June 28, 2024
「東北の祭り」から日本文化を探る旅へ。
Sustainable Japan Magazineがオススメする、東北地方7つの夏祭り。
東北地方とは、本州の北側に位置する青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島の6つの県で構成されるエリアだ。8世紀前半に編纂された日本の歴史書『古事記』『日本書紀』には、都から遠い奥にある国を意味する「道奥(みちのおく)」として登場する、当時は朝廷の力が及ばぬ、独自の文化を持つ人々が暮らす土地であった。もちろん現在では1982年の東北新幹線の開通を皮切りに(新青森駅までの全線開通は2010年)、山形新幹線(1992年開通)、秋田新幹線(1997年開通)と3つの新幹線が通り、東京からのアクセスも格段によくなった。また各県に空港があるので他の地域から空路で東北地方に入ることも可能だ。
そんな東北地方は、寒冷地であるがゆえ、祭りは夏場に集中して行われている。なかでも特に有名で多くの観光客が訪れるのは、「ねぶた」(青森県)、「竿灯」(秋田県)、「仙台七夕」(宮城県)の3つの祭りで、東北の夏を代表する「三大祭り」と呼ばれている。2011年に起きた東日本大震災以降は、鎮魂と東北地方の地域復興を目指し、東北6県の代表的な6つの祭りを一同に集めた「東北絆祭り」も、各県持ち回りで開催されている。これは夏の三大祭りに、「盛岡さんさ踊り」(岩手県盛岡市)、「山形花笠まつり」(山形県山形市市)、「福島わらじ祭り」(福島県福島市)を加えたもので、今年2024年は6月8~9日の2日間、宮城県仙台市で行われた。来年2025年は大阪・関西万博開催のため一時休止し、2026年は岩手県盛岡市で行われる予定だ。
東北の6つの夏祭りの開催はこれから。ぜひ今年の夏は、東北の祭りを巡る旅にでかけてみるのはいかがだろうか。
A:ねぶた
開催地: 青森県各市
会期:
青森ねぶた祭 毎年8月2日~7日
弘前ねぷたまつり 毎年8月1日~7日
URL: https://www.nebuta.jp/
中国から8世紀頃に伝わった「七夕」に起源をもつと言われる祭りである。この七夕の際に行った灯篭流し(紙と竹でつくった灯篭に灯りを付け川や海に流し無病息災を祈る風習)が変形して、人形など様々な形をしたものになったと言われている。青森県の各地域で行われている祭りだが、全国的に有名で大規模なものは、青森市の「ねぶた」と、弘前市で行われる「ねぷた」で、共に1980年に国の重要無形民俗文化財に指定されている。
青森ねぶた祭を例に取れば、灯りを灯した巨大な「ねぶた」(竹、木、針金、紙などで作った大きな人形)が、20以上も連なり、街中を練り歩く。その「ねぶた」の形態はひとつひとつ違い、歴史上活躍した武将などの伝承などをテーマにしたものが多くみられる。また、その「ねぶた」の後ろには「跳人(はねと)」と呼ばれる踊り子が続き、囃子に合わせて声を上げながら、飛び跳ね、祭りを華やかに盛り上げる。
B:盛岡さんさ踊り
開催地: 岩手県盛岡市
会期: 2024年8月1日~4日
URL: https://sansaodori.jp/
江戸時代から盛岡市近郊各地で行われていた伝統的な「さんさ踊り」を統合し、観光イベントとして1978年にスタートしたのが「盛岡さんさ踊り」である。この地域で受け継がれてきた”さんさ踊り”の起源は、三ツ石伝説に由来している。南部盛岡城下に鬼が現れ悪さをしたが、住民の祈りを聞いた三ツ石神社の神様がこの鬼を捕らえ、二度と悪さをしないよう誓いの証として、境内にある3つの巨石(三ツ石)に、鬼に手形を押させたという物語だ(岩に手形・・・これが岩手県の名前の由来とも言われている)。鬼退治を喜んだ住人が三ツ石の周りを「さんささんさ」と掛け声をかけ踊ったのが「さんさ踊り」の始まりだとされている。
見所は、和太鼓のパレード。5000を超える太鼓が、6000を超える笛の音と共に鳴り響く。また、見るだけではなく、観客も踊りに参加できるのが特徴だ。
C:秋田竿燈まつり
開催地: 秋田県秋田市
開催日: 毎年8月3日~6日
URL: https://www.kantou.gr.jp/
「竿燈(かんとう)」とは、祭りに用いられる竹竿と提灯を用いた道具で、竿燈全体を米がたわわに実った稲穂に、提灯を米俵に見たて、額や腰、肩などに乗せ、豊作を祈る祭り。現在のスタイルに近いものは、江戸時代中頃(18世紀後期)に職人や商人によって始められたと言われている。しかしその原型は、笹などに願い事を書いた短冊を下げそれを手に練り歩き、最後に川へ流して真夏の邪気や睡魔を払う「眠り流し」にあると言われ、江戸時代より前から行われている風習である。
