている。
PHOTOS: YOSHIAKI TSUTSUI

“ゴメス”はウガンダの女性の伝統的な衣装。床まで届く長い裾と明るい色彩、そして角ばった肩のデザインが特徴だ。
PHOTOS: YOSHIAKI TSUTSUI

カーフア大使にとって、日本から得た最大の贈り物は、日本の伝統文化を体験できたこと、そして様々な外国文化の影響を受けながらも、生け花など伝統的なものを守り続けている日本の力を目の当たりにする機会を得たことだ。

大使は、日本の茶道とウガンダの伝統的な新生児の命名式とに共通点があることに驚いたという。ウガンダでは新生児の命名式の際、調理した野菜や雑穀と一緒にお茶が出されるのだそうだ。残念なことに今日、伝統的な命名の儀式はあまり一般的ではなくなってきている、と彼女は言う。 また、彼女は公衆浴場でお湯につかる際の日本人のマナーや習慣、温泉の効能について広く一般の日本人が心得ていることに興味を持ったという。ウガンダにも温泉はあるが、「ウガンダの人たちに温泉の効能などについての科学的見識はありません。そこで私は、日本がどのように温泉文化を発展させてきたかを探り、その価値を私たちも得られるよう、その方法を見つけようとしています」と語る。

そもそも、ウガンダとはどういう国かと言えば、東アフリカに位置し、5 つの国と国境を接する内陸国である。アフリカ最大の湖であるビクトリア湖に面していて、4,500万人の人口の半数以上が18歳未満という若さ溢れる国である。また、“アフリカの真珠”とも呼ばれるこの国には多様な野生動物が生息している。そんなこの国で最も広く食されているのは、マトケ (調理用バナナ)を使った料理だ。さらに、ロレックスと呼ばれるフラットブレッドに卵、野菜をラップしたカジュアルフードも人気だがある。

ウガンダから遠く離れた日本に暮らすカーフア大使は、日本の食文化に寛容的だ。日本の熟したバナナはウガンダで食べているものほど甘くないかもしれないし、調理用バナナを日本で入手するのは難しいという実情もある。そんなこともあり、彼女は寿司に慣れ、日本のケーキの繊細な甘さを好み、日本の牧場見学までして北海道産牛肉が好きになり、外食となれば必ず焼き肉を選ぶようになった。

彼女が大切にしている日本製品。群馬県を訪問した際にいただいたブレスレットと、福島県を訪問した際にいただいたコンパクト。

福島でお土産にいただいた会津本郷焼のペアカップ。

そんな日本の食べ物の中で彼女が最も興味を持っているのは、日本の主食であるコメである。実はウガンダで栽培されている品種や方法は、日本人によって導入されたという経緯がある。「特に低地や湿地帯では日本の水田技術を活用しています。 私たちは丘の上の高地も開墾しましたが、その際も日本の水田で稲作をつくる技術を導入しました」。

2022年7月に来日して以来、カーフア大使は日本の多くの場所を訪れ、贈り物を受け取ってきた。 彼女は群馬の温泉と北海道での農業視察が好きだというが、その2か所とは別に彼女が何度か訪れている場所が福島である。彼女が見せてくれた宝物は、福島でいただいたブレスレットと会津本郷のカップだった。大使は、優れた職人技とパッケージングが日本製品にはあるという。「日本の製品の特徴は高品質なことです。日本製品というだけで、品質が保証されたと感じます」彼女は言う。

大使は任期中、日本のさらに多くの場所を旅行したいと考えている。今、特別に注目しているのは沖縄だという。彼女は、日本中を旅し、メイド・イン・ジャパンの物をもっと発見したいと熱望している。そして、日本の美しい景色に驚いたり、橋や高速道路、電車のネットワークといった日本のインフラや治安の良さを観察したいと考えている。彼女は日本の安全性や、ウガンダのインフラ開発における日本との協力関係に大きな可能性を感じているからだ。

多くの野生動物が住むことで知られ、“アフリカの真珠”と呼ばれるウガンダ。大使館内には野生動物の置物が飾られていた。

ウガンダ大使館に展示されているウガンダの手工芸品。

最後に、彼女の主な仕事のひとつについて語ろう。それは、ウガンダのコーヒーをもっと日本に広めるということだ。コーヒー豆はウガンダの最大の輸出作物であるにもかかわらず、ロブスタ種とアラビカ種の豆は、そう多く日本市場に出回っていないからだ。

「ウガンダ産のコーヒーは、我が国の主要産品なので、もっと日本市場に浸透するよう働きかけています。 また、私たちは、その農産物の価値をさらに高めるのに役立つ技術にも着目しています。農産物に付加価値を与える技術を手に入れ、コーヒーはもちろん、パイナップルやその他の果物も輸出できるようにしたいと考えています」。

トーファス・カーフア ウガンダ共和国特命全権大使

1974年生まれ。1996年より小学校の教員としてのキャリアをスタート。小学校の教頭や校長、大学での講師を経て、選挙に立候補。2011年から2021年まで国会議員として10年間(5年間2期)務めた。2022年よりウガンダ共和国特命全権大使を務める。

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