April 11, 2018

ササニシキを持続可能な米の栽培法で復活させる〜阿部博之氏と阿部勝善氏(宮城県南三陸町)

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Rice farmers Hiroyuki Abe (left) and Katsuyoshi Abe. | MAIKO MURAOKA

宮城県の南三陸町にある、東日本大震災後の津波による被害をかろうじて免れた唯一の地区・入谷の水田で、阿部博之さんと阿部勝善さんは、一度はほぼ消えかけた米の品種、ササニシキを育てている。

彼らはそれをただ栽培するのではなく、現代の技術と昔ながらの手法を組み合わせて、化学肥料や農薬を使わずに、より良く、持続可能な方法で復活させているのだ。

ササニシキといえば、かつてはコシヒカリと並ぶ日本の最も有名なブランド米の一つだった。他の品種に比べ、ベタベタしないあっさりとした味わいは、多くの寿司職人にも好まれていた。

だが冷害や稲熱病に弱いため、宮城県の沿岸地域の農家は長年に渡り、様々な化学肥料や農薬を試すもなかなか成果が出ないまま、1993年の大冷害以降、ササニシキの栽培をやめてしまった。

その後、コシヒカリやコシヒカリ系の他の品種がこの地域の米の生産の大部分を占めるようになったが、気温や害虫の問題は付いて回った。

「農薬は、最初は効くんです。でもすぐに虫の方が抵抗力を付けてくるので、また農薬を増やす。いたちごっこなんです」と阿部博之さんは話す。ササニシキは特に農薬との相性が良くないことを経験上知っていた阿部博之さんは、この繰り返しから抜け出すために、2012年にササニシキの無農薬栽培を始める決断をした。

この挑戦には、NTT ドコモとアミタホールディングスが技術支援をし、2年目からは近隣の農家の阿部勝善さんも参加した。

最初の数年間、いろいろな手法を試した結果、最も効果的だったの有機農法技術の専門家である NTT ドコモの堆英明さんが開発した水位管理法だった。

稲は、水田に田植えされる前に一定の大きさになるまで苗の状態で育てられる。大きく育つために充分な日光が必要なのは、稲も水田の底に生える雑草も同じだが、稲は水面から上に出ている葉から充分な日光を得られる。よって、水田の底まで日光が到達する必要はなく、底まで日光が降り注ぐと雑草の成長を促してしまうだけなのだ。

水田の底まで届く日光の量を減らす最も簡単な方法は、水位を上げることだ。「素晴らしいでしょう? 水田に除草剤をまくのは大変な作業ですよ。この方法は、人間にも環境にも優しいんです」と阿部勝善さんは言う。

そのためには努力も必要だ。売られている苗のほとんどは発芽してから30日以内のもので、高さ12センチほど、葉も2、3枚しか出ていない。これに対し、堆さんの手法では田植えまでに苗を45日かけて育てる。

これまでより深い水田でも充分な日光を得られるくらい水面から頭を出すには、苗は20センチ近くまで育っていなければならないし、葉ももっと出ていなければならない。背が高く、しっかり成長した苗は、害虫にも病気にも強い。この農法なら肥料で栄養過多になることもないので、苗は自然の中にあるものを最大限に活かす力をも身に付けられる。

水位は、水田の隅に取り付けられたセンサーによって監視されている。データは NTT ドコモが開発したアプリ上でリアルタイムに更新され、スマートフォンやタブレットで見ることができる。

水位が低い場合は、水路に設置されたせき板を引き上げさえすれば、周囲の山々から流れ出た栄養たっぷりの水が水田に流れ込む。

無農薬栽培されたササニシキは、会員制サービスを通じて直接農家から消費者に届けられる。この会員制サービスは、米やその他の農産物、海産物の頒布以外に、稲刈りイベントなどの活動を通じて、農家と消費者とを直接結んでいる。

当初からこのプロジェクトに関わってきた NTT ドコモの山本圭一さんは、「米の無農薬栽培をうまくやることは可能だということを証明できればと思います。また、消費者を巻き込むことで、地域を活性化する方法があるということを示すモデルになればいいですね」と話した。

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