特筆すべきは、最大で長さ12メートル、46個の提灯が吊るされた重さ50キロもある「竿燈」を、持ち手が額や肩、腰などに、移し変える妙技。この技自体も競われ、毎年優勝者が選ばれる。また、夜に市街中心部で行われる竿燈の行列も見どころだ。250本以上の竿燈に灯りがともる。1980年に国の重要無形民俗文化財に指定されている。
D:山形花笠まつり
開催地: 山形県山形市
会期: 毎年8月5日~7日
URL: https://www.hanagasa.jp/
スゲ笠に赤い花飾りをつけた花笠を手に、「花笠音頭」にあわせて街を踊り練り歩くという祭りが「花笠まつり」で、山形県内数か所で開催されている。なかでも有名なのが、例年8月に山形市で行われる「山形花笠まつり」だ。祭りが始まったのは戦後の高度成長期。当時、山形新聞の代表取締役社長などを務める実業家の服部敬雄が、地元の踊りを夏の観光の目玉として売り出すことを提唱し、1963年に夏まつりのイベントの1つとして「花笠音頭パレード」が始まった。その2年後の1965年に「山形花笠まつり」として独立し、現在のような祭りのスタイルとなった。戦前から行われている東北三大祭り(「ねぶた」「竿燈」「仙台七夕」)に、戦後から始まり広まった「山形花笠まつり」を加えた4つの祭りを加え、東北四大祭りと呼ばれることもある。1970年の大阪万博では、メインイベント会場である「お祭り広場」(設計:丹下健三)で開催された日本の祭りイベントで、そのトップで出演したこともあった。
E:仙台七夕
開催地: 宮城県仙台市
会期: 毎年8月6日~8日
戦国時代から江戸時代初期にこの地を治めた武将・伊達政宗の時代から続く、東北の夏祭りのひとつがこの七夕祭りだ。東北三大祭りの「ねぶた」「竿燈」も七夕に由来する祭りだが、神を送るこの2つの行事と違い、仙台七夕まつりは「田の神」(稲の豊作をもたらす農耕神)を迎える行事となっている点に特徴がある。これは東北地方を昔から周期的に襲う冷害(江戸時代には2度の大飢饉があり、それぞれ25万人、30万人が亡くなった)を乗り越えようと、豊作を田の神に祈ったことが、七夕まつりがこの地で盛んに行われてきたひとつの理由と考えられている。
明治に入り新暦が採用されると行事は年々廃れていったが、1927年に不景気を吹き飛ばそうと、商店街の有志によって華やかな七夕飾りが復活、第二次大戦の敗戦を乗り越え現在では、市内各所に飾られた大小約3000もの笹飾りを楽しむため、毎年200万人以上の観光客が仙台市を訪れている。
F:福島わらじまつり
開催地: 福島県福島市
会期: 2024年8月2日~4日
URL: https://www.waraji.co.jp/
「福島わらじまつり」は、江戸時代から約400年続く冬の神事「信夫三山暁まいり」にルーツを持つ祭りである。この冬の神事は、長さ12m、幅1,.2m、重さ約2トンという、日本一巨大なわらじを担ぎ、街中を練り歩いた後、山岳信仰の場となっている福島市市街地に隣接する信夫山の山頂にある神社に、わらじを奉納するというもの。これが1970年から、夏に開催されるようになったのが「わらじまつり」というわけだ。
2月に奉納される「信夫三山暁まいり」のわらじと合わせて一足分(両側)となることから、一層の健脚を祈願する祭りとなっている。かつては県外にあまり知られていない祭りだったが、2011年の東日本大震災の鎮魂と復興祈願で行われるようになった「東北六魂祭」に組み入れられてこともあり、東北6大祭りとして知名度が高まった。
G:相馬野馬追
開催地: 福島県相馬市・南相馬市ほか
会期: 2024年5月25日~27日
URL: https://soma-nomaoi.jp/
1952年に国の重要無形民俗文化財に指定された歴史ある祭りがこの「相馬野馬追」だ。その起源は今から1000以上前の平安時代中期(10世紀)、この地を約550年間治めた相馬氏の遠祖とされる平将門が、下総国小金ヶ原(現在の千葉県北西部)に放した野馬を敵兵に見立て、軍事演習に応用したことと伝えられている。祭りの見所は2日目に行われる「お行列」「甲冑競馬」「神旗争奪戦」の3つの行事だ。約400騎の騎馬武者が、3つの神社の神輿と共に、南相馬市の街中を進軍する「お行列」に始まり、その後、祭場に移り、鎧姿のまま疾走する「甲冑競馬」や、空中に打ち上げられた神旗を馬に乗ったまま取り合う「神旗争奪戦」が繰り広げられる。
従来は7月最終週の週末に行事が行われていたが、近年の温暖化による気温上昇のため昨年2023年には馬2頭の命が失われた。その熱さ対策として、今年2024年からは5月下旬に開催されることになった。