August 29, 2025

【オーベルジュ オーフ】日本初、廃校を利用した北陸のオーベルジュ。

ライター:寺尾妙子

¥25,000のコース6品めに登場するスペシャリテ「オーフ 巻き」。アーティチョークの原種であるアザミを加えたそば粉クレープで熊ソーセージや野菜を巻いた一品。ミントやパクチーなどのハーブのほか、春先は山菜も加わる。
PHOTOS: TAKAO OHTA

『オーベルジュ オーフ』は石川県の小松空港から約30分、白山の伏流水に恵まれた観音下町(かなそがまち)にある。町の産業は米作りと、国会議事堂にも用いられた日華石。風光明媚な場所だが、過疎が進み、2018年には小学校が廃校になった。

そんな町が、にわかに美食家たちの注目を浴び始めたのは2017年のこと。「酒造りの神様」の異名をもつ杜氏、農口尚彦が自然環境と水に惹かれ、この地で日本酒を造り始めたのだ。さらに2022年7月、農口の酒蔵と隣り合う、廃校になった旧西尾小学校を利用し『オーベルジュ オーフ』がオープン。この町をめがけて、県内外からフーディーが訪れるようになった。

『オーベルジュ オーフ』シェフ、糸井章太は京都府で生まれ、神戸やフランスで修業を積んだ。国内の有名な料理コンクールでの受賞経験もあり、さまざまなレストランから声がかかったが、「廃校を使ってトップレストランを目指す」というコンセプトに惹かれ、2021年に小松市に移住し、開業準備からこのプロジェクトに加わった。

フレンチ
オーベルジュ オーフ
石川県小松市観音下町ロ48
https://eaufeu.jp/

オーベルジュは1泊2日夕朝食付きで¥45,600。レストランのみの利用も可能で昼夜ともにコース¥15,000〜。食材は石川県を中心にほぼ北陸産。ジビエや魚介類のほか、最近、白山で飼育が始まった仔羊などもテーブルに上る。また、糸井ほか、スタッフみんなで山に入り、採れたての山菜やきのこを調理する。そうして生み出されるのは「フレンチの技法を使った“新しい日本料理”。海外のゲストからも『和食じゃないけど“日本の料理”だね』と言われます」と糸井は言う。

朝食は隣の酒蔵、〈農口尚彦研究所〉の米麹とヨーグルトやピクルスなど自家製の発酵食品を取り入れたメニューをピクニックスタイルで提供する。レストランや併設するカフェではもちろん、屋上や運動場、少し足を伸ばして石切場や滝を臨む自然の中など、ゲストは好きな場所を選んで食事ができる。

過疎地に大阪資本のレストランができることで、街が活性化するという期待がある反面、住民にとっては“余所者”が出入りすることへの不安もある。オープン前には地元の人たちに向けての説明会を何度も開いたという。また、建物の持ち主である小松市からの「地元の人が気軽に利用できるスペースも作って欲しい」という要望を受け、オーベルジュの入口にカフェを併設。偶数月には小松市民限定でワンドリンク付き¥7,000のコースを提供する日を設け、地元対応にも力を入れる。県外からの集客もさることながら、地方でガストロノミーなレストランを運営するには地元の理解は欠かせない。そんな〈オーベルジュ オーフ〉の努力は徐々に実りつつあるようだ。『オーベルジュ オーフ』は地元に溶け込みながら、県外、海外のゲストに向けて町の魅力を発信し続ける。

糸井章太(いとい しょうた)

1992年京都府生まれ。辻調理師専門学校・フランス校在学中にアルザス『オーベルジュ・ド・リル』で研修。芦屋市のフランス料理店を経て、渡仏。フランスで1年半腕を磨き、帰国。2018年、「RED U-35 2018」にてグランプリ(RED EGG)を大会初の20代で受賞。2019年、経済誌『Forbes Asia』主催「30under30 Asia 2019」受賞。2022年より石川県小松市『オーベルジュ オーフ』シェフ。

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