July 26, 2024
JNTOが推進するサステナブル・ツーリズムへの取り組み。
コロナ禍を経て観光を取り巻く状況が大きく変化している。なかでも「旅行者の持続可能性への関心の高まり」と「サステナブル・ツーリズム(持続可能な観光)推進の動き」は世界各地で活発になっていると言える。そのような状況のなか、持続可能性の実現に向けてサステナブル・ツーリズム推進に取り組んでいるのが、JNTO(日本政府観光局/Japan National Tourism Organization)だ。
UN Tourism(世界観光機関/The World Tourism Organization)は、サステナブル・ツーリズムを『訪問客、産業、環境、受け入れ地域の需要に適合しつつ、現在と未来の環境、社会文化、経済への影響に十分配慮した観光』と定義している。
「JNTOもそれに基づき、地域の《環境》《文化》《経済》を守り育むサステナブルで発展性のある観光を推進するために、様々な取り組みをしています。旅行者と観光関係事業者、そして受け入れ地域が一体となり、地域の人々の生活を守りつつ、自然や伝統、文化をしっかりと継承し将来につなげていく。そのための情報発信が非常に重要だと考えています」と、JNTOは解説する。
日本でも一般社団法人サステナビリティ・コーディネーター協会が、グリーン・デスティネーションズの日本代表事務所としてグリーン・デスティネーションズ・ジャパンを立ち上げた。国際認証制度や表彰制度に関する窓口業務や、プロモーション活動を担う。
JNTOも2022年に部署横断の〈サステナブル・ツーリズム推進本部〉を設置。持続可能な観光に関する国際認証受賞地域や、「日本版持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D)」のロゴマーク使用承諾地域について、デジタルパンフレットやWEBサイト、SNSなどを通じて、その地域のストーリーを世界中に発信するなどプロモーションを実施し、取り組みを重ねている。
「豊かな自然と自然に根差した多様な文化というのは日本独自のもの。日本が古来より育んできた地域の伝統、文化、匠の技、食、温泉など、日本全国、それぞれの地域にこそストーリーがあります。その奥深さを世界に発信し、地域に根付いた本物の体験ができるサステナブルな旅に誘うことで、その保存や継承に貢献するのが目標です」。
例えば2023年度に『グリーン・ディスティネーションズ・トップ100』に選出された、徳島県三好市。年間約35万人の観光客が訪れる〈祖谷のかずら橋〉は日本三奇橋の一つに数えられる重要有形民俗文化財。今も昔ながらのやり方で、自然の材料を用いほぼ手作業で3年ごとに架け替えが行われている。近年は架け替えの材料となるシラクチカズラが手に入りにくくなっているため、三好市は森林管理署と『木の文化を支える森づくり協定』『祖谷の蔓橋シラクチカズラ資材確保協定』を締結し、地元の子どもたちと植樹を行うなど、様々な持続可能な取り組みを行っていることが、持続可能な優良事例であると認定された。認定のポイントは観光の魅力だけではなく、将来につながる人材育成などいかに持続可能を実現するための努力をしているかも重要な点となっている。
「サステナブル・ツーリズムの実現は、受け手側だけではなく、訪問する旅行者の意識の変革も大事です。JNTOでは、責任ある観光のヒントとして《より責任ある旅行者になろう(Be A More Responsible Traveler)》と題したサイトを公開しています。《尊敬、つながり、楽しむ(Respect, Connect, Enjoy)》をテーマに、日本の豊かな自然を称える、季節の海の幸山の幸を味わう、歴史的建造物に滞在する、伝統的な祭りや舞台芸術で日本文化に浸る、地元の職人を支援するなど10項目を掲げ、訪日観光客に気づきを得ていただきたいと提案しています」。
大衆観光地ではない場所をゆっくりと旅をしながら、その地域でしかできない本物の体験や食事を楽しみたい観光客が増加している今、日本におけるサステナブル・ツーリズムを推進するJNTOの発信に注目したい。