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デニムづくりの聖地で進む、環境に配慮した染色の試み。

August 30, 2021

ライター: 和泉俊史, TRANSLATOR: EDAN CORKILL

坂本デニムは、1966年に日本で初めて、“自動連続染色機“を開発。バラエティに富んだ色を作り上げ、日本のインディゴ染色をリードしてきた。
写真提供:坂本デニム

私たちがオシャレを楽しむ陰で、実は服作りが環境に多大な負荷を与えていることは知られていない。2019年の国連UNCTADの指摘によれば、ジーンズ1本を作るために、約7500リットルの水が必要だという。

この量は、平均的な生活をおくる人:一人が、7年かけて飲む水の量に匹敵する。あなたは、この事実を知ったうえで、今までの人生で、ジーンズを履いて、オシャレを楽しんでいただろうか?

ファッション業界は毎年、930億立方メートルという、500万人のニーズを満たすのと同じ量の水を使用している。服作りの素材である綿などの繊維を染色前に洗うために、膨大な水が必要なためだ。そして、その洗浄の過程で、約50万トン(石油300万バレルに相当)の、マイクロファイバーを海に垂れ流しにしている。ファッション産業が抱える、環境に与える問題点のひとつが、この大量の水の使用と、汚染水の問題なのだ。

江戸時代から続く、日本独自の“手染め”の様子。甕(かめ)の中で発酵させた藍に、糸や布を入れ、職人が数日間かけて、丁寧に染め上げる。
写真提供:坂本デニム

その問題に正面から向き合った企業がある。広島県福山市にある<坂本デニム>という会社だ。福山市は広島県第二位の人口を誇る街だが、広島といっても原爆ドームのある広島市からは遠く離れ、岡山県に隣接している。この福山から岡山県に至るエリアは、“備後”と呼ばれる地域で、繊維産業が盛んな地である。特にデニムや作業着など、厚手の生地の衣類生産が盛んで、海外の有名ラグジュアリーブランドもこの地にある工場に頼み、自社ブランドのデニム製品の生産を委託しているほどだ。世界のデニム好きからは「聖地」とも呼ばれているエリアで、マニア好みのジーンズをつくる工場も多い。そんなこの地で、1892年に創業した<坂本デニム>は、生地を染めることを生業とする、染色工場。しかし、その染色の過程での、大量の温水と洗剤の使用に、心を痛めていた。

2000年頃から、デニム業界では、環境に配慮したオーガニックコットンの使用が始まっていた。しかし、糸がオーガニックでも、その糸以外の生産工程で薬剤まみれになっているという事に、坂本デニム4代目の現社長・坂本量一氏は疑念を抱いた。坂本デニムは染色工場ということもあり大量の水を、それも温水で使っていた。デニムを美しく染め上げるためには、原料である綿糸をつくる過程で残ってしまう綿花の汚れを、事前に、念入りに洗浄しないといけないからだ。糸をムラなく染めるためには、大量の洗剤と温水を使って糸を洗浄する必要があった。

工場内の様子。機械で効率よく作業が行われている。
写真提供:坂本デニム

そこで坂本社長が着目したのが、水の電気分解を利用した新技術だった。電解水は、水に塩を加え電気分解させることで生み出されるもの。洗浄効果はあるが、化学薬剤は含まれていない。また、その高い効果ゆえ、温水ではなく常温の水を使用することで十分事足りる。これにより、坂本デニムが使用する重油の量は、以前より40%減った。

<坂本デニム>は温水と洗剤を使わない、環境に配慮した洗浄システムを開発した。
写真提供:坂本デニム

また洗浄以外にも、染色技術の開発にも積極的に取り組んでいる。通常のデニム生地は、合成インディゴという人工的につくられた染料で染められている。しかし坂本デニムでは、伝統的な染料、すなわち植物から抽出した天然藍染料を、工業的に生産し、染色を行っている。天然染料は人工染料と違い、染料の化学式的には土や草の根などの不純物が多く含まれているため、簡単には色が糸には付かない。しかし染色機械を独自に開発し続け、坂本デニムしかできない天然藍染料を濃色で仕上げることを可能にした。また、天然藍と他の天然染料との組み合わせに挑戦し、新色の開発にも取り組んでいる。

坂本デニムで環境事業を担当する松本源太郎氏は語る。

「私たちの会社は、創立してから約130年にわたり、同じ土地で同じ水を使い続け、染色を行ってきました。近年では、社内で処理した排水から出る汚泥を、毎朝従業員が持ち込みする生ごみと混ぜ、バイオ処理機で堆肥化し会社の花壇や近隣の農園で使用する取り組みもしています。これからも、世界一環境に優しい染色加工場を目指していきたいと考えています」。

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